「デラウェア」と言えば小粒で甘い、生で食べるブドウとして日本中で愛されています。このブドウが、実は、日本の各地で造られているワイン用ブドウ品種でもあるということをご存じですか?
デラウェアから造られるワインは赤ワイン? それとも白ワイン? 生で食べるデラウェアは甘いから、ワインも甘口タイプ? など、「デラウェアワイン」について、意外と知らないことが多いのではないでしょうか。
今回は、そんな「デラウェア」のワインの特徴について、詳しくご紹介します。
POINT
デラウェアってどんなブドウ?
デラウェアの歴史
デラウェアは、アメリカ合衆国のオハイオ州デラウェア市で発見されたことから、「デラウェア」と名付けられました。生食用に使われることが多い【ヴィティス・ラブルスカ種】で、アメリカ系の品種と、ヨーロッパ系の品種の雑種と言われています。
日本では1872年明治時代の初期に、山梨県でデラウェアの栽培が開始され、日本の気候に適したブドウ品種として、現在では山形県、山梨県、大阪府などの各地で栽培されています。
そして「デラウェア」はワイン用のブドウとしても有名で、2016年度のワイン用ブドウ品種の生産数量では、なんと全国で第5位でした。白ワイン用品種においては1位甲州、2位ナイアガラ、そして第3位がデラウェアです。
ブドウの特徴
デラウェアは種がなく、果皮の色は赤紫色、糖度は20前後と甘みが強いのが特徴です。
一房は大体100~150gでちょうど女性の片手に収まるサイズです。果粒の大きさは1㎝程度と小粒。果皮を軽く押すだけで、ちゅるんと中の実が簡単にでてくるので、とても食べやすく、果物の中では手頃な価格で購入できるため、昔から日本で親しまれているブドウです。
デラウェアの旬の季節は【7月~9月】と言われていますが、ハウス栽培も行われているため、早い地域では初夏の5月頃から出回ります。
デラウェアを食べる時には、よく冷蔵庫で冷やしておくとよいでしょう。甘みだけではなくほどよい酸味も感じられ、より一層デラウェアが美味しく感じられます。また、よく水で洗ったデラウェアを冷凍庫で凍らせると、天然のシャーベットが出来上がります。
デラウェアの種なし処理について
普段私たちが食べている生食用のブドウ「デラウェア」には種がなく、食べやすい点も人気のひとつですよね。しかし、デラウェアは、もともと種がないわけではなく、栽培時に【ジベレリン】という植物ホルモン剤を房に浸けることで、人工的に種が出来ないように処理を行っています。
生食用のブドウは種がないほうが食べやすいのですが、ワイン用のブドウはどうなのでしょうか?
ワイン用のブドウには、「種」があるほうが、味わい深いワインが生まれるとされています。このため、ジベレリン処理をしていない、「種があるデラウェア」を使ったワイン造りを行っているワイナリーも増加しています。
デラウェアの産地
ワイン用ブドウ栽培における好条件は、
① やせた、水はけの良い土地
② 日照量の多さ
③ 年間降水量の少なさ
④ 昼夜の寒暖差が大きい
の4つとされています。
デラウェア栽培面積全国1位の山形県もこれらの条件が満たされています。山形県には、ワイナリーが14軒あり、2016年に上山市と南陽市がそれぞれ「かみのやまワイン特区」「ぶどうの里なんよう」に指定され、ワイン消費、ワイン造りの拡大、ワイン用ブドウの生産振興など、市がその活動を支援しています。
栽培面積2位は山梨県で、ワイナリー数は日本一で81軒あります。日本においてデラウェアの栽培が始まったのが、山梨県甲州市塩山地区の奥野田で、今もなおデラウェアの名産地とされています。
また、意外と知られていないのが、ワイン造りの歴史がある大阪府で、1930年代にはワイナリー数は110軒を超え、山梨県を凌ぐほどでした(現在のワイナリー数は7軒)。大阪府で生産される日本ワインの約3分の1がデラウェアで、古くからデラウェアの産地だったことを物語っています。
※特に年数・年代の記載のないワイナリー数は2017年時点の数です。
デラウェアのワインの特徴
ブドウの皮は赤紫色をしていますが、デラウェアからは赤ワインではなく、【白ワイン】が造られます。
デラウェアは小粒で甘みが強いブドウなので、ワインも甘口タイプしかないのかな? と思うかも知れませんが、デラウェアのワインは、極甘口のアイスワインから甘口タイプ、そしてキリッとした辛口タイプまで味わいはさまざまです。
近年では、赤ワインと同じ製法の、ワインの醸造中にデラウェアの皮(種)も一緒に漬け込み発酵することにより、ワインの色合いが濃くなる「オレンジ」タイプや、発泡性の「スパークリング」タイプも多く、日本ワイン好きから高い人気を集めています。
デラウェアのワインはどんな料理に合う?
デラウェアワインは、軽やかで爽やかな酸味が特徴のものが多いため、ピザやトマト味のパスタなど、トマトソースの酸味が効いた料理と相性が良いです。さっぱりとした鶏肉のグリルや、旬の季節野菜を使った天ぷらなど、幅広い料理と合わせやすいですね。
デラウェアワインの名産地・大阪には「たこ焼き」に合わせるワイン、カタシモワイナリーの【たこシャン】が存在します。シャンパーニュの造り方と同じ【瓶内二次発酵】で造られる、デラウェア100%のフルーティーなスパークリングワインは、たこ焼きに合わせてカジュアルにワインを楽しんで欲しいという想いが込められています。
皆でたこ焼きパーティーをするときにお土産として持って行くと、きっと喜ばれますね。
デラウェアのおすすめワイン
オレンジ・スパークリング
デラグリ 2017 オレンジ
滋賀県
山形県産デラウェア100%使用
2017年 アルコール度数11%
フレッシュなブドウ本来の味わいを感じる、ナチュラルで心地の良い泡が特徴の「田舎式」と呼ばれる微発泡タイプ。デラウェアの果汁の中に、皮と種、実を漬け込む「醸し(かもし)」を行っているため、ワインの色合いがオレンジ色をしています。キリッと冷やして食前酒としてはもちろん、グレープフルーツの皮のような苦味も感じられるので、揚げ物と相性は◎。
辛口
タケダワイナリー ブラン
山形県
山形県産デラウェア100%使用
2018年 アルコール度数11%
完熟する前のフレッシュなデラウェアをつまんでいるような、とてもフルーティーなワイン。爽やかな酸味が続くので、平目など白身魚のお刺身、カルパッチョや、生牡蠣に合わせるといいですね。
熟成
がんこおやじの手造りわいん デラウェア
大阪府
大阪府はびきの産デラウェア100%使用
2013年 アルコール度数12%
こちらは珍しいタイプのデラウェアの熟成ワイン。コルクを開けた瞬間、ヨーグルトやバナナのような甘い香りが広がります。そしてシェリーのような熟成されたニュアンスをしっかりと感じ、なんだかクセになりそう! ワインそのものが深い味わいなので料理がなくても、ワインそのもので楽しめますね。ブルーチーズやしっかりとしたチーズとの相性も◎です。
いかがでしたでしょうか。
ワイン用のブドウ品種としては珍しい、生で食べるほうが有名な【デラウェア】。
シャルドネや、ソーヴィニヨン・ブランのブドウは生で食べてみたくても、なかなか手に入れるのが難しいですよね。デラウェアは5月頃にはスーパーで手軽に購入できるので、デラウェアのワインを飲みながら、デラウェアのブドウを食べてみると、香りや味の共通点を見つけられるかもしれません。
「デラウェアワイン」には、極甘口~辛口、スパークリングまで、様々なタイプがあるので、この機会に日本ワインの「デラウェア」を味わってみてくださいね。
■参照
2019年ソムリエ協会教本
平成29年11月国税庁課税部酒税課(ワイナリーの数)
記事内容は記事作成時点の情報となります。
J.S.A.ソムリエ、調理師、食生活アドバイザー2.3級を取得。旅行コンサルタント会社で旅館ホテルなどへの飲料提案を行う。現在は都内フレンチでソムリエとして活躍中。