今日は、なにノムノ?
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イタリアワインの女王「バルバレスコ」とは?「バローロ」との違いも解説!

バルバレスコのぶどう畑

世界最大のワイン生産地、イタリア。

その中でも最高級の品質を誇り、「イタリアワインの女王」とも呼ばれる「バルバレスコ」についてご紹介します。さらに、バルバレスコと互いに並び称される、「王のワインにしてワインの王」である「バローロ」との共通点や違いについてもわかりやすく説明します。

バルバレスコとは?

Photo by Megan Cole
Photo by Megan Cole on Flickr

バルバレスコとは、イタリアのワインの格付の中で最高ランクの「D.O.C.G(Denominazione di Origine Controllata e Garantita/統制保証原産地呼称)」として認められたワインのひとつです。

イタリア北西部に位置するピエモンテ州南部、クーネオ県のバルバレスコ地区で、黒ぶどうの「ネッビオーロ」種から生み出されるワインです。

優美でエレガントな特徴をもつワインとして名声を得ており、同じくピエモンテ州クーネオ県のほど近いエリアで、やはりネッビオーロ種からつくられる、力強く重厚な味わいの「バローロ」と比較して語られることが多いワインです。

バルバレスコのぶどう品種

ネッビオーロ品種

バルバレスコは「Nebbiolo(ネッビオーロ)」という黒ぶどうからつくられます。

ネッビオーロは別名Spanna(スパンナ)やChiavennasca(キアヴェンナスカ)とも呼ばれ、イタリア北部のピエモンテ州を中心に栽培されています。

「Nebbiolo(ネッビオーロ)」という名前の語源は、「霧」を意味するイタリア語の「Nebbia(ネッビア)」という単語に由来します。これは、ネッビオーロが非常に晩熟で、熟する頃に栽培地の丘陵地帯に霧が立ち込めるためです。

栽培する場所の影響を受けやすい品種で、栽培が難しいため、イタリア以外の国ではほぼ栽培されていません。

洗練された味わいで長期熟成に適し、バローロ・バルバレスコを代表とする偉大なワインを生み出す品種です。

ネッビオーロからつくったワインの特徴

・外観

アントシアニンと呼ばれる色素が少ないため、明るく透明感のある色調が基本。多くのワインは樽熟成がされているため、オレンジがかった色調のものが多いです。

明るく軽やかな印象を与える見た目ですが、飲んでみると後述のように強く収斂性(歯ぐきにくっつく感じ)のあるタンニンが感じられます。これは他の品種には見られない特徴なので、ブラインドテイスティングなどでも比較的、品種がわかりやすいぶどうです。

・香り

チェリー、プラム、熟したプルーン/スミレ、バラの花/甘草、鉄、タール、タバコなど。スパイシーな印象が強い品種です。熟成するにつれて、ドライフルーツやドライフラワーの香りが強くなります。

新樽熟成された場合はヴァニラの香りが強くなり、長期熟成されるとトリュフの香りが強く感じられるようになるなど、より複雑な香りを楽しむことができます。

・味わい

酸味が強く、収斂性の強いタンニンを持ちます。しかし決してごつごつした無骨な感じはなく、凝縮した果実味に緻密な酸とタンニンが加わった上品で複雑な味わいです。樽熟成を行うと、タンニンは柔らかくなりますが、収斂性は持続します。

長い余韻をもつのも特徴です。

バルバレスコとバローロの違い

バローロ
バローロ

唯一無二の個性をもつネッビオーロですが、ピノ・ノワールと似て、栽培される土地の影響を受けやすい品種でもあります。

バルバレスコとバローロのぶどう栽培区画は、タナロ川をはさんで隣り合う非常に近いエリア。合計面積は2haに満たない狭い産地です。しかし、地形や土壌、熟成期間の差により、バルバレスコとバローロの違いを決定づけるタンニンの差がうまれ、それぞれの個性を形作っています。

それでは、詳しく紐解いていきましょう。

地形の違い

バルバレスコの産地は、バローロに比べて標高が50メートルほど低く、かつタナロ川・リグーリア海により近い場所に位置しています。そのため、比較的温暖で、ぶどうはバローロよりも早く熟し、収穫時期も早くなります(※一般に、成熟に時間がかかるほど、ぶどうは色・渋み〈タンニン〉・香りの成分を蓄積するようになります)。

土壌の違い

バルバレスコおよびバローロの土壌は粘土質が中心で、石灰・泥炭土が混ざりあっています。また、バルバレスコの産地は、バローロに比べて土壌が肥沃です。タンニンは土地が痩せている方が強くなる傾向があるため、前述の地形の違いによる収穫時期の差とも相まって、バローロの方がより緻密で力強いタンニンをもつようになります。

熟成期間の違い

熟成期間

さらに、最低熟成期間の規定にも違いがあります。

バルバレスコは、ぶどう収穫年の11月1日から最低26カ月の熟成期間(うち9カ月は木樽熟成)、総体アルコール度12.5%以上、より長い熟成期間を求められる「Riserva(レゼルバ)」タイプは最低50カ月の熟成期間(うち9カ月は木樽熟成)が義務付けられています。

バローロは、収穫年の翌年1月1日から最低3年間の熟成期間(うち木樽熟成2年間)、アルコール度数13%以上、レゼルバは最低5年間の熟成期間が義務付けられています。

バローロの方がより長い最低熟成期間が義務付けられていますね。これは、バローロの方がよりタンニンが強くなる傾向があるため、市場に出す前により長い熟成期間を必要とするためだと考えられます。

味わいの違い

バルバレスコに比べ、バローロはタンニンを豊富に含み、重厚で力強い味わいや長期熟成に耐えるポテンシャルが高い評価を得てきました。

それに対してバルバレスコは長らく「バローロの弟分」という位置づけにコンプレックスを抱えていたのですが、現在では、バローロに比べて軽やかなタンニンをもつからこそ実現できる、優美で繊細、エレガントな味わいが個性として高く評価されています。

バルバレスコの歴史

バルバレスコの歴史は、19世紀後半、イタリア統一運動の立役者のひとりとして同国でよく知られている、ピエモンテのカミッロ・カブール伯爵(1810~1861)が、ワインの品質向上と、フランスに倣った単一品種によるワインづくりを導入したころにさかのぼります。ただし、そのころはバルバレスコのワインはバローロワインとして販売されていました。

1894年、バルバレスコワインの本格的な夜明けが訪れます。「バルバレスコの父」と呼ばれるDomizio Cavazza(ドミツィオ カヴァッツァ氏)がバルバレスコの生産者組合を創設し、良質なぶどうの仕入れを可能にする仕組みを導入。「バルバレスコワイン」とラベルに書かれたワインが販売されるようになりました。しかし、その後、ワイン用ぶどう樹の害虫・フィロキセラの影響で、この地域でのワイン生産は下火になってしまいます。

1960年代に入り、新たな風を起こしたのがGAJA(ガヤ)という生産者です。現当主でもあるアンジェロ・ガヤ氏は、単一畑のワインづくりや、バリック(小樽)の使用、国際品種の栽培など革新的なスタイルの導入とバルバレスコワインの品質向上に努め、バルバレスコの名声を世界レベルに高めたのでした。

ちなみに、バリックを使用したモダン・スタイルとは、伝統的な古樽熟成に比べて短期間でタンニンを柔らかくすることができるのが特徴です。

バルバレスコの三大産地

バルバレスコの三大産地と呼ばれるのは、以下の3つの村です。

●Barbaresco(バルバレスコ村

バルバレスコワインの由来となった村で、青色泥灰土・石灰質粘土・砂地の入り混じった土壌により、最も複雑で骨格のしっかりしたバルバレスコを生み出します。品質の安定性も高い産地です。

代表的な畑はRabajà(ラバイア)、Asili(アジーリ)など。

●Neive(ネイヴェ村)

バルバレスコ産地の東側に位置し、最もバラエティ豊かな産地で、フルボディタイプから優雅で飲みやすいものまで幅広く生産しています。柑橘類やスパイスのトーンを感じる、ミネラル分豊かなバルバレスコを生み出します。

代表的な畑はSanto Stefano(サントステファノ)、Gallina(ガッリーナ)など。

Treiso(トレイーゾ村

バルバレスコ産地の南側に位置し、標高が最も高いエリアで昼夜の寒暖差が大きいため、エレガントなワインに仕上がります。3つの中では最も知名度は低いのですが、最近注目され始めている産地です。

代表的な畑にPajorè(パイオレ)、 Nervo(ネルヴォ)など。

おすすめのバルバレスコ3選

1. Barbaresco Pajore Sottimano(バルバレスコ パヨレ ソッティマーノ)

テロワールの個性を重視するソッティマーノ社がトレイーゾ村のクリュ「パヨレ」でつくるバルバレスコ。

リッチな果実味がありつつ、酸味・ミネラルとのバランスもよく、バルバレスコらしいスパイシー感や緻密なタンニンを楽しめる1本です。

2. Barbaresco Riserva Asili Produttori del Barbaresco(バルバレスコ リゼルヴァ アジリ プロデュットーリ デル バルバレスコ)

「プロドゥットーリ デル バルバレスコ」は、「ワイン最高峰の生産者協同組合」と呼ばれ、組合員の栽培農家が厳しい品質基準のもとぶどうの育成からワインづくりまでを手掛けています。

バルバレスコ村の代表的な畑であるアジリでつくられる、石灰質の土壌由来の複雑味にすぐれたワインです。非常にエレガントながら骨格のしっかりした1本になっています。

3. Gaja Barbaresco(ガヤ バルバレスコ)

イタリアワインの帝王」ともいわれるGaja。長年バルバレスコの生産者たちをリードしてきたワイナリーのフラッグシップワインです。

14の最優良区画のブドウをブレンドし、フルーツやハーブ、スパイスなど様々な香りが複雑に感じられると同時に、飲んでみると酸味・タンニン・長い余韻が続く緻密なつくりのワインです。

以上、イタリアピエモンテ州を代表する産地のひとつであるバルバレスコについてご紹介しました。

バローロとバルバレスコは、同じ品種・近しいエリアながらそれぞれ異なる個性を持つので、ぜひ実際に飲み比べてみてくださいね。両エリアでワインづくりを行っている生産者も多いので、同じワイナリーのバローロ&バルバレスコを飲み比べてみるのも面白いですよ!

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ソムリエ柁原めぐみ(Megumi Kajihara)
ソムリエ柁原めぐみ(Megumi Kajihara)

飲料のブランディングや広報を経験後、J.S.A認定ソムリエ資格を取得。現在は都内で酒類・飲料メーカーに勤務。
知識ゼロから一発合格を果たした経験と歴史・文化の知識を活かして、ワインをわかりやすく解説します。