イタリアを代表する偉大な赤ワインで「ワインの王であり、王のワインである」と讃えられてきた「バローロ」。今回はそんなバローロの特徴や5大産地、そして伝統派とモダン派のバローロの違い、おすすめのペアリングやワイナリーなどをご紹介いたします。
POINT
バローロの特徴
そもそもバローロの定義とはなんでしょうか?
バローロは、イタリアのワイン法である、原産地名称保護制度で格付けされたワインの一つです。イタリアでは、1963年にこの法律が定められ、この法律の中では、ブドウの種類や生産地、醸造方法が厳しく定められており、バローロはその中でも最も厳しい最高ランクである「D.O.C.G(統制保証原産地呼称)」に格付けされております。法律的に言うと、バローロはイタリアの北部のピエモンテ州で地域で生産される、ネッビオーロ種のみ造られる赤ワイン、と定められています。
バローロのぶどう品種、ネッビオーロとは
バローロで使用が許されているぶどう品種は「ネッビオーロ(Nebbiolo)」のみです。
ネッビオーロはイタリアで最も高貴な黒ブドウの一つであり、栽培環境に非常に敏感であるため、イタリア以外ではなかなか成功例のない品種です。
ネッビオーロの語源は、収穫が遅い品種で、ブドウ畑に霧(Nebbia)がかかるところからこの名前がついたとされています。
味わいは、ピノ・ノワールのように淡い色調ながら、ピノ・ノワールと比べて力強い渋み(タンニン)と、しっかりとした酸味があるのが特徴です。
色は、若い頃は透明感のある、上品なガーネット色ですが、熟成が進むと少しずつオレンジのニュアンスが見られます。
香りは、バラ・スミレ・ラズベリー・野いちご・ナツメグ、そして熟成が進むとポルチーニ茸・黒胡椒・トリュフ・湿った土、甘草・タバコ・燻製の香りがましていきます。
また、「イタリアワインの王様」であるバローロと並び称される、「イタリアワインの女王」もしくは「バローロの弟分」と呼ばれる「バルバレスコ(barbaresco)」も同じネッビオーロから造られます。
なお、ネッビオーロは北ピエモンテでは「スパンナ(Spanna)」、ロンバルディア州のヴァルッテリーナキアヴェンナスカ(Chiavennasxa)」と呼ばれています。
バローロの生産地
バローロの産地はピエモンテ州のクーネオ県。
バローロが生産される村は全部で11村ありますが、その中でも5大産地と呼ばれている5つの村を一つずつ見ていきましょう。
La Morra ラ・モッラ
バローロの生産地の中でも北西に位置するこの村。トルトニアーノと呼ばれる青い泥灰土で、砂も混ざり、マグネシウム、マンガンが豊富なこの土壌では、香り高く、優美で比較的早飲みの女性的なバローロが造られます。
Barolo バローロ
優美なラ・モッラ村と力強いモンファルテ・ダルバ村に挟まれた南西に位置するこの村では、2つの村の特徴を兼ね備えた。調和のとれたた上品なバローロが生まれます。
Castiglione Falletto カスティリオーネ・ファレット
生産量は少ないですが、独自の土っぽさをもつ豊かなバローロを生み出す村。
バローロ村を見晴らす西側は力強いワインを生む畑が連なり、セッラルンガ村を見晴らす東側の傾斜には、「Roccheロッケ」など香り高くエレガントなワインを生み出す畑があります。
Serralunga d’Alba セッラルンガ・ダルバ
最も厳格で長期熟成のポテンシャルが高いバローロを生む村。スパイス、カカオの香りで、ミネラル感が溢れる凝縮感のあるバローロを生み出します。
Monforte d’Alba モンフォルテ・ダルバ
パワフルで力強いバローロを生む村。プッシア地区ではスミレの香りを持つ優美なワインを生み、村の北東の畑では濃い果実味をもつフルボディのワインを生み出します。
バローロの醸造規定
イタリアのD.O.C.G.では、醸造方法も義務付けられています。
バローロは、アルコール度数は13%以上で、収穫年の翌年の1月1日より3年間の熟成期間が必要です。また、3年間のうち、2年間は木樽での熟成が必要で、木樽で酸素に触れながら熟成することにより、バローロ特有のガーネットに少しオレンジがかった色合いとなります。
また、熟成期間が5年以上のものはRiservaと表記することができます。
バローロの選び方と楽しみ方
伝統派 vs モダン派、バローロボーイズ
バローロは力強いタンニンと酸味をもつため、長期熟成に向き、10〜20年置いたものが飲み頃と言われておりました。
しかし、1970年代、ワイン市場ではよりフルーティで、早く飲めるワインが流行し始めました。
そこで出てきたのがエリオ・アルターレ、ドメニコ・クレリコ、パオロ・スカヴィーノなどの「バローロボーイズ」と呼ばれる当時の若者たちのモダン派の生産者たちです。
“伝統的”なバローロは大きな樽でゆっくりと時間をかけて長期間熟成をさせ、飲み頃までに10年ほど待つのに対し、モダン派は間引きをし、そして小さな樽を利用し、より短期間でまろやかで優しい、早く飲め、チョコレートやバルサミコなどの香りのするワインを生産しました。
現代では、伝統とモダンのいいところを取り入れてより質の高いワイン造りを目指している生産者が主ですが、バローロを選ぶ際には、ぜひ、その生産者がどういった考えでバローロを造っているのか、という点にも注目してみてください。
バローロに合う料理とは?
長く複雑な香りと余韻をもつバローロには是非、同じ地方の名物、そしてトリュフの中でも最高級とされる「アルバの白トリュフ」との贅沢なマリアージュを体験してみてください。
ピエモンテ料理の定番である、卵黄をたっぷり使った「タヤリン(Tajarin)」パスタにバターを絡めて、白トリュフのスライスをかけてもいいですし、またシンプルに目玉焼きに薄く削った白トリュフをかけていただくと、白トリュフの深い味わいが感じられます。そこにバローロを合わせると、長く複雑な香りと余韻に、得も言われぬ感動を味わえますよ。
他にも、バローロの複雑な香りと繊細な味わいに合わせて、アンチョビを使ったバーニャ・カウダや、また渋みがあるため赤身肉のソース煮やジビエなどにも合わせてみてください。
おすすめのワイナリー
1,バローロ/チェレット
(BAROLO/CERETTO)
バローロの最高の造り手と言われるチェレット社。1939年、ピエモンテ地方アルバ地区でリッカルド・チェレット氏が創業し、1960年代に息子のブルーノ氏とマルチェロ氏が引き継ぎました。「最上の畑で、最上の酒をつくる」というポリシーの元、高品質なバローロ、そしてバルバレスコを生み出しております。
熟成には大樽と小樽を使用し、ソフトで優しいタンニンで、早くから美味しく楽しむことができます。
2, バローロ プラポー/スキアヴェンツァ
(BAROLO PRAPO/SCHIAVENZA)
伝統的な味わいや製法を守り続ける、ピエモンテのセッラルンガ・ダルバに畑と醸造所を所有するスキアヴェンツァ。
発酵には代々受け継がれてきたセメント・タンクを使い、その後大樽にて熟成を行っており、ボリューム感と骨格がしっかりとした味わいのワインです。
一言で「バローロ」と言っても、生産者やヴィンテージによって全く異なる味わいが楽しめるバローロ。もちろん、今買ってすぐ飲んでもいいのですが、先物買いで、10年くらいご自身のセラーで寝かせてみても楽しいかもしれません。
■参考
・一般社団法人日本ソムリエ協会 日本ソムリエ協会教本
・AIS NEWS
記事内容は記事作成時点の情報となります。
フリーランスソムリエ。
株式会社リクルートのゼクシィで営業を経験後、もっと海外を見たいと想い7ヶ月世界一周の旅へ。各国でワインが日常的に飲まれているのを目の当たりにし、もっと日本でもワインが身近になって欲しいと思い、ワインに携わる仕事をしようと決意して帰国。その後、AIS認定イタリアソムリエ養成コースをイタリアにて受講。インポーター、ワインスクールに勤務後、現在はフリーでワインバー、ワインイベントなどを開催している。JSAソムリエ保有。