今日は、なにノムノ?
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アルザスワインの特徴と、ソムリエおすすめワイン3選

アルザスのワイン畑

フランス北東部に位置するアルザス地方は、ドイツの影響を強く受け、独特のワイン文化を生み出してきた産地です。本記事では、アルザス地方とアルザスワインの特徴や歴史、おすすめのペアリングや銘柄などについてご紹介します。

アルザスワインってどんなワイン?

アルザス地方の気候や風土

アルザス地方はフランス北東部に位置し、ライン川を挟んでドイツと国境を接する地域です。

アルザス地方のぶどう畑はヴォージュ山脈の東側の斜面に広がっており、長さは約170km・幅は約1.5~3kmの細長い帯状に伸びた産地です。

ヴォージュ山脈が西から吹く冷たく湿った偏西風を遮るため、降雨量が少なく緯度の割に温暖な気候が特徴です。フェーン現象により夏は暑くて雨も少ないため、ぶどうが良く成熟します。

地殻変動の過程でヴォージュ山脈の一部が陥没したことにより、石灰岩、花崗岩、砂、砂岩など異なる種類の地層が地表にあらわれています。距離の近いぶどう畑でも土質が異なるくらい、非常に多様な土壌がこの地方の特徴です。

アルザス地方は、北は「Bas-Rhin(バ・ラン県)」、南は「Haut-Rhin(オー・ラン)県」に分かれています。

北部はヴォージュ山脈の標高が比較的低いエリアにあたるため、偏西風の影響を受けやすいのに対し、南部は同山脈の標高が高いエリアで、乾燥し温暖な気候のもと生み出される品質の高いワインで知られています。

アルザス地方の歴史

アルザス地方は、ぶどうをはじめとする農産物や、鉄鉱石・石炭といった資源を産出する豊かな土地です。そのため、領有権がフランスとドイツとの間で長らく争われてきました。食文化・言語にもドイツ的な要素が色濃いのは、そのような歴史的な背景があるためです。

例えば食文化では、シュークルート(=ザワークラウト)やタルト・フランベなどドイツ的な料理が有名です。

タルト・フランベ
タルト・フランベ

ワインについても、細長く背が高いドイツ風のボトルや、ボウル部分が小さくステムが長い「Roemer Glass(レーマーグラス)」が使われるなど、フランスの他の街とは異なるワイン文化がうかがえます。

街並みもドイツ風で、木組み漆喰固めの家々はカラフルでとてもかわいらしいですね。

アルザスの街並み

アルザスワインのブドウ品種

アルザスのワイン

アルザスワインの原料となる主なぶどうを、生産量に占める割合とともにご紹介します。

・白ぶどう品種 

リースリング(22%)
ドイツ原産の品種。酸が豊かで、長期熟成に耐えうるポテンシャルをもちます。

ピノ・グリ(15%)
ピノ・ノワールの突然変異種でブルゴーニュ原産。甘いイエロー系のフルーツの香りと果実味の豊かな甘さが特徴。

ゲヴェルツトラミネール(19%)
主にアルザスで栽培される、ライチに例えられる華やかでスパイシーな香りの品種。豊かな果実味と甘さ、オイリーさが特徴。酸は控えめ。「ゲヴュルツ」はドイツ語でスパイスを意味します。

ミュスカ(2.3%)
地中海沿岸原産で、マスカットやメロンの香りが特徴。様々なサブタイプに細分化しています。

そのほか、シルヴァネール(8%)、ピノ・ブラン(21%)など。

・黒ぶどう品種

ピノ・ノワール(10%)

アルザスワインの特徴

それでは、アルザスワインの特徴とはどんなものでしょうか。

・白ワインの生産地

アルザスワインといえば白! ワイン生産量の実に94%が白ワインです(赤ワインは1%、ロゼは5%)。

・高品質ワインの生産地

ワイン生産量のほぼ100%がA.O.C.ワインであり、高品質ワインの生産がさかんな地域といえます。

・主たる3つのA.O.C.

アルザスには主に3つのA.O.C.が存在します。

1. Alsace(アルザス)/Vind d’Alsace(ヴァン・ダルザス)

アルザス地方のほぼ全域をカバーするA.O.C.です。1962年認定。A.O.C.ワインの74%を占めています。赤・白・ロゼのいずれも認められており、単一品種のワインが主体で、ラベルに品種名が表記されます。

複数品種を混醸(アッサンブラージュ)したワインは、「Edelzwicker(エデルツヴィッケール) 」もしくは「Gentil(ジャンティ)」と表記されます。Gentilの方が格が高く、「Noble of Alsace(アルザスの高貴品種)」と言われるリースリング、ミュスカ、ピノ・グリ、ゲヴェルツトラミネールを50%以上使用していることがルールです。

また、特徴のある13エリアのワインは特別に地理的表示を付記することができます。品種制限があり、例えば、Bergheime(ベルガイム)という地理的表示をラベルに載せるためには、その土地で作られたゲヴェルツトラミネール品種のワインであることが必要です。

2. Cremant d’Alsace(クレマン・ダルザス)

アルザスでつくられる、瓶内二次醗酵(=シャンパーニュと同じ製法)のスパークリングワインです。1976年認定。A.O.Cワインの22%を占めています。

白(品種はリースリング、ピノ・ブラン、ピノ・ノワールなど6種類)とロゼ(ピノ・ノワールのみ)が認められています。

実は、クレマンとしてフランスの家庭での消費量ナンバーワンを誇っています。

3.  Alsace Grand Cru(アルザス グラン・クリュ

生産量はA.O.Cワインのうちわずか4%。1975年から認定されている、最高級アルザスワインです。現在51のリュー・ディ(区画)がグラン・クリュワインとして認められています。ワインのタイプは白のみで、
●ぶどうは手摘みが義務付けられる
●原則として高貴品種(リースリング、ゲヴェルツトラミネール、ピノ・グリ、ミュスカ)のうち単一品種を使用
といったルールがあります。

※品種に関しては例外的な3つのリュー・ディがあります。

Zotzenberg(ゾッツェンベルグ)ではミュスカの代わりにシルヴァネールという品種が認められており、Altenberg de Bergheim(アルテンベルグ・ド・べルグハイム)とKaefferkopf(ケフェルコプフ)ではミュスカの単一品種醸造は認められていない一方、複数品種混醸が認められています。

アルザスのワインは甘い?

アルザスのワインは甘い…というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。それは、遅摘みぶどうでつくる「Vendanges Tardives(ヴァンダンジュ・タルディヴ)」や貴腐ワインの「Selection de Grains Noble(セレクシオン・ド・グラン・ノーブル)」などの甘口ワインが有名であるからでしょう。

これらは、
・高貴4品種のみでつくられる
・すべて手摘みで収穫
・最低でも収穫翌年の6月1日まで熟成
・収穫時に一定の果汁糖度を満たしていること
(=補糖は認められず、ぶどう果実自体が十分甘みを蓄えていることが必要)
といった、厳格なルールを満たした甘口ワインに認められています。

なお、伝統的にリースリングとピノ・グリは辛口タイプが多く、ゲヴェルツトラミネールとミュスカは中甘口なタイプが多いのですが、辛口に仕立てる生産者も増えていますので、ぜひワインを選ぶ際にはどちらのタイプかチェックしてみてください。

アルザスワインと料理との相性は?

品種も味わいのタイプも幅広いアルザスワイン。ここではいくつかおすすめの組み合わせをご紹介したいと思います。

1. リースリング×白身魚&カキ

オイスター

アルザスの土壌由来のミネラル分を豊富に含むのが、この地方のリースリングの特徴。フレッシュな酸味とミネラリーな香りは魚介類、特に白身魚やカキとぴったりです。

2. ゲヴェルツトラミネール×フォアグラ

アルザスワインに合うフォワグラ

はちみつを思わせるねっとりした甘さのある甘口ゲヴェルツトラミネールと、フォアグラのソテーの組み合わせは、非常に濃厚で余韻を長く楽しめます。

3. クレマン・ダルザス×白カビチーズ

アルザスワインに合うチーズ

フルーティな香りと瓶内二次発酵による繊細な泡をもつクレマン・ダルザス。ブリーやカマンベールといった、白カビタイプのチーズと合わせると、軽快な泡がチーズの濃厚な食感を口の中ですっきりとさせてくれ、絶妙なバランスを楽しめます。

アルザスワインのおすすめ3選

1. Camille Braun Riesling Grand Cru Pfingstberg

(カミーユブラウン リースリング グラン・クリュ プフィンスベルグ)

275~370メートルの標高に広がるグラン・クリュの畑のリースリングからつくられるワインです。柑橘系の爽やかな香りにフレッシュな酸味、そしてアルザスらしいミネラリーな香りと味わいが広がります。

カミーユブラウン

2. Maison Zimmer Alsaze Grand Cru ‘Sporen’ Gewurztraminer

(メゾンジメール アルザス グラン・クリュ スポーレン ゲヴェルツトラミネール)

豊かな甘く熟したライチ香がどっしりと感じられ、ねっとりした粘性のあるテクスチャー、貴腐ワインのように持続する甘い余韻。日本ではあまり一般に流通していませんが、レストランなどでお見掛けの際にはぜひ試していただきたい一本です。

スポーレン

3. Domaine Meyer-Fonne Cremant D’alsace Brut Extra

(ドメーヌ メイエ=フォンネ クレマンダルザス ブリュットエクストラ)

オーセロワ60%、シャルドネ20%、ピノ・ブラン15%、ピノ・ノワール5%という構成で作られるクレマン・ダルザス。

柑橘や青りんごを思わせるフレッシュで香りながら、瓶内二次発酵由来の旨味でボディ感もあり、どんな料理にもよく合う辛口クレマンです。

メイエフォンネ

 以上、アルザスで生み出される多様なワインについてご紹介しました。

アルザスのワインは食事との相性がとても良いので、ぜひお好きな食材と合わせたり、お気に入りの組み合わせを探してみてくださいね。

■参考書籍
ソムリエ教本(2019年版)
10種のぶどうでわかるワイン
ワインの世界地図
ワインテイスティングバイブル

記事内容は記事作成時点の情報となります。

ソムリエ柁原めぐみ(Megumi Kajihara)
ソムリエ柁原めぐみ(Megumi Kajihara)

飲料のブランディングや広報を経験後、J.S.A認定ソムリエ資格を取得。現在は都内で酒類・飲料メーカーに勤務。
知識ゼロから一発合格を果たした経験と歴史・文化の知識を活かして、ワインをわかりやすく解説します。