ワインを飲むときは、白ワインやシャンパーニュだったらキンキンに冷やして、赤ワインだったら常温で、と思っていませんか?
実は、必ずしもそうではない場合もあるのです。
今回は、温度によってワインがどのように影響を受けるのか、また種類ごとの適正温度と保存方法について解説します。
ワインと温度の関係
冷えた白ワインが、だんだん時間が経つに連れて味がぼやけてくる…もしくは、冷えた赤ワインが、温度が上がることによって美味しくなってきた…そんな経験はないでしょうか?
ワインの香りや味わいは、温度によって大きな影響を受けます。
では、温度によってどうやって変化するのでしょうか。
温度を下げると――
- フレッシュ感が際立つ
- 果実の香りなどのぶどう独自の香りが際立つ
- 味わいがドライな、スッキリとした印象になる
- 酸味がシャープな印象になる
- 苦味、渋みを強く感じられる
温度を上げると――
- 香りの広がりが大きくなる
- 熟成感、複雑性が高まる
- 甘みが強くなる
- 酸味が柔らかい印象になる
- ふくよかなバランスとなる
- 苦味、渋みがより快適な印象になる
いかがでしょうか?
ワインによって温度を変えるのは、そのワインの長所を最大限に引き出し、また短所は可能な限り包み隠すことを目的としているのです。
白ワインでも、すっきりとした白ワインは冷やした方が、ワインの爽やかな香りを感じ、またフレッシュな酸味も味わえます。一方、熟成した、しっかりとした白ワインであれば、冷やしすぎない方がワインの芳醇な香りや、繊細な味わいを感じやすくなります。
また、赤ワインを飲むときも、冷えているときは渋みしか感じられず美味しくないなぁと思っていても、時間をおくと、そのワイン独自の香りが立ってきて、また味わいの面でも渋みより果実味を感じられるようになります。もし、赤ワインが冷えた状態で提供されたら、手のひらでワインを包み込んで、少しずつ温度を上げてみて、温度による味わいの違いを是非感じてみてください。
ワインの種類別、適正温度
それでは、タイプ別にワインの適正温度を見ていきましょう。
スパークリング
スタンダードなタイプは6〜8度。氷と水を入れたクーラーに15分ほどつけておけば大丈夫です。
また、グランキュベ、プレステージと呼ばれるようなシャンパーニュは少し温度を上げて8〜12度にすると、より香りが上がってきて、ちょうどいい良い味わいとなります。
白ワイン
スッキリとした白ワインであれば、6〜12度。また、ロゼワインも同じくらいの温度で大丈夫です。
コクのあるような上級なワインの場合は、少し高めの10〜14度にしましょう。
一方、甘口のワインは冷やして6〜8度にした方がより美味しく感じられます。
赤ワイン
赤ワインの場合は、12〜20度くらいの間で、軽いワインほど温度は低く、どっしりとしたワインほど温度を高くして飲んでみましょう。赤ワインを冷やす!? と思うかも知れませんが、軽いワインの場合は冷蔵庫で少し冷やしておいてから、飲む30分ほど前に常温に戻しておくと、少し低めの温度で美味しく飲めたりもするので、是非試してみてください。
ちなみに、ワインの冷える時間も気にしてみましょう。
18度のワインを氷水に15分ほどつけておくと、6度近くまで冷やすことができます。また、ボトルのネック部分をもってくるくる回すと、より冷えやすくなります。
また、急いで冷やしたいと思ったら、氷水を入れたワインクーラーに塩をいれてみてください。
塩水にすることによって氷点が下がり、ワインクーラー内の温度が下がるので、通常よりもワインが冷えやすくなります。
最近では、暑い時期にBBQやピクニックなど屋外でスパークリングワインや、白ワインを飲むことも多いかと思います。外で飲むワインはそれだけで美味しいものですが、せっかく飲むのであれば、少し手間ですが、バケツや発泡スチロールの箱や保冷バッグ、そして氷と水を用意して、是非きちんと冷やして飲んでみてください。ワインがより一層美味しく感じられますよ。
逆に、ワインの温度を上げたいと思った場合に、レンジでチンや、鍋で火にかける…といったことは絶対にしないでください。アルコールが飛びますし、なによりワインの風味が損なわれます。温度を上げたい場合は、常温の環境において辛抱強く温度が上がるのを待ちましょう。
ワインの保存方法
ワインは飲むときの温度だけでなく、保存の際の環境も重要です。
もし素敵なワインをプレゼントでいただいたら、嬉しくて家に飾りたいかもしれませんが、ワインは暑さに弱い飲み物です。熱で劣化してしまう可能性があるので、すぐに専用の場所に保管しましょう。
では、どのような環境がワインにとっていいのでしょうか。
ワイナリーのワインセラーを想像したときに、洞窟のような地下環境を思い浮かべませんか?
そのイメージの通り、ワインは洞窟のような温度・湿度や、光の遮断された環境が適しています。
温度は年間を通じて12〜15度で温度変化が少なく、湿度は70〜75%、光や音、振動の影響が少ない環境が理想です。また、栓がコルクのものはコルクが乾かないよう、ラベルを上にして寝かせて保存しましょう。スクリューキャップのものは縦にして保存して大丈夫です。
ご自宅に家庭用ワインセラーがあればベストですが、カジュアルで熟成させないようなワインであれば、冷蔵庫でも大丈夫です。できれば野菜室に保管してあげましょう。
ワインセラーの種類
家庭用ワインセラーの種類は大きく分けて3つあります。
・ペルチェ式
電気で温度を制御するタイプ。パワーが無いため小型のものが多く、比較的お手軽に手に入れることができます。
・コンプレッサー式
冷蔵庫と同じように、モーターで温度を管理するタイプ。冷却パワーが強いので、大きめのセラーでも使われます。冷蔵庫と同様のモーターなので、音が少し気になるかもしれませんが、最近のものは振動が少なくなってきています。
・熱吸収式
アンモニアを使って、気化熱で温度を調節するタイプです。音は静かです。冷却力はコンプレッサー式の方が強く、冷えるまで時間がかかるので、電気代がかかってしまいます。
ワインセラーを選ぶポイント
ワインセラーを選ぶ上でもっとも重要なポイントは「一時保管なのか、熟成させたいのか」という点です。
一時保管でいいのであれば、低価格のカジュアルなワインセラーで大丈夫です。1万円前後のペルチェ式でもたくさん種類はありますので、入れたい本数やサイズ、そして見た目のデザインなどで、選んでみてください。
ワインを長期保管して熟成させたい場合は、コンプレッサー式の加温や加湿機能がついているものを選びましょう。10年以上も熟成させることを考えると、長寿なもの、また保証がちゃんとしているかどうかも気をつけて選びましょう。
いかがでしたか?
今度、ワインを買ったらきちんとした場所に保管し、また飲むときはワインの温度を意識してみてください。きっと今まで以上にワインを美味しく飲めるようになりますよ。
■参考
日本ソムリエ協会 教本
記事内容は記事作成時点の情報となります。
フリーランスソムリエ。
株式会社リクルートのゼクシィで営業を経験後、もっと海外を見たいと想い7ヶ月世界一周の旅へ。各国でワインが日常的に飲まれているのを目の当たりにし、もっと日本でもワインが身近になって欲しいと思い、ワインに携わる仕事をしようと決意して帰国。その後、AIS認定イタリアソムリエ養成コースをイタリアにて受講。インポーター、ワインスクールに勤務後、現在はフリーでワインバー、ワインイベントなどを開催している。JSAソムリエ保有。