酒精強化ワイン、シェリー・ポート・マデイラを知っていますか?

ウィスキーとシェリーのカクテル

酒精強化ワインとは

マデイラワイン

私自身、ソムリエの試験勉強で初めて耳にした「酒精(しゅせい)強化ワイン」という単語。

「シェリー」や「ポートワイン」ならば聞いたことがあったり、バーやレストランで見かけたことがあっても、これらを「酒精強化ワイン」と呼ぶのをご存じない方も多いのではないでしょうか?

酒精強化ワインはフォーティファイド・ワイン(Fortified Wine)とも呼ばれており、「Fortify = 強化」という言葉通り、ワインを醸造する工程の途中でアルコールを添加し、ワイン全体のアルコール分を高めたものです。簡単に言えば、アルコール度数を高めたワインのことです。

・スペインのシェリー
・ポルトガルのポート
・ポルトガルのマデイラ

これらが世界三大酒精強化ワインと呼ばれています。

(イタリアのマルサラを入れて、世界四大酒精強化ワインと呼ばれることもあります。)

酒精強化ワインは、ソムリエ・ワインエキスパートの一次試験、テイスティング二次試験でも高確率で出題されますので、これから資格取得を目指す方には特に知っておいて欲しいワインです。

酒精強化ワインの特徴

酒精強化ワインの製法は、ワインを発酵させている途中や発酵後に、アルコール分40~80%程度のブランデー(またはアルコール)を添加して、ワイン全体のアルコール分を15~22%程度にまでアルコール度数を高めるというもの。

このことでワインの保存性を高めると同時に、味わいに複雑さやコク、深みを持たせるのが特徴です。

味わいもさまざまで、発酵途中でアルコールを加えた場合、発酵が止まり、ぶどうの糖分がワインの中に残るので、甘口のワインになります。発酵後にアルコールを加えると、辛口に仕上がります。

また、通常のワインと同じく赤・白・ロゼそれぞれの酒精強化ワインがあります。

余談ですが、日本の酒税法では、これらの酒精強化ワインは、みりんと同じ「混成酒 (甘味果実酒) 」に分類され、ワインの分類である「醸造酒 (果実酒) 」ではありません。

酒精強化ワインとみりんが同じ酒類だなんて、驚きですね!

酒精強化ワインの種類

シェリー

スペインのシェリー樽

シェリーは、スペイン南部地方のアンダルシア州、ヘレス・デ・ラ・フロンテラの町を中心に、その周辺地区で生産されます。

  • ヘレス・デ・ラ・フロンテラ
  • サンルーカル・デ・バラメーダ
  • エル・プエルト・デ・サンタ・マリア

この3つの町で熟成されたものだけが「シェリー」を名乗ることができます。

主要ブドウ品種は約95%を占めているパロミノ(辛口用)。そのほかにペドロ・ヒメネス(甘口用)と、モスカテス(甘口用)の、いずれも白ブドウ3品種です。シェリーに赤はありません。

製法は独特で、白ワインを造り酒精強化をし、樽の4分の3まで入れます。樽内に空間を持たせることにより、ワインの表面にフロールという酵母の膜が形成されます。

アルコール15%まで強化したものはフィノタイプ(フロール有)になり、アルコール17度まで強化したものはオロロソタイプ(フロール無=膜がないため酸化)になります。

また、ソレラシステムという、熟成したワインの樽に新しいワインを注ぎ足す方法をとっているため、基本的にはシェリーにはヴィンテージがありません。

(日本で言う、老舗うなぎ店のタレの継ぎ足しのようなものですね。)

タイプは辛口から甘口で、下記でご紹介するように軽快なものから濃厚なものまで様々な味わいがあります。味の傾向としては、ナッツ類や木樽を思わせる香りが特徴的です。

  • フィノ(辛口) すっきりと軽く、きわめてドライな味わい。スタンダードタイプ。
  • マンサニーリャ(辛口) サンルーカル・デ・バラメーダで熟成されるフィノタイプ。塩気を感じる。
  • アモンティリャード(辛口) フィノとオロロソの中間的な風味のシェリー。フロール無。ナッツのような味わい。
  • パロ・コルタド(辛口) アモンティリャードの香りとオロロソのボディを持つ希少なタイプ。フロール無。
  • オロロソ(辛口) ワインに(17%まで)アルコールを強化し、酸化により豊かな香り、コク、深みがある。フロール無。
  • ペドロ・ヒメネス、モスカテル(甘口) ブドウを収穫後天日に干してから搾汁し、酒精強化によって発酵を停止したものをソレラシステムで熟成。極甘口。
  • ミディアム(ブレンド) アモンティリャード+ペドロ・ヒメネス
  • クリーム(ブレンド) オロロソ+ペドロ・ヒメネス

また、シェリーの産地ヘレスの伝統的な職業のひとつに、シェリーのソムリエ 「ベネンシアドール」があります。

酒精強化_ベネンシア

「ベネンシア」 と呼ばれる長い柄杓(ひしゃく) を使い、1メートルの高さからシェリー酒をグラスに注ぐパフォーマンスです。

月島スペインクラブ

東京都中央区にある月島スペインクラブで実際にフィノ、アモンティリャードを頼み、注いでもらいました。

目の前で入れてもらえるので迫力満点! 平日なのにたくさんの人で賑わっていました。

日本でもベネンシアドール&シェリーアンバサダーの資格呼称認定試験が、シェリー委員会によって行われておりますので、シェリーに興味がある方は是非チャレンジしてみてください。

ポートワイン

ポートワイン

「ポルトガルの宝石」とも称されるポートワインは、ポルトガルの北西部、ドウロ地方で生産されます。

ドウロはワイン生産地として1754年に制定され、ポートとしては1756年に世界初の原産地呼称管理法が成立しました。フランス、ボルドーの格付けは1855年なので、ポートがいかに早く格付けを導入したのかがわかりますね。

ブドウ品種はトウリガ・ナショナル、ティンタ・ロリス、トウリガ・フランカなど地元品種。

ブドウを収穫し、発酵と醸(かも)しを行い、望む残糖度に達したところに77%のアルコールを添加して、発酵を停止します。ブドウ果汁そのものの甘みを残すため、甘口タイプになります。

アルコール度数は19~22%、ホワイトのみ16.5%以上。

色や収穫年などで大きく以下の3つに分類されています。

  1.  ルビータイプ
    ワインの色が宝石のルビー色をしていることからルビーと呼ばれる。平均3年間の樽熟成後に瓶詰めされる若いタイプのポートワイン。
    ●ヴィンテージ・ポート デカンタージュ必要、収穫年表示あり
    ●レイト・ボトルド・ヴィンテージ・ポート 収穫年、瓶詰め年表示あり
  2.  トウニータイプ
    小さい樽で熟成させるなどして酸化が進み、ワインが黄褐色に変わったことから、トウニー(黄褐色)と呼ばれる。
    ●熟成年数表示トウニー・ポート 10年、20年、30年、40年ものがあり、瓶詰め年表示あり
    ●コリェイタ 収穫年、瓶詰め年表示あり
  3.  ホワイトタイプ
    ●ライト・ドライ・ホワイト・ポート 最低アルコール度数を16.5%以上にした比較的辛口タイプ

また、新たにフルーティな早飲みタイプとして、D.O.Cポートにロゼ・ポートが認定されています。

マデイラワイン

ポルトガル、マデイラ

リスボンから南西に約1,000 kmの大西洋に浮かぶポルトガル領の島、マデイラ島で生産されるマデイラワイン。

大航海時代、船に積み込まれたワインが、赤道直下の過酷な船旅で高温に晒されて劣化する中、マデイラワインだけは熟成し、各国で希少な高級ワインとして有名になりました。

添加するアルコール度数は96%もあり、ポートの77%よりもさらに強いのが特徴です。出来上がるワインのアルコール度数は17~22%に限定されています。

加熱成方法は2種類あります。

  1.  カンテイロ 倉庫の屋根裏で太陽熱を利用した、天然の過熱方法
  2.  エストゥファ タンクや樽の中で人工的に加熱する方法

昔ながらの天然加熱方法の「カンテイロ」の方が高級品となります。

マデイラのブドウのほとんどが急斜面の「ポイオス」と呼ばれる石垣で形成されており、タイプは辛口から甘口まであります。

  • セルシアル 白ブドウ品種 辛口タイプ
  • ヴェルデーリョ 白ブドウ品種 中辛口タイプ
  • ボアル 白ブドウ品種 中甘口タイプ
  • マルヴァジア 白ブドウ品種 甘口タイプ
  • ティンタ・ネグラ・モーレ 黒ブドウ品種 辛口~甘口タイプ (収穫量は全体の80%近くと最も多い品種)
  • テランテス 白ブドウ品種 甘口~辛口タイプ

マルサラワイン

イタリア最南端に位置し、地中海に浮かぶシチリア島で造られるマルサラワイン。

18世紀の大航海時代に、イギリス人のジョン・ウッドハウスが航海中に悪天候によりマルサラの街に避難し、偶然飲んだマルサラワインが当時イギリスで大流行していた「ポートワイン」や「マデイラワン」に似ていたため、イギリスで売れると考えて売り出し、世界中に広がりました。

一時期は品質の低いものが大量生産され、イメージを落としてしまいほとんどが料理用ワインに成り下がってしまいましたが、近年品質は回復傾向にあります。

色は、オーロ(黄金色)、アンブラ(琥珀色)、ルビーノ(ルビー色)に分かれており、甘いほうからドルチェ、セミセッコ、セッコに分類されます。これ以外に、製造法や熟成期間により、フィーネ、スペリオーレ、スペリオーレ・リゼルヴァ、ヴェルジネ、ソレラス、ヴェルジネ・リゼルヴァ、ソレラス・リゼルヴァ、ヴェルジネ・ストラヴェッキオ、ソレラス・ストラヴェッキオと非常に細かく分類されます。

その他の酒精強化ワイン

フランスにも、美味しくて有名な酒精強化ワインが2種類あります。

1. ヴァン・ドゥー・ナチュレル(Vin Doux Naturel) V.D.N.

フランス語で(Doux=甘い)(Naturel=天然の)という意味で、その名前の通り「天然の甘口ワイン」です。 

ブドウ果汁の発酵中にアルコールを添加し、発酵を停止させることにより、天然の糖分がワインの中に多く残り、甘口となります。これを樽やタンクで2~3年、長いものでは十数年熟成させます。

フランス南部ラングドック・ルーション、南部ローヌ地方や、コルシカ島で造られ、主に使用される品種は主にグルナッシュ種とミュスカ種。

特に有名なのが、ルーション地方のバニュルスリヴザルトで、フランスではチョコレートとバニュルスの甘口×甘口のマリアージュが定番となっています。 

2. ヴァン・ド・リキュール(Vin De Liqueur) V.D.L.

未発酵のブドウ果汁(一部発酵中の場合もあり)にアルコールを添加し、樽またはタンクにて熟成させます。

使用するアルコールは地方によって異なりますが、オー・ド・ヴィーやマール、またはコニャックやアルマニャックなどです。

銘柄は、コニャック地方のピノー・デ・シャラント、アルマニャック地方のフロック・ド・ガスコーニュが有名です。

そして、日本にも有名な酒精強化ワインがありました。

酒精強化_赤玉ポートワイン

このパッケージに見覚えがある方も多いはず? 赤玉スイートワイン(赤玉ポートワイン)です。

1907年サントリーの創業者・鳥井信治郎が、日本人好みのポートワインのような(当時の日本では、辛口の赤ワインは酸味が強く、あまり好まれませんでした)甘口の酒精強化ワインをつくるべく幾度となく改良を重ね、赤玉ポートワインを誕生させました。

ポルトガル政府との商標権の問題もあり、1973年に「赤玉ポートワイン」から「赤玉スイートワイン」に改名し、112年の時を超えて、今でも愛され続けています。

酒精強化ワインの楽しみ方

シェリーとチョコレートケーキ

酒精強化ワインは一般的には、アペリティフ(食前酒)や、ディジェスティフ(食後酒)として飲まれることが多いです。

アペリティフ(食前酒)は比較的辛口のものが多く、食前に飲む一杯のお酒が、仕事で疲れた心身を癒し、食欲を増進してくれます。

ディジェスティフ(食後酒)は甘口でアルコール度数の高いものが多く、料理を食べた後の口直しや、食後の消化を促してくれます。

もちろん食事中にお料理と合わせてもOK。私はスペイン料理店に行った時、たまに最初から最後までシェリーで通すときがあります。辛口のシェリー、フィノやマンサニーリャに合わせたつぶ貝のアヒージョやパエリア、食後にはデザート代わりに甘口のペドロ・ヒメネスを一杯。最高ですね~! 

スペイン料理店で、酒精強化ワインを気軽にグラスで試されてはいかがでしょうか。

まずはシェリーのスタンダードタイプのフィノから。そして色々な国の酒精強化ワインを、そして自分のお気に入りを探してみるのも楽しいですね。

酒精強化_林さん

■参考資料

・2019年 日本ソムリエ協会 教本
・2019年版 世界の名酒辞典

記事内容は記事作成時点の情報となります。

林 かおり(Hayashi Kaori)
ソムリエ林 かおり(Hayashi Kaori)

J.S.A.ソムリエ、調理師、食生活アドバイザー2.3級を取得。旅行コンサルタント会社で旅館ホテルなどへの飲料提案を行う。現在は都内フレンチでソムリエとして活躍中。