今日は、なにノムノ?
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ソムリエ試験とは?現役ソムリエが疑問解決!合格率から勉強法まで。

ソムリエ試験を受けてみたいけれど二次試験や論述試験など少し複雑な制度に戸惑っている方は多いのではないでしょうか。この記事ではソムリエ試験に関する基本情報から勉強法まで全てお教えします。ソムリエを目指す方や少し気になっているという方もぜひご一読ください!

ソムリエ試験って何?

ソムリエ試験とは日本ソムリエ協会(J.S.A.)がワインを中心とした飲料の普及やソムリエなどの技術の向上を目的として実施している、ソムリエ呼称資格認定試験です。あの有名な田崎真也さんが会長を務めており、2018年には京都で開催されたA.S.I.アジア・オセアニア最優秀ソムリエコンクールで優勝した岩田渉さんもこちらのソムリエを所有しています。

日本ソムリエ協会(J.S.A.)は20歳以上でアルコール飲料を提供するサービスや取り扱いのある職務を月120時間以上、通算3年以上経験し今もなお従事していないと試験を受けることはできません。(日本ソムリエ協会会員暦が2年以上あれば職務の経験は通算2年で構いません。)受験資格を有している職務としては、レストランでのホール、キッチンスタッフ、ワインショップ、ワインコンサルタント、客室乗務員などです。

またソムリエの職種に就かれていても受験に必要な経験年数に満たない方や、職務経験のないワイン愛好家の方はワインエキスパートの資格取得ができます。ワインエキスパートとソムリエの一次試験はほとんど同じなので、難易度も同レベルといえるでしょう。二次試験のテイスティングでは白2、赤2、その他のお酒1が出題されました。2018年度は初めて日本のメルローを答えるという問題でかなり難しかったです。また三次試験のサービス実技はありません。2018年の合格率は32.8%だったのでソムリエに比べると若干合格率が高いです。

さらに2019年からシニアソムリエ、シニアエキスパートの呼称が「エクセレンスソムリエ」「エクセレンスエキスパート」に変更になりました。今までのシニアの試験内容、難易度は変更になるかもしれませんね。
※ちなみに日本にはもう一つソムリエ資格が取得できる団体「全日本ソムリエ連盟(ANSA)」があり、こちらでは満20歳以上であれば誰でも受験資格があります

ソムリエ試験に合格するとできるようになること

ソムリエ試験に合格すると金色に輝く葡萄のバッチと認定証がもらえます。最近偽者のソムリエバッチがネットで取引されているとニュースで話題になってましたが、実際にはバッチの他に認定証とカードがついてきますので、その人がソムリエかソムリエではないかすぐに分かってしまいます。

ソムリエは、一番の花形とも言える「お客様へのワインの提案」を飲食店やワインショップなどで行います。ソムリエの資格がなくてもワインの提案をすることはできますが、お客様にとってはソムリエからの提案かどうかということで安心感や満足感が変わってくると感じています。

ソムリエ資格を持っていると憧れのフレンチやイタリアンレストランなど自分が働きたいお店に就職できる確率もあがりますし、J.S.A.のソムリエ資格を所有していればお給料の昇給にも繋がります。仕事以外にも自分の趣味としてワインを楽しむことができるので、一度取得した資格は一生の宝物になります。

ソムリエ試験の合格率や難易度

ソムリエ試験の合格率は2015年までは約40%でしたが、2016年にワインアドバイザーがソムリエと統合された影響でしょうか。2016年29.0%、2017年23.5%、2018年26.5%と現在の合格率は20%台になっている状況です。二度目以降の受験で、第一次試験、第二次試験を免除された人もいるのでストレートの合格率はこれよりも下がります。

2018年の第一次試験を通過率は、通過人数から推測すると30%程度だと思います。第二次試験通過は80%程度、第三次試験通過は90%程度と言われています。第三次試験で落とされることは少ないようです。第一次試験に合格できればもし二次、三次試験に不合格になった場合も、翌年から3年間は第一次試験が免除となるので、まずは第一次試験を通過することに専念しましょう。

第一次試験が難しいと書きましたが、実際に出題される問題は全て日本ソムリエ協会教本(約700ページ。以下、ソムリエ教本)に書いてあることだけです。難易度は決して簡単とは言えませんが、私は試験の半年前まで「カベルネ・ソーヴィニヨン」のことを「カルベネソーヴィニオン」と間違って覚えていましたし、製造方法なども「???」でワイン初心者レベルでした。

その状態からでも合格できたのは、半年間ワインスクールに通ったのも大きいですが、どんなに忙しくても毎日、教本は開いて目を通していました。また、キッチン、リビング、洗面台、トイレなど目に付くところ全てにボルドー(メドック)の格付け61シャトーや自分でつくった国別のまとめシートや地図を貼りました。子供達も一緒に覚えていたので今でもこの格付け61シャトーは言えたりします。

皆さん働きながら勉強しているので大変なのは一緒です。今日は疲れているから明日にしよう。なんて思わずに疲れていたら1分だっていいんです。毎日コツコツと勉強すれば、合格できる試験なのではないでしょうか。

ソムリエ試験の内容って?

第一次試験

2018年からパソコンで解答する「CBT方式」になりました。第一次試験は二回受験することができ、どちらかで合格点を取れば試験通過となります。ちなみにCBTとは《Computer Based Testing》の略です。コンピューターを利用して実施する方式のことで、受験者はパソコン画面に表示された試験問題に対して、マウスを用いて解答します。第一次試験は記述はなく、全て選択式なのでマウスでクリックするだけです。

2019年の試験は7月20日(土)~8月30日(金)の期間中、全国47都道府県約250ヵ所から好きな場所と時間を選べます。時間は70分。問題数は120問で一人ひとりランダムに出題され、今年はその場で合否がわかる予定です。

例えば、

 
・石灰岩で造られるリースリングはどこ?(答 岩手県)
・ルーマニアの国境と接している国は? (答 セルビア)
・酒造好適米の五百万石の命名年は?  (答 1957年)

といったワインならともかく日本酒、焼酎の問題もあり、重箱の隅をつつくような、泣きたくなるような難しい問題も出題されましたが…難しい問題は皆ができていないはずです! 100%正解する必要はありません。70%取れたら合格と思ってよいでしょう。私は自己採点で68%でした。

私が第一次試験を受けた場所は銀座CBTS歌舞伎座テストセンターでしたが、緊張しすぎたせいか頭が真っ白になってしまい、受験者情報を入れるパスワードがうまくいかず、終了後も押さなければならないボタンを忘れてしまい、受付の方に2度もお世話になりました。当日は絶対に緊張しますから平常心を忘れないでくださいね。

第二次試験

第二次試験は2019年10月9日(水)にテイスティング(40分)と論述(20分)を行います。(論述試験は第二次試験の日に受けますが、第三次試験の内容として審査されます。第二次試験の合否はあくまでテイスティングの結果となります。)

・テイスティングについて

例年ワイン3種類とワイン以外のお酒2種類の計5種類が出題され、品種、生産国、年代、テイスティング用語を選択しマークシートにチェックします。

2018年の銘柄はこちら

 
1.白 2016年 アルゼンチン  トロンテス
2.白 2016年 フランス    リースリング
3.赤 2016年 オーストラリア シラーズ(シラー)
4.マデイラ
5.カルヴァドス

初めて出題されたアルゼンチンのトロンテス。私はゲヴュルツトラミネールのライチの香りを感じ、ゲヴェルツが選択肢になかったため消去法でトロンテスを選びました。(トロンテスは試験対策で1度飲んだだけでした…)このように飲んだことがあまりなくても、この品種とこの品種は香りが似ている、色が似ているとそれぞれの品種や国の特徴さえ掴めば難しくないと思います。

2018年のテイスティングの点数配分が公表されていましたが、品種の点数配分ははたったの3%です。それに比べ、外観24%、香り33%、味わい20%、この3項目だけで77%もあるのです。この第二次試験は品種当てクイズではないので、品種が当たらなくても合格した! なんて話はよく聞きます。今からワインを飲む時は外観、香り、味わいを気にしながら飲んでみるといいですよ。

・論述について

論述試験は第三次試験として審査されますが、第二次試験のテイスティング終了後すぐに行われます。テイスティングでうまくできたか不安でも気持ちを素早く切り替えなければなりません! そして時間が20分。1問7分もありませんからね。とりあえず文字数を埋めることが大事です。

2018年の論述問題はこちら

 
・問題1 
 テイスティング試験で供出された「2番目のワイン」に合わせて、お勧めする料理と
 その理由を200字以内で説明してください。
・問題2
 「ジョージアワイン」について200字以内で説明してください。
・問題3
 2015年より輸入ワイン量No1になったチリワインの今後の展望について説明してください。

例年、テイスティングしたワインに料理を合わせるマリアージュ問題、そしてワイン(ぶどう品種)について説明する問題が出題されています。私は問題1で「2番目のワイン」に合わせるところを間違えて1番目のワインと思い込み「ホワイトソースのマリアージュ」について書いてしまいましたが、白ワインだったので基本的な答えはあっていたのかも知れません。

ワインと料理のマリアージュ問題が出題されたら、難しく考えずに自分が合うと思う身近な料理(例えばマスカット・ベーリーAにすき焼き、甲州に湯豆腐など)を提案すれば大丈夫だと思います。

第三次試験

2019年は11月25日(月)にサービス実技が行われます。赤ワインを注文されたお客様に対してデカンタージュを必要としたサービスを7分間で実演し、試験官が採点します。

Ⅰ.お客様に対してパニエを使用して行うワインのプレゼンテーションとデカンタージュの説明 

Ⅱ.ワイングラス、テイスティンググラス、デカンター、皿2枚、紙ナプキン2枚、デポライトの準備

Ⅲ.抜栓(あまり抜栓が得意ではない人なら、ソムリエナイフはダブルアクションが使いやすいです)

Ⅳ.ソムリエのテイスティング

Ⅴ. デカンタージュ

Ⅵ.お客様へのテイスティングとサービス

Ⅶ.片付けをして終了

私は上記Ⅴデカンタージュの時に、ワインを少し瓶に残した方がいいのか悩みましたが

●若いビンテージの場合
  香りを開かせるためのデキャンタージュでワインは注ぎきる

●古いビンテージの場合
  ビンテージが古いため澱を取り除くためのデカンタージュでワインは指1本分くらい瓶に残す

この理解で大丈夫です。ただし若いビンテージでも実際に澱がみえた場合は澱があったことをお伝えし、澱の分だけ残したほうがいいでしょう。三次試験は失敗をしても落とされることはあまりないと言われています。三次試験で落ちた方は論述がNGだった方みたいですね…。二次試験が合格してからの1カ月で練習すれば十分に間に合いますので、まずは一次、二次試験の突破を目指してください! 

ソムリエ試験対策にはどんな勉強法がいい? 

第一次試験対策

まず最初に、5年分の過去問題を教本でチェックしましょう。これを行うことでソムリエ試験の基礎問題が解ってってくるはずです。その後にソムリエ教本をとにかく読むこと。ソムリエ教本を国別に、できれば1日に同じ箇所を3回読むようにします。ソムリエ試験は記述式ではなく4択から選べばいいので一字一句覚える必要はありません。私は、国別に重要な要素(品種、地域名、土壌など)や地図をA4用紙に手書きで作成し、目に付くところに貼るようにしました。

実際にフランスのシャトーを巡る旅などに行けば体験を通して知識も身に付きますが、お金もかかりますし、全世界の生産地を回る時間もないですよね。そんな時は旅行本やGoogleマップのストリートビューで各国の街、風景、お店の様子を実際にみるとビジュアルと共に知識を紐づけて覚えることができます。私は貴腐ぶどうが有名なソーテルヌやバルサックってどんなところだろうとGoogleストリートビューで街の雰囲気やお店を見ていたのですが、実際にテストでバルサックの場所を地図から選ぶ問題がでたときには、ラッキーでした。

第二次試験対策:テイスティング

第二次試験対策はとにかくワインを飲むことが重要です。1人でテイスティングを行うときはフルボトルだと早く飲みきらないと酸化してしまい、味わいが変化してしまうのでできればハーフサイズがいいですね。

また赤坂にあるワインバーnomuno(ノムノ)はワイン約100種類がフリータイム3,000円(税抜)で飲み放題です。実際に試験で使用されるテイスティンググラスが使用されていますし、アイマスクも置かれていました。まさに試験対策のためにあるようなお店ですね。周りのお客さんも試験対策でテイスティングされている方が多かったので、情報交換の場としても利用できます。

ワインショップのエノテカヴィノスやまざきも9月頃から第二次試験対策でブラインドティスティングが行えましたので要チェックです。また、試験で使用される国際規格のテイスティンググラスは第二次試験間近になると売り切れてしまうので早めに購入しておきましょう。

その他のお酒は正解すればラッキー程度に考えていましたが、セガフレード・ザネッティ・エスプレッソで100円からコアントロー、フランジェリコ、アマレット、ベイリーズ、サンブーカ、カルヴァドス、グラッパ、ポモドノルマンディー、リモンチェッロの9種類が低価格でテイスティングすることができ、ここで飲んだカルヴァドスのおかげで私は二次試験のその他のお酒で正解することができました。

おすすめの本としては、「ワインテイスティングの基礎知識」(新星出版社 久保將監修)。この解答付き二次攻略テクニック本をみながらだとワインの外観、香り、味わいをどう捉えたらいいのか初心者でもとてもわかりやすいです。

第二次試験対策:論述

第一次試験が終わった後も教本を読み返すことと、日本ソムリエ協会(J.S.A.)に入会していると奇数月に機関紙「Sommelier」が発送されます。この「Sommelier」を読んでおくとソムリエ協会が推しているトレンドやワインの傾向がよくわかるので一読の価値ありです。(料理とワインのマリアージュについてもよく書かれています。)

第三次試験対策

日本ソムリエ協会(J.S.A.)では、受験者向けにサービス実技の動画配信を行っていますので、目を通しておきましょう。私はパニエ、デカンターを購入し、家でワインを飲むときには試験をイメージしてパニエを使った抜栓、言葉遣いの練習していました。ワインボトルを斜めにした状態での抜栓は少しコツがいるので第二次試験が終わってから練習すればいいでしょう。

ソムリエ試験の申し込み方法

2019年度の出願は3月1日(金)から6月28日(金)18時までです。

申し込み順にソムリエ教本が配送されますので申し込みは早い方がいいですね。

第一次試験1回受験 25,440円(正会員17,210円) 
第一次試験2回受験 29,760円(正会員21,530円)
第二次試験から受験 12,690円(正会員6,520円)
第三次試験から受験 6,340円(正会員3,260円) ※全て税込 

第一次試験は2回受験することができるので自信がある方以外は2回受験することをおすすめします。私の周りで受験した方は、一人以外全員2回受験で受けていました。出願時に受験回数を決めるので後から変更することはできません。間違えないように気をつけましょう。

また今年から、過去5年間(2019年度は2014~2018年合格者が対象)のうちにソムリエ、ワインエキスパートに合格された方は、別呼称(ソムリエ、エキスパート)を受験する場合、必ず第一次試験が免除となりました。私もブラッシュアップするために、ワインエキスパート試験に申し込みましたので受験生の皆さん、一緒に頑張りましょう! 

■参考
一般社団法人日本ソムリエ協会


記事内容は記事作成時点の情報となります。

林 かおり(Hayashi Kaori)
ソムリエ林 かおり(Hayashi Kaori)

J.S.A.ソムリエ、調理師、食生活アドバイザー2.3級を取得。旅行コンサルタント会社で旅館ホテルなどへの飲料提案を行う。現在は都内フレンチでソムリエとして活躍中。