今日は、なにノムノ?
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イタリアワインの基礎知識 ワイン選びのヒントとなる品種や生産者

イタリア国旗

皆さんはイタリアワインにどのようなイメージをお持ちでしょうか? この記事では、イタリアワインの知識として入門的な、特徴、歴史、格付け、主な産地、選び方をご紹介します。イタリアワインを楽しむ一助となれば幸いです。

イタリアワインの特徴

イタリアワインの特徴を一言でお伝えすると「多様性」です。

国土の広さは日本の80%ほどの大きさですが、全20州でワインを生産しており、その量もフランス、スペインと並び常にトップ3位にランクインしています。

北をアルプス山脈、三方を海に囲まれるイタリアは温暖な気候で日照にも恵まれ、ブドウの生育期に雨が降らないというブドウ栽培には理想的な環境です。1861年まで統一国家でなかったために各地方で文化や歴史が大きく異なり、ワインに対するアプローチにも地方ごとの違いが生まれています。

イタリアワインの歴史

イタリアにおけるワイン造り自体の歴史はとても長く、紀元前2,000年には始まっていたようです。本格的なブドウ栽培を伝えたのはイタリア中部を支配していたエトルリア人と、イタリア南部を支配していたギリシャ人です。ギリシャ人は優れた栽培、醸造技術を普及させ、現在でも栽培されているブドウ品種であるグレーコ、グレカニコ、アリアニコを持ち込みました。以降イタリアでは長く国内消費用にワインが生産されてきました。

1863年にヨーロッパに急速に広まったフィロキセラにより、フランスなどの産地が被害を受け、まだフィロキセラの被害にあっていなかったイタリアに生産者が殺到しました。しかし20世紀に入り今度はイタリアにもフィロキセラが拡大してしまいました。第一次世界大戦に勝利したにも関わらず、あまり成果を得られなかったイタリアは景気が悪化し、ブドウ栽培で十分な生活ができないため大都市や外国に働きに出る農民が増えました。そのためフィロキセラの被害を受けたブドウ畑は見捨てられ、荒廃してしまいました。

1970年代末から意欲的な生産者の一団が、世界に通用する高品質なワイン造りを目指し、イタリアワインの急速な近代化が進みました。イタリアワイン・ルネッサンスと呼ばれる動きです。導入されたものは具体的には「畑での密植」「低収穫量」「最先端の栽培方法」「近代的醸造技術」「小樽熟成」「国際品種」で、1980年代から次々とリリースされ、世界から注目を集めました。

そして現在ではイタリアワイン・ルネッサンスの反動から、固有品種伝統的な栽培や醸造の見直しが行われ、イタリアの特徴であるそれぞれの土地の「多様性」を活かしたワイン造りへと方向転換されつつあります。

イタリアワインの格付け

ワインにあまり馴染みのない方にとっては、「ラベルに書いてあることがよくわからない」場合があるかと思います。格付けと産地をリンクさせて代表的なものだけでも押さえておくだけで、ワイン選びがより楽しくなります。ぜひ「この名前ということは、こんな味かな?」と想像を膨らませてみましょう。

格付けという概念についてですが、とても簡単にお伝えするならば、「その地域で造られたワインであることを証明する」ものです。格付けの決まり方は国や地域ごとに異なりますが、今回はヨーロッパとイタリアについてご紹介します。

EUでは2008年に新しい規制に改定され格付けが3段階に分かれています。イタリアもそれに合わせ、3段階の格付けに2010年に改正されました。

最上位は「D.O.P.」(保護原産地呼称ワイン)というもので、イタリアの改正前のD.O.C.G.とD.O.C.に該当します。

その次の格付けである「I.G.P.」(保護地理表示ワイン)はイタリアの改正前のI.G.T.に該当します。この2つは地理表示を伴います。

3番目の格付けである「Vino」はイタリアの改正前のVino da Tavola(テーブルワイン)に該当し、地理表示のないものです。

D.O.C.G.、D.O.C.、I.G.T.については、従来通りの表示も認められています。

イタリアワインの主な産地

イタリアワインとグリッシーニ

格付けについて簡単に理解できたところで、最上位に位置するD.O.C.G.もしくはD.O.C.に該当する代表的なものを取り上げながら、イタリアの産地についてご紹介していきます。

全部で20州ありますので、この記事では特に最初に覚えたい4州についてご紹介します。「ピエモンテ」「ロンバルディア」「ヴェネト」「トスカーナ」の4州です。

ピエモンテ州

こちらはトスカーナと並ぶ高級ワイン産地として有名です。イタリア北部の中でフランス、スイスと接する地域であるこの州ではイタリアワインでも特に有名な「Barolo」(バローロ)や「Barbaresco」(バルバレスコ)を生産しています。ともにD.O.C.G.に各付けされていて世界的な名声を誇っています。これらはネッビオーロと呼ばれるイタリアでも最も高貴な黒ブドウから造られます。ちなみにネッビオーロは色合いが淡く、タンニン(渋み)が豊かなことが特徴です。

ロンバルディア州

こちらは先ほどのピエモンテ州の東に位置する地域です。この州で抑えておきたいのは高級スパークリングワインのD.O.C.G.Franciacorta(フランチャコルタ)です。生産方法はシャンパーニュと同じ瓶内二次発酵方式で、世界的なスパークリングワインの産地としての地位を確率しています。

ヴェネト州

イタリア北東部に位置する地域で、イタリア州別生産量で1位になることもある大産地です。特に有名なワインはD.O.C.Prosecco(プロセッコ)とD.O.C.Soave(ソアーヴェ)です。

プロセッコは主にグレーラというブドウ品種を用いて造られるスパークリングワインで、世界的に大ヒットしています。軽やかでフールティな味わいで、ガス圧も低めなためとても飲みやすく、さらにリーズナブルなことが人気の要因でしょう。

ソアーヴェは主にガルガネガというブドウから造られる白ワインです。柑橘系の香りとフレッシュな味わい、心地良い苦味があることが特徴です。

トスカーナ州

この地域で特に有名なワインはD.O.C.G.Chianti(キャンティ)でしょう。

サンジョヴェーゼ種というブドウを主に用いて生産されるこの赤ワインは、食事にマッチしやすいものが多く、親しみやすいことが特徴でしょう。しかし、生産エリアが広大で生産量もとても多いため、スタイルも生産者によって幅が広いことが難点です。

キャンティ内にはD.O.C.G.Chianti Classico(キャンティクラシコ)と呼ばれる格付けもあります。もともとキャンティはこのキャンティクラシコの地域で造られていたのですが、あまりにも人気が高く、キャンティワインの生産地区が拡大されていってしまったのです。そこで本来の産地であるこのキャンティ地方が独立し、D.O.C.G.Chianti Classicoを名乗るようになりました。

このエリアは先述のイタリアワイン・ルネッサンスを牽引した産地でもあり、素晴らしい生産者が多いです。

イタリアワインの選び方

ヴァラエティに富んだイタリアのワインを選ぶのは難しいのですが、用途とタイプごとにご紹介します。

プレゼント用の場合

①スパークリングワイン――フランチャコルタ
②白ワイン―― イエルマンという生産者
③赤ワイン―― アンティノリという生産者

自宅用などカジュアルな場合

④スパークリングワイン―― プロセッコ
⑤白ワイン―― ヴェルメンティーノ種
⑥赤ワイン―― キャンティ

それぞれ解説を加えます。

①フランチャコルタといえばシャンパーニュに次ぐ高級スパークリングワインの地位を確立していますから、プレゼントにきっと喜ばれるでしょう。

②イエルマンという生産者は北イタリアのフリウリ=ヴェネツィア=ジューリア州にワイナリーを持っています。イタリア白ワインの最高の造り手との評価も受ける生産者です。

③アンティノリという生産者はトスカーナに拠点をもち、14世紀からイタリアワイン界の歴史に名を刻んできました。イタリア全土に10以上のワイナリーをもち、その土地の個性を発揮させることに長けています。

④プロセッコは1,000円台から購入でき、味わいも親しみやすいためまさに自宅用に最適なアイテムと言えます。

⑤ヴェルメンティーノというブドウ品種はサルデーニャ島やトスカーナ州の海沿いの地域で多く栽培されています。ミネラル感とフレッシュさを特徴としています。

⑥キャンティは価格に幅があり、自宅用でも楽しめる安価なものも沢山あります。程よく果実味と酸味があり、渋味は滑らかなものが多いため、合わせる料理の幅も広く、家庭料理の素晴らしいパートナーになるでしょう。

最後に

如何でしたでしょうか。フランスと比べると少々なじみのないイタリアワインについて代表的なブドウや産地を取り上げてみました。イタリアの魅力はやはり多様性。学べば学ぶほどより楽しめる伝統的生産国ですので、この記事がイタリアワインを知るための、小さなきっかけになれば幸いです。

■参考文献 
日本ソムリエ協会教本

記事内容は記事作成時点の情報となります。

ソムリエ柴田 郁也(Shibata Fumiya)
ソムリエ柴田 郁也(Shibata Fumiya)

フランス料理店勤務時にソムリエに憧れ勉強を始め、23歳で日本ソムリエ協会認定ソムリエを取得。都内のミシュラン星付きのフランス料理店やビストロを経て現在中目黒B.B.S.DINING.にてソムリエとして勤務。