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スパークリングワイン「プロセッコ」とは? その特徴とおすすめ5選をご紹介

スパークリングワインと言えばまずシャンパーニュを思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、現在世界で最も売れているスパークリングワインは、実はイタリアの「プロセッコ」だということをご存じですか?

本記事では、プロセッコがどんなスパークリングワインなのか、どのような楽しみ方ができるのかについてご紹介します。

プロセッコってどんなスパークリングワイン?

プロセッコ種のぶどう畑

まず、プロセッコとは、イタリアの北部に位置するヴェネト州で「Glera グレーラ」という白ぶどう品種からつくられるスパークリングワインのことです。

シャルマ方式(タンク内二次発酵)」と呼ばれる製法でスパークリングワインとして仕上げられており、ぶどう由来のフレッシュでフルーティ、軽やかな味わいが特徴のワインです。

2013年には初めてシャンパンの販売量を上回り、世界で最も売れているスパークリングワインの座を勝ち取りました。その理由は、やはりプロセッコのフルーティで親しみやすい味わいと、美味しいと同時にリーズナブルな価格帯であることにあるでしょう。

スプマンテ、フリッツァンテとプロセッコの違いは?

イタリアのスパークリングワインといえば、「スプマンテ」「フリッツァンテ」を思い浮かべる方も多いでしょう。「スプマンテ」は、イタリアのスパークリングワイン全般(20℃で3気圧以上) を示す言葉で、「フリッツァンテ」は、スプマンテよりも低い1~2.5気圧の微発泡性スパークリングワインを示す言葉です。

「プロセッコ」は、「スプマンテ」または「フリッツァンテ」のうち、法律で定められた特定の地域でつくられるものを指します(※プロセッコの産地については後述します)。

それでは、プロセッコについて理解を深めるために、誰もが知るスパークリングワインの代表格・シャンパーニュと比較してみましょう。

プロセッコとシャンパーニュの違い

スパークリングワイン

プロセッコとシャンパーニュの主な違いを一覧にしてみました。

産地 ぶどう品種 製法 価格帯(目安)
プロセッコイタリア北部 
ヴェネト州が中心
(フリウリ=ジューリア州にまたがる)
グレーラ主体 シャルマ方式
(タンク内二次発酵方式

¥1,500/本
シャンパーニュフランス北部
シャンパーニュ地方
ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエ
トラディショナル方式
(瓶内二次発酵方式)

¥4,500/本~

産地の違い

このように、同じ「スパークリングワイン」といえども、産地はもちろんですが、ぶどう品種も製法も、そして価格帯も異なります。

プロセッコは主にイタリア北東部のヴェネト州、シャンパーニュはフランス北東部のシャンパーニュ地方でつくられます。いずれも冷涼な気候のため、酸が多くスパークリングワインに適したぶどうを産出しています。一般的に、より緯度の高い土地でつくられたシャンパーニュのほうが、より酸度が高くキリッとした味わいになる傾向があります。

ぶどう品種の違い

プロセッコはグレーラという、この産地固有の品種を85%以上使用してつくられます。 このグレーラ、実は以前は「プロセッコ」という品種名で知られていました(この品種名はフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州にあるプロセッコという町に由来します)。

ぶどう品種の「プロセッコ」を使用したスパークリングワインの人気が高まってきたところ、ニューワールドなど別の地域でつくられた、同じ品種を使用したスパークリングワインを「プロセッコ」という名前で販売する生産者が現れるようになりました。

そのため、元来の産地を保護しようと、「プロセッコ」は特定の産地のみが使用できる名称=D.O.CおよびD.O.C.Gとして法律で定められ、ぶどう品種の名前はシノニム(別名)のひとつであった「グレーラ」に変更された、という珍しい経緯があります。

グレーラは収量が多く、ぶどうが成熟するまでに時間がかかるため収穫は遅め。酸が多く、強い個性というよりもニュートラルさが特徴で、白桃やりんご、レモン、洋梨、白い花などを思わせる軽やかで爽やかなやさしい香りが特徴です。

一方のシャンパーニュは、ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエといった品種をアッサンブラージュ(ブレンド)してつくるのが基本です。異なる品種をブレンドして、それぞれのシャンパーニュ・メゾン(シャンパーニュ生産者)ごとの個性を安定して生み出しているのがシャンパーニュの特徴といえるでしょう。

製法の違い

プロセッコとシャンパーニュの最大の違いは、製法の違いにあります。

スパークリングワインは、ごく簡単に言えば「アルコールを生むための一次発酵に加えて、ワインの泡を生むための二次発酵をする」ことでつくられます。この、泡をつくるための発酵の方法がいくつか存在し、シャンパーニュは最も手間のかかる「トラディショナル方式(瓶内二次発酵方式)」という方法で、プロセッコは、一度に大量生産できる「シャルマ方式(タンク内二次発酵方式)」という方法でつくられています。スパークリングワインの泡は、アルコール発酵時に酵母が糖分を分解して発生する二酸化炭素なのです。

トラディショナル方式は、ごく簡単に説明すると、
 瓶の中にスティルワインと酵母と糖分を入れて、密閉する
② アルコール発酵により二酸化炭素が発生する(瓶内二次発酵)
③ 熟成させる
④ 動瓶、澱抜き、門出のリキュール添加などを経て仕上げる
という流れの製法です。なお、同様の製法でつくられるスパークリングワインには、他にスペインのカヴァ、イタリアのフランチャコルタなどがあります。

一方のシャルマ方式は、
 密閉加圧タンクの中にスティルワインと酵母と糖分を入れて、密閉する
② アルコール発酵により二酸化炭素が発生する(タンク内二次発酵)
③ 冷却・濾過して瓶詰めする
という流れの製法です。

トラディショナル方式は、一本一本瓶詰めをして二次発酵をさせるため、時間と手間とコストのかかる製法です。

長い時間をかけた瓶内二次発酵でうまれる泡はきめ細かく繊細で、瓶の中で澱と一緒に熟成(シュール・リー)させるため独特のうまみのある味わいが特徴です。

一方、シャルマ方式は密閉加圧タンク使用により大量生産できるためコストが抑えられるうえ、タンクの温度調整により短時間で発酵と冷却ができるので、ぶどうのアロマを残しやすいというメリットがあります。

※なお、プロセッコにも瓶内二次発酵でつくられるタイプが一部存在し、その場合は“Rifermentazione in Bottiglia”という表記がされています。

味わいの違い

グラスに注がれたスパークリングワイン

上述のぶどう品種や製法により、プロセッコとシャンパーニュでは一般的に以下のような味わいが生み出されます(もちろん、それぞれの生産者によっても味わいの特徴は異なります)。

●プロセッコ

軽やかでぱちぱちする泡。ぶどう由来の青りんごや洋梨、メロン、レモンなどのフルーティな香りとスイカズラのような白い花の香り。品質の高いものでは、トロピカルフルーツやバナナクリーム、バニラのような香り。

●シャンパーニュ

きめ細やかで繊細で長時間持続する泡。柑橘や白桃の香り、シュール・リーによるトーストやブリオッシュの香り。年代物であればアーモンドやホワイトチェリーのような香り。

プロセッコの楽しみ方

それでは結局、プロセッコはどのように楽しめばよいのでしょうか? きっとこちらが一番重要なポイントですよね。

食前酒として軽めの前菜と

生ハムとメロン

なんといっても、はじける泡が食欲を増進させるスパークリングワインは、食前酒(アペリティフ)にもってこいです。

プロセッコの甘みと、プロシュートの塩味は相性抜群です。さらにひと工夫して、メロンのプロシュート巻きを合わせるのもおすすめです! プロセッコのフルーティな味わいが引き立ちます。

魚介やアジアンフードと

また、魚介との相性もよく、タイやベトナム料理などのアジア系フードともよく合います。海外ではお寿司とも合うと言われているようですが、筆者の好みとしてはお寿司と合わせるには少しフルーティすぎるので、海老入りの生春巻きなどのほうが相性が良いように感じます。

プロセッコの良さのひとつはなんといってもリーズナブルな価格帯なので、気取らないアジアンフードパーティーの乾杯酒にしてみてはいかがでしょうか?

スイーツとの組み合わせも◎

Extra dryタイプ(少し甘め)であれば、フルーツタルトやスフレなどのお菓子や、ポップコーンなどと合わせて食後やおやつのお供としても楽しめます。

プロセッコの選び方とおすすめ5選

それでは最後に、プロセッコの選び方とおすすめの銘柄をご紹介します。

プロセッコの格付け

一口にプロセッコといっても、実は大きく2つのランクが存在します。

イタリアのワイン法では、ぶどうの収量、ワインの収量、アルコール度などに厳しいルールが課された上級なワインを「統制原産地呼称(D.O.C.= Denominazione di Origine Controllata)」として、さらに厳しいルールに加え出荷に際して国の検査を必要とするワインを「統制保証原産地呼称(D.O.C.G.= Denominazione di Origine Controllata e Garantita)」として格付けています。

プロセッコにも、このD.O.C.とD.O.C.G.の2つの格付けが存在します(正確には、これは旧ワイン法下の格付けなのですが、イタリアではこのD.O.C.およびD.O.C.G.を継続使用している生産者が多いため、本記事でもこちらを紹介しました)。

① Prosecco D.O.C

ヴェネト州およびフリウリ・ジューリア州にまたがる地域で、グレーラなどの品種を使用してつくられるワインです。

② Prosecco D.O.C.G

プロセッコの産地の中でも特定の地域でつくられるワイン、すなわちコネリアーノ・ヴァルドッビアーデネ・プロセッコ(Conegliano Valdobbiadine Prosecco)コッリ・アゾラーニ・プロセッコ(Colli Asolani Prosecco)は、D.O.C.Gとしてワンランク上の格付けとされています。

①と②のいずれも、2009年に認定されています。従来プロセッコと呼ばれていた品種がグレーラと名称を変更したのも、このときです。

おすすめのプロセッコのご紹介

それでは、気になる、おすすめプロセッコのご紹介です。

1. ラ・マルカ プロセッコ

(La Marca Prosecco)

リーズナブルな価格で楽しめるProsecco D.O.Cのワイン。

はじける泡立ちに、フレッシュな柑橘系の香りや青りんご、はちみつ、スイカズラの香りに少しミネラル感のある味わいで、まさにプロセッコのど真ん中!と言いたい1本です。軽やかな味わいでごくごく飲みたくなるので、6~8℃ほどによく冷やして、レモンを絞った魚介のカルパッチョやグリーンサラダと一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか。

2. プロセッコ トレヴィーゾ エクストラ ドライ レ・コンテッセ

(Prosecco Treviso Extra Dry Le Contesse)

レ・コンテッセ社のつくる、Prosecco Treviso D.O.C.(Prosecco D.O.C.内の特定地域=域内の他の地域よりもワンランク上の位置づけ)のワインです。

このワインの魅力は、際立つフレッシュさと、5.3気圧という高いガス圧です。

ぶどうを収穫後、マスト(果汁)を0度で保管。オーダーに応じて発酵を始めることで、プロセッコのアロマティックな香りを最大限フレッシュにキープした状態でボトリングされています。ガス圧は、シャンパーニュに匹敵する5.3気圧で、豊かな泡立ちが特徴です。

どんな料理にも合いやすい1本ですが、豊かに広がるフルーティなアロマと、元気にはじける泡を堪能できるよう、ぜひ乾杯酒として飲んでみてはいかがでしょうか。

3. コネリアーノ ヴァルドッビアーデネ プロセッコ スペリオーレ D.O.C.G. ブリュット

(Conegliano Valdobbiadene Prosecco Superiore D.O.C.G. BRUT)

ベッレンダ社のつくる、Conegliano Valdobbiadine Prosecco Superiore D.O.C.G.のワインです。

タンク内二次発酵後、そのままタンクの中で2~6カ月静置した後、瓶詰め・瓶内熟成を行うため、プロセッコならではのフルーティな香りが豊かに感じられるとともに、繊細できめ細かい泡が口いっぱいに広がるのを楽しめます。

フルートグラスよりもボウルの大きなチューリップグラスなどに注いで、青りんごやライムを思わせる芳醇な香りを楽しんでみてください。

やや辛口なので、イワシのフリットのような揚げ物系や、ピクルスなどと合わせてはいかがでしょうか。さっぱりとした後味で食事が進みます!

4. リーヴェ ディ オリアーノ ブリュット ナチューレ コネリアーノ ヴァルドッビアーデネ ビアンカヴィーニャ

(Rive Di Ogliano Brut Nature Conegliano Valdobbiadene Biancavigna)

ビアンカヴィーニャ社の手がける、Prosecco D.O.C.G.の中でも限られた斜面のみが名乗れる「リーヴェ」の称号をもつワインです。

ノンドサージュ(補糖なし)で二次発酵、120日以上の低温熟成後、90日の瓶熟を経て出荷されるため、味わいは辛口、泡も繊細で長続きするのが特徴です。

なんといっても香りが素晴らしく、白桃のようなみずみずしい果実すっきりとしたりんご、柑橘、白い花のようなフローラルなアロマが複雑に溶け合い、長く香りを楽しむことができます。

最初は6~8℃に冷やして、温度が上がるにつれて香りの変化や広がりを楽しみながら飲んでいただきたい1本です。

5. カルティッツェ プロセッコ ヴァルドッビアーデネ スペリオーレ ドライ レ・ベルトレ

(Cartizze Prosecco Valdobbiadene Superiore Dry Le Bertole)

レ・ベルトレ社により、Prosecco D.O.C.G.の中でも最高ランクの区画Cartizze (カルティッツェ)でつくられるワインです。ヴァルドッビアーデネの丘陵地の中でも急な斜面に位置し、日当たりがよく日照条件にめぐまれているうえ、氷堆積・砂岩・粘土から構成される豊かな土壌が特徴のカルティッツェその区画はわずか107 haで、ぶどうの収量も1 haあたり最大12トンと定められています(Prosecco D.O.C.G.は1 haあたり13.5トン)。

りんごや白桃、洋梨、アカシアの花などのリッチなアロマと、甘さを感じる余韻

ワインのおともには、少し甘めのニュアンスを引き立てる、シンプルなクッキーやスイーツを合わせてみてはいかがでしょうか。

以上、プロセッコはどんなワインか、どのような楽しみ方ができるか、そしておすすめの銘柄をご紹介させていただきました。

高品質ながらリーズナブルで気軽に楽しめるワインなので、こちらでご紹介したフードペアリングを試したり、ご自身でオリジナルの組み合わせを探してみたり、ぜひお気に入りの楽しみ方を見つけてみてください!

記事内容は記事作成時点の情報となります。

ソムリエ柁原めぐみ(Megumi Kajihara)
ソムリエ柁原めぐみ(Megumi Kajihara)

飲料のブランディングや広報を経験後、J.S.A認定ソムリエ資格を取得。現在は都内で酒類・飲料メーカーに勤務。
知識ゼロから一発合格を果たした経験と歴史・文化の知識を活かして、ワインをわかりやすく解説します。