カベルネ・ソーヴィニヨンとは? 世界的ブドウ品種に迫る!

世界で最もポピュラーな赤ワインのブドウ品種と言われるカベルネ・ソーヴィニヨン。世界各国で栽培され、カジュアルなテイストから長期熟成ワインまで幅広い味わいが楽しめるのも魅力です。この記事ではカベルネ・ソーヴィニヨンという品種について解説し、そのブドウから素晴らしいワインを生み出す生産者と、それにまつわる歴史をご紹介します。

カベルネ・ソーヴィニヨンのプロフィール

カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)のルーツはローマ時代ビトゥリカと呼ばれていたブドウと同一と考えられています。原産地は南フランスやスペイン北部、フランス・ボルドー地方とも言われており、その起源には諸説あります。17世紀に南西フランスでカベルネ・フランとソーヴィニヨン・ブランの自然交配で生まれたという発表もあります。

ブドウの特徴は、小粒で、黒みを帯びており、熱く硬い果皮、果肉もしっかりしています。乾燥に強く、砂利質などの水分の少ない土壌を好みます。樹勢も強く、収量が多いと品質が著しく下がります。

世界の品種別栽培面積では、カベルネ・ソーヴィニヨンは29万 haで、2位のメルロー26万7千 haを引き離して世界1位となっています。

豊かなタンニンにより、カベルネ・ソーヴィニヨンからは長期熟成型の赤ワインが生まれます。その魅力を申し分なく開花させるには数年から数十年の時間が必要となります。

「ワインの女王」と呼ばれる理由

Elegant glass of red wine with dark grapes and corks inside vintage wooden box on black stone background.

渋みの豊かなワインを生むブドウ品種の代表に挙げられるのが、カベルネ・ソーヴィニヨンです。色が大変濃く、黒みを帯びた色調をしていて、香りも濃縮感がありスパイシーです。味わいは酸味を基調としてストレートで、中盤以降からそのしっかりとした渋みが口の中に広がります。

これだけ聞くと、なぜ「女王」や「女性的」と表現されるのか? と疑問に思ってしまいますが、これには理由があるようです。

カベルネ・ソーヴィニヨンはフランス・ボルドー地方の主要品種の一つですが、伝統的に、ボルドーは女性的でブルゴーニュは男性的と言われます。このままだと逆のような気もしますが、そこには「熟成したボルドーは」という言葉が必要なのです。

カベルネ・ソーヴィニヨンに含まれる豊かなタンニンは若いうちは香りを閉じ込もらせてしまい、ワインの味わいに硬さを与えます。しかしそれは熟成の進行を遅らせる役割を持ちます。つまり、熟成がゆっくりと進むのです。硬い渋みはゆっくりとした熟成の進行により、バランスの良い味わいと緻密な渋みとなります。十分な熟成を経たボルドーのカベルネ・ソーヴィニヨンは類まれなエレガンスと味わいのバランスを身につけ、極めて緻密な渋みはシルクやヴィロードのようなテクスチャーとなるのです。

これがカベルネ・ソーヴィニヨンが「女王」と言われる所以です。

またコンティ王子とロマネの特級畑の争奪戦に敗れたポンパドゥール夫人が、その腹いせにボルドーのシャトー・ラフィット・ロートシルトをヴェルサイユ御用達にしたというエピソードも「ボルドー=貴婦人」というイメージの認知を手伝っているのかもしれません。

世界のカベルネ・ソーヴィニヨン

フランス以外でカベルネ・ソーヴィニヨンを用いて成功している生産者をご紹介します。

テヌータ・サン・グイード(イタリア)

*スーパー・タスカンの元祖「サッシカイア」を手掛けるエステート・ワイナリー。ボルドーのシャトー・ラフィット・ロートシルトから分枝したカベルネ・ソーヴィニヨンを用いて深みと調和を表現しています。イタリアの偉大な赤ワインとして、世界から賞賛されています。

*Episode 1, スーパー・タスカンの発祥

スーパー・タスカン(スーパー・トスカーナ)とは、イタリア・トスカーナ州で生まれたモダンスタイルのワインのことです。ワイン法や伝統、格式に囚われることなく、「自由に」、「美味しさ」を徹底追求したワインを指します。

イタリアワインはスーパー・タスカンが生まれるまでは、伝統的な品種・醸造方法に拘り、国内で消費できれば良いレベルだったのです。スーパー・タスカンの誕生はそんなイタリアの視野を世界に向けさせ、品質を劇的に向上させました。

そのスーパー・タスカンの先駆けとなったのが、サッシカイアでした。トスカーナ州のティレニア海沿いにある「ボルゲリ地区」はスーパー・タスカン発祥地であり、サッシカイアが誕生した土地です。

サッシカイアの誕生は1944年。ボルゲリ地区に広大な土地を所有していたマリオ・インチーザ公爵は大のボルドーワイン好きでしたが、第二次世界大戦中は敵国フランスのワインを輸入できなかったのです。

仕方なく自分の畑でボルドースタイルのワインを作ることにし、そのことを親交のあったシャトー・ラフィット・ロートシルトに伝えると、ラフィットは快く苗木を送ってくれたそうです。

サッシカイアが品質向上し始めたのは1968年頃。経営がマリオから息子のニコロに代わり、彼はジャコモ・タキスを迎え入れました。タキスは後に「スーパー・タスカンの父」と呼ばれ、イタリアワインの国際化に大きく貢献した醸造家です。

2人は当時最新鋭の技術を駆使し、とにかく「美味しいワインを造る」ことを追求しました。そして彼らは国際品種ブームの火付け役となり、ボルゲリという新しい産地を発掘したのです。

ボルゲリではそれまで、白ワイン用もしくはロゼワイン用のブドウしか栽培されていませんでした。しかし、温暖な海洋性気候で土壌も小石に覆われているというこの地域は、もともとカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に適しているのです。その後数々の功績を残し遂に1994年、単独ワイナリーとして唯一のDOCに認定されました。それは「DOCボルゲリ・サッシカイア」とワインの名がつくという大変名誉なことでした。つまり、法律に縛られないワイン造りを目指した結果、自身のワイナリーが法律となったのです。

ウィンズ・クナワラ・エステート(オーストラリア)

南オーストラリアのクナワラというエリアで最大かつ最古のエステート・ワイナリーで、耕作地950 haはクナワラの特徴的な土壌テラロッサ(カベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に好適)の約7割を占めています。

ロス・ヴァスコス(チリ)

1983年からドメーヌ・バロン・ド・ロートシルト社(ラフィット・ロートシルト)が技術協力し、1998年に継承したワイナリーです。その際に改植や設備刷新、作業改善を行い品質向上を図りました。手頃な価格帯で安定した品質に定評があります。

スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ(アメリカ)

1976年の*パリ対決のカベルネ・ソーヴィニヨン部門で優勝した生産者です。1970年にウォーレン・ウィニアルスキーが開墾し、1972年に初生産。芳醇で深みがあり、端正な造りのワインを生産しています。

*Episode2, パリ対決

1976年、世界のワイン業界に衝撃を与える事件が起きました(パリスの審判と呼ばれています)。パリのアカデミー・デュ・ヴァン創始者であり、イギリス人のスティーヴン・スパリュアが主催したフランスワインとカリフォルニアワインのブラインド・テイスティング対決において、当時無名だったカリフォルニアワインが圧勝したのです。

1976年はアメリカ独立200周年で、スパリュアらは何かアメリカを祝うイベントを出来ないかと考えました。そうして企画されたのが、カリフォルニアワインとフランスワインを比較試飲するというものでした。フランスが200年前にアメリカの独立を助けたように、スパリュアらもアメリカのワインを応援しようとしたのです。

当時のパリではカリフォルニアワインはほぼ皆無でしたが(誰もアメリカに高品質なワインがあると想像すらしていない時代でした)、スパリュアらはアメリカにも高品質なワインが存在すると知っていたのです。

審査員は全員フランスワイン業界を代表する蒼々たる顔ぶれで、対決に選ばれたフランスワインも世界で圧倒的な地位を築きあげているワインばかり。まさにカリフォルニアの勝利など誰も予想していなかったのです。

ブラインドテイスティングで行われたこの対決は、白・赤ワインともにカリフォルニアの勝利という衝撃の結末を迎えました。1位の白はシャトー・モンテレーナのシャルドネ1973ヴィンテージ、赤はスタッグス・リープ・ワイン・セラーズのカベルネ・ソーヴィニヨン1973ヴィンテージでした。

しかし、この結果にフランス側は異議を申し立てます。最大の論点はフランスワインの「飲み頃」について。パリ対決で試飲されたフランスのワインは白・赤ともに生産から平均して4.5年の若いワインでした。「長い年月の熟成によって真価を発揮するフランスワインは、若いうちが華の熟成出来ないカリフォルニアワインに対して不利だ」ということで、10年後の1986年にリターンマッチが開催されました。

ところが、第2回の対決もカリフォルニアの勝利。1位はクロ・デュ・ヴァルのカベルネ・ソーヴィニヨン1972ヴィンテージでした。しかしこのリターンマッチはニューヨークで開催されたためホームタウンジャッジを疑われ、さほど決定的なものになりませんでした。

そして30年後の2006年、イギリスとアメリカの同時開催でさらなるリターンマッチが行われました。

ボルドーの1970年や1971年はまさに熟成のピークであると予想されていましたが、結果はカリフォルニアが1位から5位を独占し完全勝利しました。この結果は「産地に関わらず偉大なワインは素晴らしい熟成をする」ということを示し、伝説のパリ対決は最終決着がついた形となりました。ワイン業界が大きな転換点を迎えた歴史的な出来事として、後世に語り継がれていくことでしょう。

最後に

如何でしたでしょうか。最後に世界のカベルネ・ソーヴィニヨンワインの2つの有名なエピソードをご紹介致しました。世界的な品種ですので、この記事では書き切れないことが沢山ありますが、少しでも読んで下さった方の興味や理解が深まれば幸いです。

記事内容は記事作成時点の情報となります。

ソムリエ柴田 郁也(Shibata Fumiya)
ソムリエ柴田 郁也(Shibata Fumiya)

フランス料理店勤務時にソムリエに憧れ勉強を始め、23歳で日本ソムリエ協会認定ソムリエを取得。都内のミシュラン星付きのフランス料理店やビストロを経て現在中目黒B.B.S.DINING.にてソムリエとして勤務。