今日は、なにノムノ?
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ブルゴーニュワインの特徴は? ボルドーワインとの違いも詳しく解説!

ブルゴーニュのワイン畑、秋

ブルゴーニュワインとは

Villa Mas, tast Vosne-Romanée
Photo by dpotera on Flickr

ボルドーと並んで、フランスの2大銘醸地と言われる、ブルゴーニュ。どっしりとしたボルドーワインに対して、繊細なブルゴーニュワイン。どちらがタイプ? といった会話も多いのではないでしょうか。かの有名な「ロマネ・コンティ」もブルゴーニュのワインです。

しかし、ブルゴーニュワインと言っても、白ワインもあれば赤ワインもありますし、「ブルゴーニュ」と書かれているものもあれば「ムルソー」や「ジュヴレ・シャンベルタン」など、これは何を示すもの? と思ってしまうエチケットも多いものです。

今回は、そんなちょっと複雑なブルゴーニュのワインについてお伝えいたします。

ブルゴーニュワインの産地

ブルゴーニュワインは、名前の通り、フランス北東部のブルゴーニュ地方のワインです。ブルゴーニュは大きく6つの地区に分けられます。

北から白ワインで有名なシャブリ&グラン・オーセロワ地区。コート・ドールという『黄金の丘』と訳される、約50kmにわたる細く長く続く丘陵の斜面に広がる北部コート・ド・ニュイ地区と南部の コート・ド・ボーヌ地区。そこからさらに南にコート・シャロネーズ地区、マコネ地区。そして日本でもボージョレワインで有名なボージョレ地区があります。

ブルゴーニュ一帯は、ジュラ紀(2億年〜1億5千万年前)に海だったため、ブルゴーニュ地方の土壌は海の生物の死骸が蓄積されてできた石灰岩がメインとなっています。となると…ワインも「ミネラル感を感じられる」。こう言えるとちょっと通っぽいですね。

ブルゴーニュワインの特徴

シャルドネ
シャルドネ

比較的冷涼な気候のブルゴーニュ地方では、ブドウの皮が薄く、繊細なワインが多く作られます。ぶどう品種は、赤ワインはピノ・ノワールやボージョレに用いられるガメイ、白ワインはシャルドネ、またあまり多くはないですがアリゴテが用いられます。

また、ブルゴーニュでは単一品種で造られるので、ブドウの特徴だけでなく、その土地や、その年の気候などが反映されたワインが出来上がります。

ブルゴーニュの歴史

ブルゴーニュワインを語る上で、是非歴史も少し知っておいてください。

ブルゴーニュのワイン造りが大きく発展したのは、中世の修道院の功績です。彼らは、場所によって個性の異なるワインがうまれることを見抜き、村ではなく、畑のより小さな単位の「クリマ」を識別しました。

14世紀には、ブルゴーニュ公国が外交の材料としてブルゴーニュワインを利用し始め、それによりワインに一流の品質を求められるようになりました。そして、その時の公爵がブルゴーニュにガメイ種を植えることを禁じ、コート・ドールの丘ではガメイ種が引き抜かれ、ピノ・ノワールに植え替えられました。しかし、南の方のボージョレ地区はブルゴーニュ公国ではなかったため、今でもボージョレ・ヌーボーを生み出すガメイ種が植えられています。

17世紀になると、修道院の力が衰退するにつれて、有力な貴族が畑を所有していきました。しかし、フランス革命により、多くの畑が国有化され、その後、新興の富裕層を中心に畑が売却されました。以降、ブルゴーニュの畑の所有者は、相続と売却が繰り返されて、どんどん細分化されていきます。これによって同じAOCの名前のワインでも「ルイ・ラトゥール」であったり「オリヴィエ・ルフレーヴ」だったり、所有者が変わってくるんですね。大きな畑になると、何十人も所有者がいる…なんてことも有り得ます。

なお、ボルドーの場合は、ブルゴーニュと同じくフランス革命時に政府に没収されますが、資金力のあるボルドーの商人の手により、分割されることなく買い戻されたので、ボルドーでは一つの畑は一つの所有者となっています。

ブルゴーニュの格付け

繰り返しになりますが、テロワールを重要視するブルゴーニュでは、日当たりや風や土壌によってもブドウの品質が変わってくるので、畑よりもより小さな単位の区画で格付けが行われます。この最も小さな区画が「クリマ」です。

1935年のフランスのワイン法であるA.O.C.が制定されると、それまで優良と認識されてきたブルゴーニュの多くのクリマがA.O.C.と認められました。

さて、ブルゴーニュ地方の格付けは以下の4つに分けられます。

グラン・クリュ/Grand Cru(特級畑)

その名の通り、その村の畑の中でも最高のワインを生み出すクリマに名付けられています。高級ワイン有名な「ロマネ・コンティ」や赤の「エシェゾー」、白では「コルトン・シャルルマーニュ」などがこちらにあたります。

 プルミエ・クリュ/Premier Cru(一級畑)

こちらはグラン・クリュに次ぐクリマです。グラン・クリュが『特級』であるのに対して、こちらは『一級』の意味ですね。ラベルでは、畑の名前の下にプレミエ・クリュ(Premier Cru)が表示されていることもあります。たとえば、白で有名な村名ワイン「ムルソー(Meursault)」に「プルミエ・クリュ」と記載されていれば、それは「ムルソー」の中でも一級の区画、という意味になります。

 村名アペラシオン

こちらは、そのままで、良質なワインを造る畑をもつ村の名前のワインです。

 地域名アペラシオン

上記の3つ以外で、指定された市町村で造ることができるワインです。ブルゴーニュのスパークリングである「クレマン・ド・ブルゴーニュ」もこちらにあたります。

では、エリアごとの有名AOCをみていきましょう!

地区ごとのAOCやワインの特徴

シャブリ&グラン・オーセロワ地区

オイスターバーで、「牡蠣にはシャブリが合うよね〜」と誰かが話しているのを耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか?

シャブリ地区は、冷涼な気候と牡蠣の化石を含む特徴的な土壌からくるミネラルな香りのするワインができるのが特徴です。

主要なAOCはやっぱり「シャブリ」! 「プティ・シャブリ」や「シャブリ・プルミエ・クリュ」「シャブリ・グラン・クリュ」もありますが、生牡蠣に合わせるなら値段が張るシャブリよりもプティ・シャブリくらいのもののほうが、キリッとしてて美味しいと思います。

コート・ド・ニュイ地区

こちらは、赤ワインが90%を占める、素晴らしいピノ・ノワールを造る地区。

「ジュヴレ・シャンベルタン」や「エシェゾー」そして、ヴォーヌ・ロマネ村の「ロマネ・コンティ」などを生み出すのがこちらの地区です。

なお、「ロマネ・コンティ」はグラン・クリュの名前で、こちらは「ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ(DRC)」という生産者が単独で所有する畑です。DRCは他にも「ラ・ターシュ」や「モンラッシェ」「グラン・エシェゾー」の畑も持っているので、「ロマネ・コンティ」と聞いたら、畑名なのか生産者名なのかご確認ください。

コート・ド・ボーヌ地区

コート・ド・ニュイが素晴らしい赤ワインを生み出すのに対して、こちらは世界に知られた白ワインを生み出す地区です。

「ムルソー」やグラン・クリュの「コルトン・シャルルマーニュ」、「モンラッシェ」がこちらの地区です。

コート・シャロネーズ地区

コート・ドールの南、グラン・クリュがない地区ですが、フルーティで軽やか、バランスのよい、コストパフォーマンに優れた赤と白のワインが多く造られています。

マコネ地区

更に南のマコネ地区にはシャルドネが適しており、北のコート・ドールよりもやや温暖で日照量も多いので、よりふくよかな、力強いワインが生み出されています。

ボージョレ地区

「ボージョレ・ヌーヴォー」と言えば、聞いたこともある人が多いのではないでしょうか。

毎年11月の第3木曜日に解禁になるボージョレ・ヌーヴォーを造っているのがこの地区になります。なお、ボージョレのぶどう品種はピノ・ノワールではなく、ガメイ。

つい「ヌーヴォー」の早飲みのイメージがありますが、熟成させて楽しむ高品質な「クリュ・ボージョレ」もあるので、是非お試しください。

ブルゴーニュワインの当たり年

ブルゴーニュワインの当たり年をおさらいしましょう。

赤ワインの当たり年

1990年、1996年、2005年、2009年、2010年、2015年

白ワインの当たり年

1989年、1996年、2010年、2014年、2017年

ボルドーワインとの違い

Supper
Photo by Zdenko Zivkovic on Flickr

「ブルゴーニュタイプとボルドータイプ、どちらが好み?」と聞くだけでなんとなく相手のワインの好みがわかるこの2大銘醸地。

復習になりますが、ブルゴーニュは赤はピノ・ノワール、白はシャルドネがメイン。どちらも原則として単一品種でワインを造ります。

それに比較して、ボルドーは赤ならばカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、カベルネ・フランなどをアッサンブラージュ(ブレンド)するのが一般的で、ブルゴーニュを比較すると色も濃く、渋み(タンニン)も強く、より力強いワインを生み出します。

合わせる料理も、繊細なブルゴーニュの赤ワインならば、白系のお肉の鶏や豚肉が合いますが、力強いボルドーワインには牛肉など赤みのお肉が合うでしょう。

ブルゴーニュワインのおすすめ2選

ティ・シャブリ/ルイ・ジャド  

(Petit Chablis/Louis Jadot)

グラン・クリュ、プルミエ・クリュやモノポールを含む多くの畑をもつドメーヌ。

エチケットにはお酒の神様「バッカス」が描かれており、ワインショップやレストランで見かけた方も多いのではないでしょうか。こちらのプティ・シャブリはフレッシュな柑橘系の香りと爽やかな味わいで、牡蠣にもぴったりの1本です。

ジュヴレ・シャンベルタン/ルー・デュモン

(Gevrey Chambertin/Lou Dumont)

実はこちらの生産者さん、日本人なんです! ブルゴーニュの神様と呼ばれる、アンリ・ジャイエ氏にも認められた仲田晃司さん。テレビNHK総合「プロフェッショナル 仕事の流儀」にも取り上げられた、ブルゴーニュで活躍する生産者。ラベルをよーく見ると「天地人」と書かれております。こちらのワインは「ブルゴーニュの王」とも呼ばれるジュヴレ・シャンベルタンらしく、力強さもありつつ、複雑さとエレガントさを兼ね備えた1本です。


他にもおすすめはたくさんありますが、ブルゴーニュはその畑、生産者、ヴィンテージによって全く異なる味わいのワインを生み出す魅力があります。是非ご自身の好きな畑や生産者を見つけてみてください。

■参考
一般社団法人日本ソムリエ協会 日本ソムリエ協会教本


記事内容は記事作成時点の情報となります。

ソムリエ清野 花歩(Seino Kaho)
ソムリエ清野 花歩(Seino Kaho)

フリーランスソムリエ。
株式会社リクルートのゼクシィで営業を経験後、もっと海外を見たいと想い7ヶ月世界一周の旅へ。各国でワインが日常的に飲まれているのを目の当たりにし、もっと日本でもワインが身近になって欲しいと思い、ワインに携わる仕事をしようと決意して帰国。その後、AIS認定イタリアソムリエ養成コースをイタリアにて受講。インポーター、ワインスクールに勤務後、現在はフリーでワインバー、ワインイベントなどを開催している。JSAソムリエ保有。