POINT
ドイツワインの特徴
産地の特徴
ドイツは、ヨーロッパの主なワイン産地の中でも、イギリスに次いで北に位置する伝統的なワイン産地です。
ドイツのワイン生産地域の北緯は47~52度で、これはおおむねロシア連邦のサハリンの北緯と同じです。ちなみに日本の最北端は北海道稚内市で北緯45度なので、いかにドイツが北に位置することがわかりますね。
平均気温は9~10度と冷涼ですが、夏の最高気温は40度を超えることも珍しくありません。温暖化によりブドウが熟しやすくなったため、ワインの特徴も多様化しています。
13の産地
それではここで、ワインの特色も様々な、13のドイツワインの生産地を紹介します。
1, アール (Ahr)
ドイツ西部で最北。赤ワイン用ブドウの栽培が80%を超える赤ワインの産地。
2, モーゼル(Mosel)
白ワイン用品種が全体の90%以上で、その6割をリースリングが占める。
3, ミッテルライン(Mittelrhein)
栽培面積がドイツで2番目に小さい。白ワインやスパークリングワイン(ゼクト)が多い。
4, ラインガウ(Rheingau)
北緯50度の川沿いに沿って広がる地域で、ワインの醸造研究や若手醸造家を育成するガイゼンハイム大学がある。
5, ナーエ(Nahe)
ラインヘッセンとミッテルラインに挟まれた地域で、高品質なリースリング、赤白のブルグンダー系が産地のポテンシャルを示している。
6, ラインヘッセン(Rheinhessen)
ドイツ最大のワイン生産地域で、1950年代という早い時期から有機農法を採用する生産者が登場した。
7, ファルツ(Pfalz)
ドイツで2番目に大きな生産地域で、若手醸造家たちが高品質なブルグンダー系ワインを醸造し注目を集めている。
8, ヘシッシェ・ベルクシュトラーセ(Hessische Bergstraße)
ドイツで最も栽培面積の狭い地域で、花崗岩土壌がこの産地のワインを特徴づけている。
9, フランケン(Franken)
唯一バイエルン州に属し、「ボックスボイテル」という丸くずんぐりとして平板な伝統的なボトルが特徴的。
10, ヴェルデンベルグ(Württemberg)
ドイツで4番目に大きな生産地域だが、ほとんど地元で消費されてしまう。ダイムラーやポルシェ、ボッシュなどドイツを代表する企業の本社がある。
11, バーデン(Baden)
ドイツ最南端に位置しフランスの国境に接している。ドイツで3番目に大きな生産地域。高品質のシュペートブルグンダーが有名である。
12, ザーレ=ウンストルート(Saale-Unstrut)
北緯51度 ドイツワイン最北の地域で、冬の寒さは厳しく氷点下30度まで下がることもある。
13, ザクセン(Sachsen)
ドイツ最東でポーランドの国境近くの地域。生産量はドイツ全体の0.3%にも満たない。
ボトルの特徴
私の趣味はワインショップに行くことなのですが、ドイツワインはかわいい猫の形をしたボトルや猫の絵のエチケットが多く、見ているだけで楽しくなります。
また、ドイツのワイン産地、フランケンにあるブランデーのような丸いずんぐりとしたボトルの「ボックスボイテル」も、ワインショップでよく見かけます。
ボックスボイテルの起源は今から3,400年も前の紀元前1,400年頃の、ケルト民族の陶器だと言われており、中世には首が短く胴がずんぐりした形の水筒を巡礼者がよく持ち歩いていたようです。
語源については、山羊(ドイツ語でBock ボック)の睾丸袋(Beutel ボイテル)という説がありますが、他にもBooksbüdelという、「祈禱書を入れる袋」に由来するという説もあります。
最近のドイツワイン
ドイツワインといえば、甘口な白ワインのイメージが強いと思いますが、それは最大の輸出先であったアメリカが甘口を好んだため、輸出向けのものが甘口主体となったのが原因でした。
現在のドイツでは、フランスやイタリアのように食事と一緒に飲むことが一般的になり、辛口、中辛口ワインの需要が急増しています。
日本でもまだ甘口のドイツワインしか置いてないショップもありますが、辛口のドイツワインは確実に増えてきています。
また、かつてワイン生産の北限と言われ、赤ワインの生産には適さなかったドイツですが、現在は赤ワイン用品種がブドウ畑全体の3分の1を占めています。
特にシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)が国際的に高評価を得て、ワイン愛好家からも注目を集めています。
ドイツワインの分類
2009年に導入されたEUの新ワイン法に基づき、「地理的表示付きワイン」と「地理的表示のないワイン」の大きく2つに分けられます。わかりやすく説明すると、フランケンという地域で採れたブドウを主に使用して造ったワインが 「地理的表示付きワイン」で 、他の地域のブドウを合わせて造ったワインが 「地理的表示のないワイン」 となります。
またこの他に、残糖値やブドウ畑の格付けでも分類ができます。
地理的表示のないワイン
- EUワイン
・EU域内の異なる国のワインをブレンドしたワイン。 - ドイッチャー・ヴァイン
・ドイツ国内産のブドウを100%使用。
・「ブドウ品種」「収穫年度」が表示可能だが、シュペートブルグンダー、リースリングなど、ドイツで伝統的に栽培されている主要品種は表示できない。
地理的表示付きワイン
- 地理的表示保護ワイン(g.g.A./ラントヴァイン)
・ラントヴァイン指定の26の地域のブドウを85%以上使用。
・一部地域を除いてトロッケン(辛口)または、ハルプトロッケン(中辛口)のみ。
・亜硫酸無添加醸造酒など、生産地域の典型性に欠けたワインをラントヴァインとして販売していることがある。 - 原産地呼称保護ワイン(g.U.)
2-1 クヴァリテーツヴァイン
・13ある特定ワイン生産地域のいずれか一つの地域内で栽培、収穫されたブドウを100%使用。
・ブドウが収穫された生産地域内で醸造すること。
・各地域で認可された品種を使用すること。
・各生産地域で定められた値を上回る糖度の果汁から醸造されていること。
・最低アルコール度数は7%。
・アルコール濃度を補う為の補糖ができる。
2-2 プレディカーツヴァイン
・クヴァリテーツヴァインとの最大の違いは、補糖ができないこと。
・収穫時のブドウの糖度によって以下の6つに分類される。
糖度が低いほうから、カビネット(熟したブドウ)、シュペートレーゼ(完熟したブドウ)、アウスレーゼ(完熟、一部貴腐ブドウ)、ベーレンアウスレーゼ(過熟、一部貴腐ブドウ)、アイスヴァイン(マイナス7度以下で凍結したブドウ)、トロッケンベーレンアウスレーゼ(干しブドウ状にしぼんだ貴腐ブドウ)
残糖値の表記
また、ドイツワインには残糖値に応じた以下の表記があります
(ラベルへの記載は任意)。
- [トロッケン] 残糖値4g/ℓ以下か、総糖値の差が2g/ℓ以下であれば9g/ℓまで
- [ハルプトロッケン] 残糖値9~18g/ℓ、ただし総酸値と残糖値の差は10g/ℓ以下
- [リープリッヒ] 残糖値45g/ℓ以下で、ハルプトロッケンを上回る残糖を含む甘口
- [ジュース] 残糖値45g/ℓ以上の甘口
- [ファインヘルプ] 数値基準はないがオフドライ
ドイツにおけるブドウ畑の格付け
VDP.Die prädikatsweingüter(プレディカーツヴァイン醸造所連盟)/VDP.は、ドイツのブドウ畑の格付けを推進している生産者団体で、約200の醸造所が加盟しています。
VDP.は2012年ヴィンテージより4段階の品質基準に分けられます。
- VDP.グローセ・ラーゲ
・グランクリュに相当する最上の区画。 - VDP.エアステ・ラーゲ
・プルミエ・クリュに相当する優れたブドウ畑。 - VDP.オルツヴァイン
・村名ワインに相当。 - VDP.グーツヴァイン
・エントリーレベルのエステートワイン。
おすすめのドイツワイン3選
ロバート・ヴァイル・リースリング・トロッケン
生産年 2017年
所在地 ラインガウ
ブドウ品種 リースリング
色、味わい 白、辛口
アルコール度数 12度
ドイツはラインガウで、ドイツ皇帝に愛されたワインとして名高い造り手、ロバート・ヴァイルがつくる辛口タイプのワイン。
リースリングらしいグレープフルーツやレモンの柑橘香、蜜のニュアンス。たっぷりのミネラルと酸を感じるキレの良いワインなので初夏に合わせて、みょうがやしょうがの千切りをたっぷりのせたカルパッチョ、すだちを絞った冷しゃぶと相性抜群です。
ドクター・ツェンツェン ツェラー・シュヴァルツェ・カッツ ゼクト
生産年 2015年
所在地 モーゼル
ブドウ品種 リースリング
色、味わい 白、やや甘口
アルコール度数 11.5度
ドイツではスパークリングワインのことを、ゼクト(Sekt)と呼びます。
爽やかな甘口のスパークリングワインで、リンゴや洋ナシなどのフレッシュな果実香、上品な甘さが心地よく続きます。キンキンに冷やして食前酒として。
味わいといい、猫のかわいいエチケットにキレイなブルーのボトルといい、女子会の乾杯におすすめです。
ベッカー シュペートブルグンダー
生産年 2014年
所在地 ファルツ
ブドウ品種 シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)
色、味わい 赤、辛口、ミディアムボディ
アルコール度数 13.5度
キツネとブドウのエチケットがとても印象的なこちらのワイン。
フリードリッヒ・ベッカー醸造所は、ファルツの最南端のフランスの国境線に位置し、今ではドイツのシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)のトップ生産者として世界中で注目されています。
赤系果実のジューシーな香り、そしてスパイス。ピノ・ノワールらしい紅茶のニュアンスもしっかりと感じ、シュペートブルグンダーを飲んだことのない方にも是非飲んで欲しい一本です! ワインは軽く冷やして焼き鳥と一緒に。
また、日本の白ブドウ品種の「甲州」が、ドイツのラインガウで2003年に植樹され、2005年から造られています。日本以外で甲州を公認栽培しているのは、世界中でラインガウ甲州だけで、日本のブドウがドイツで育ち、ワインとなり日本に帰ってくるのは、とても興味深いですね。
ドイツワインはキリッとした酸と繊細な果実味が主張しすぎず、日本料理にも合わせやすいワインです。気軽にドイツワインと日本料理のマリアージュを発見してみてください。
■参考資料
・2019年 日本ソムリエ協会 教本
・2019年版 世界の名酒時点
記事内容は記事作成時点の情報となります。
J.S.A.ソムリエ、調理師、食生活アドバイザー2.3級を取得。旅行コンサルタント会社で旅館ホテルなどへの飲料提案を行う。現在は都内フレンチでソムリエとして活躍中。