今日は、なにノムノ?
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ジュヴレ・シャンベルタンとは? ブルゴーニュの王と呼ばれる赤ワインの魅力に迫る

ナポレオンの愛したワイン

ジュヴレ・シャンベルタンとは

ジュヴレ・シャンベルタンとは、あのナポレオンが愛したワインとして有名で、「王のワイン」や「フランス・ブルゴーニュの王」と呼ばれています。ジュヴレ・シャンベルタンは長期熟成にも耐えられる、男性的な力強さとエレガントさを持つスタイルのワインで、まさに【王様】の名に相応しいワインです。

今回はジュヴレ・シャンベルタンについて、私自身の2019年夏の訪問経験を交えながら、ご紹介していきたいと思います。

パリ・リヨンTGV

パリのリヨン駅からディジョン駅まで高速鉄道のTGVで1時間40分。ディジョンからは車で【グラン・クリュ街道】と呼ばれる、県道974号線を南に走ること20分ほどでジュヴレ・シャンベルタン村に到着します。そこは一面のブドウ畑で、ブルゴーニュの一つの地域であるコート・ド・ニュイの中で最大の面積を誇ります。特級畑(グラン・クリュ)は最多の9つで、あのロマネ・コンティで有名なヴォーヌ・ロマネ村より多いのです(ヴォーヌ・ロマネ村の特級畑は8つ、うち2つはフラジェ・エシェゾー村)。

私が昔、ソムリエの試験対策でワインスクールに通っていたときの話ですが、スクールの先生に「特級畑(グラン・クリュ)の9つの場所はもちろん、1級畑(プルミエ・クリュ)も覚えましょう!」と言われました。絶対に覚えられない…と半泣きになっていたのは、今では良い思い出です(実際に2018年のソムリエ1次試験でリュショット・シャンベルタンの場所を問う問題が出題されました)。これからソムリエやワインエキスパートの資格を取りたいな~、なんて考えてる方! ジュヴレ・シャンベルタンはソムリエ、ワインエキスパート試験において必須問題です。

ジュヴレ・シャンベルタン村の畑

(ジュヴレ・シャンベルタン村の畑)

ジュヴレ・シャンベルタンの特徴

ピノ・ノワール

ジュヴレ・シャンベルタンに白ワインはありません。100%が赤ワイン、それも ピノ・ノワールの単一品種から造られるワインなのです。

北緯約47度に位置し、夏は暑く、冬は寒い半大陸性気候です。ジュヴレ・シャンベルタンはコート・ド・ニュイの中でも、北に位置するため、その冷涼な気候と水はけのよい土壌が合わさり、ピノ・ノワールの成長を早めてくれる特性があります。ブルゴーニュ一帯は、ジュラ紀(約2億年~1億5千年前)には浅く、温かい海に覆われていたため、土壌には貝の化石も多く含まれます。

標高260~300メートルの斜面に並ぶ特級畑(グラン・クリュ)は日照条件が抜群に良く、長く日光を浴びることで、色合いが濃く、果皮の厚いブドウになります。その結果、力強く、芳醇な「王のワイン」を生み出すことができるのです。

ジュヴレ・シャンベルタンはワインの色が濃く、オーク樽の風味が強いので、合わせる料理はやはり肉料理が間違いないでしょう! 特にジビエ料理や、コック・オー・ヴァンと呼ばれる雄鶏の赤ワイン煮、ウォッシュチーズの「エポワス」がおススメです。エポワスは、マール・ド・ブルゴーニュというブルゴーニュ地方の地酒でチーズの表面を洗いながら熟成させるのが特徴のチーズです。このエポワスは、スーパーで見かけることは少ないので、百貨店や専門店のチーズ売り場で探してみてくださいね!

私がディジョンに滞在したときは、RESTAURANT DE LA PORTE GUILLAUME(ラ・ポルト・ギヨーム)に行きました。こちらでは伝統的なブルゴーニュの郷土料理が楽しめます。

レストラン

(RESTAURANT DE LA PORTE GUILLAUME)

コック・オー・ヴァン

(コック・オー・ヴァン〈雄鶏の赤ワイン煮〉)

ジャンボン・ペルシエ

(ジャンボン・ペルシエ〈ハムとパセリが入ったゼリー状のテリーヌ〉) 

ジャンボン・ペルシエには、若いジュヴレ・シャンベルタンや、ガメイがピッタリ!!!

ジュヴレ・シャンベルタンの歴史 

シャンベルタンの色

ここはブルゴーニュ地方でもっとも古くからブドウ畑があった土地で、2009年には、紀元1世紀までさかのぼるブドウ畑の遺跡が発掘されています。もともとの名前はジュヴレ村でしたが、ベース修道院が管理する【クロ・ド・ベース】から造るワインがとても美味しいと有名になり、この名声を聞いた「ベルタン」という農夫がそのとなりの畑を買い取り、素晴らしいワインを造ることに成功したのです。その畑を ベルタンの畑=シャン・ド・ベルタン(シャンはフランス語で畑の意味)と呼ぶようになったのが【シャンベルタン】の始まりです。その後、村で一番有名な畑の名を村名のあとにつけ加えるという変更を1847年におこない「ジュヴレ・シャンベルタン」が誕生しました。

そして、ナポレオンが愛したワインとしても有名で、ナポレオンは遠征に行くときにもジュヴレ・シャンベルタンを必ず持って行き、それ以外のワインは口にしなかったといわれています。

フィサン

また、ジュヴレ・シャンベルタンではありませんが、唯一「ナポレオン」の名を冠することを許された畑が、ジュヴレ・シャンベルタンの北に位置する【フィサン】にあります。フィサンには、特級畑(グラン・クリュ)はありませんが、1級畑(プルミエ・クリュ)に、「クロ・ナポレオン」があります。ここは、ナポレオン軍の指揮官だったクロード・ノワゾが軍役を退いてからフィサンにやってきて、余生をナポレオンとの思い出を称えることで過ごした地であり、ナポレオンが深く関係している畑なのです。

複雑なジュヴレ・シャンベルタンの格付け

ブルゴーニュには、ボルドーのように地区ごとの格付けはありません。

・特級畑(グラン・クリュ)★最も格の高い畑
・1級畑(プルミエ・クリュ)
・畑がある村名(コミュナル)
・畑がある地方名(レジョナル)

この4段階の格付けがあるだけです。

注意が必要なのが、村名(コミュナル)ワインは【ジュヴレ・シャンベルタン】で、その上に1級畑(プルミエ・クリュ)〈例:ジュヴレ・シャンベルタン・クロ・サン・ジャック〉、そして特級畑(グラン・クリュ)〈例:シャンベルタン〉などがあることです。

生産者やワインのエチケットを覚えて購入するのが確実な方法ですが、なかなか難しいと思いますので
●Grand Cru(グラン・クリュ)
●Premier Cru または 1er Cru(プルミエ・クリュ)

この文字を目印にチェックしてみてください。

また、村名(コミュナル)ワインだから味わいが良くないわけではありません。村名(コミュナル)ワインでも、素晴らしい造り手や気候条件が合わされば、ジュヴレ・シャンベルタンらしい味わいを感じることができます。

【ジュヴレ・シャンベルタンの9つの特級畑 グラン・クリュ】

●シャンベルタン
●シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ
● シャルム・シャンベルタン
●マゾワイエール・シャンベルタン
● シャぺル・シャンベルタン
●グリオット・シャンベルタン
●ラトリシエール・シャンベルタン
●マジ・シャンベルタン
●リュショット・シャンベルタン

 特級畑(グラン・クリュ)のなかでは、「シャンベルタン」と「シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ」の2つが、ジュヴレ・シャンベルタン村の代表格で、それぞれ独立したアペラシオンですが、シャンベルタン・クロ・ド・ベースはクロ・ド・ベーズやシャンベルタンと名乗ることもできます。シャンベルタンとシャンベルタン・クロ・ド・ベースは隣同士の畑ですが、シャンベルタンの畑からは力強いパワフルなワインが生まれるのに対して、シャンベルタン・クロ・ド・ベーズの畑からは骨格のしっかりした優雅さを兼ね備えたワインが生まれます。

ブルゴーニュのワインの面白いところは、隣同士の畑でも、土壌や傾斜によって日当たりも異なり、テロワールの違いをワインから感じられることですね!

【代表的な1級畑 プルミエ・クリュ】

●クロ・サンジャック
●クロ・デ・ヴァロワイユ
●ラ・ペリエール
●オー・コンボット
●ベレール
●クロ・デュ・シャピトル
●レ・カズティエ
●シャンポー

26ある1級畑(プルミエ・クリュ)の中でも、ジュヴレ・シャンベルタン村の上部にある標高の高い斜面で、日照に恵まれた畑ではグラン・クリュに近い味わいのワインが産出されます。

最も有名なクロ・サン・ジャックの畑は、下記の5つの所有者に分けられています。

1. アルマン・ルソー 
2. シルヴィー・エスモナン 
3. ルイ・ジャド 
4. ブリュノ・クレール 
5. フーリエ 

ワインの味わいには、ブドウを収穫した年の影響が色濃く出るため、ワインを選ぶ1つとして、その年の気候、産地、ワインの種類の評価を表しているヴィンテージチャートを見てみるといいでしょう。ブルゴーニュの赤ワインの秀逸な年は、【1990年、1996年、2005年、2009年、2010年、2015年】と言われています。

2019年の夏は、フランスに2度の熱波が押し寄せ、最高気温は45℃を超えた地域もありますので、今後は温暖化対策についても考えなければなりませんね。

 ジュヴレ・シャンベルタンのおすすめのドメーヌ&ワインショップ

 ドメーヌ・ルイ・レミー

1821年に創業されたドメーヌ・ルイ・レミーは、シャルタン・レミー女史で6代目。女性らしい感性でブドウが何を望んでいるかがわかるそうで、シャルタン氏は自ら栽培、醸造、営業の全てをおこなっています。「ブルゴーニュワインは熟成したものがおいしい」という考えから、毎年の生産本数の約3分の1は、シャルタン氏が飲み頃だと判断してから販売を開始します。熟成の魅力を存分に味わうことができるワインです。

ドメーヌ・フーリエ

71年生まれのジャン・マリー・フーリエ氏は23歳の若さで父親の跡を継ぐことになりました。ワイン造りは「ブルゴーニュでは、テロワールを尊重すれば何も新たに付け加えることはない」という考えの持ち主。今では、入手困難な人気生産者です。フーリエは熟成したワインはもちろん、若いうちからも大地の自然な味わいのフーリエらしい魅力がひしひしと感じられます。

ドメーヌ・フーリエ

ワインショップ エノテカ

グリオット・シャンベルタン

「シャンベルタン」と名のつくワインは、たくさんあって何を買ってみたらいいのかわからない…まずはテイスティングしてから購入したい! そんな方におススメなのがワインショップ【エノテカ】にある、ワインバーです。店舗によって異なりますが、CORAVIN〈コラヴァン〉(細い針をコルクに差し込むことにより、コルクを抜くことなくボトルの中のワインを注ぐことのできるアイテム)が使用されているため、高級ワインをグラスで楽しむことができます。

私がテイスティングしたワインは、グリオット・シャンベルタン グラン・クリュ 2016年/生産者 ルシアン・ル・モワンヌ/50ml 4,950円(税込) 2019年11月時点

特級畑のグリオット・シャンベルタンは、ジュヴレ・シャンベルタンの特級畑(グラン・クリュ)の中では、一番小さい畑です。約2.6haからは平均1000ケースのワインしか出来ません。生産量が少ないためとても希少なワインです。「グリオット」とはフランス語でさくらんぼという意味で、その名の通りフレッシュなさくらんぼや甘酸っぱい小梅のチャーミングな果実味。タンニンはやや強めなので飲み頃はまだ先でしたが、ステーキやお肉に合わせるなら今からでも楽しめます!

エノテカのスタッフの方に、どうして2016年ヴィンテージなのか、もう少し熟成させたものはないのか? と訊ねたところ、コラヴァンは直接コルクに細い針を刺す仕組みなので、あまりにも古いワインだとコルクのかすがワインに入ってしまう恐れがあるため、古くても10年ほど前のワインしか提供できないそうです。なるほど~。 

テイスティングをしてまだヴィンテージが若いと感じた場合は、数年後、数十年後に開ける用のボトルとして購入し、自宅のワインセラーに寝かせ、熟成による味わいの変化を楽しんでみてもいいですね。

La cave de Vénus

ジュヴレ・シャンベルタン村にあるワインショップです。コート・ドールのワインがずらりと並んでいて日本では見たことのないワインが多数ありました。施設がとても綺麗で気さくなマダムがたくさん試飲させてくれます。

ここは【欧州ヤマト運輸 ワインダイレクト提携店】で、その店舗で購入したワインをヤマト運輸で日本に発送することができます。

カーヴドヴィーナス
日本語の伝票

店舗には、日本語の伝票があるので、住所、電話番号を記入するだけで手続き完了です。なんて簡単なんでしょう!

ワインを購入したのが8月で、少し涼しくなってからの方がいいでしょうとマダムが提案してくれたため、日本に届いたのは1カ月以上経ってからでした。ダンボールは傷一つない状態で、ワインも1本1本丁寧に包装してあったので、中のワインは全て無事でした。

段ボール箱の中

宅急便のクロネコとエッフェル塔のコラボのダンボールが可愛いですね。

ワイン宅急便の段ボール箱

いかがでしたでしょうか。ナポレオンがこよなく愛した、ピノ・ノワールから造られる、男性的で力強い味わいの「王のワイン」。ぜひご自身でコック・オー・ヴァンに合わせて舌鼓を打ちながら、ジュヴレ・シャンベルタンをゆっくりと堪能してみてください。Au revoir!!

■参考図書
2019年日本ソムリエ協会教本
白水社 ブルゴーニュワイン大全

記事内容は記事作成時点の情報となります。

林 かおり(Hayashi Kaori)
ソムリエ林 かおり(Hayashi Kaori)

J.S.A.ソムリエ、調理師、食生活アドバイザー2.3級を取得。旅行コンサルタント会社で旅館ホテルなどへの飲料提案を行う。現在は都内フレンチでソムリエとして活躍中。