【ソムリエの旅ログ】 Vol.1 ワイン発祥の地、ジョージアをゆく

はちみつ色のワイン

皆様こんにちは。 世界中のワイナリーやワインバーを日々グデングデンに酔っ払いながら放浪していた吉川大智と申します。

今回は私のちょっとした酒場放浪記をコラムとして連載させていただく運びになりましたので、しばしおつきあいくださいませ。

私はソムリエの資格を取得後、今までの人生で約40カ国200都市以上を訪問し、数えきれないほどのワイナリーやワインバーに立ち寄ってきました。その中でも特に印象に残った国やエピソードを、ここではゆるく綴っていきたいと思います。

1. そうだ、ジョージアへ行こう

ジョージアの街並み

ジョージアとワインの関係

「ジョージア」と聞くと、皆さんは何を思い浮かべますか?

缶コーヒーのジョージア?

それはサントリーさんが出してるコーヒーのブランド名です。確かにCMは面白いけれども。

アメリカのジョージア州?

これも違います。私が行ったのは紛れもなく国家なのです。

「これから、ジョージアに行くんだ〜。」

と友人に打ち明けた時に

「あぁ、旧ソビエト連邦から1991年に独立後『グルジア』から2015年に改名した、ワイン発祥の地、ジョージアですね!」

と回答できた人は皆無でした(そりゃそうだ)。

ジョージアは黒海に面していて、北側はロシア、南側はトルコ、アルメニア、アゼルバイジャンに隣接し、コーカサス山脈の南側に位置しています。元々は「グルジア」と呼ばれていた旧ソ連圏の国で、2015年から、国の名前が英語名のジョージアに変わったのです。国名が変わるってなかなかですよね。時代も進めば国の名前も変わってしまう。

さて、今回なぜ私がこの地に目をつけたのかと言うと、実はジョージアは、世界で初めてワインがつくられたワイン発祥の地らしいのだ!

Wine Lab

ジョージアのクヴェブリ製法は世界無形文化遺産

世界無形文化遺産という漢字ばかりの8文字に、皆さんは一体どんなイメージが湧くでしょうか。意外とパッと出てこないものですね。

日本にもたくさんあって、2013年には世界に誇れる「和食」が世界無形文化遺産になりました。

その同年、紀元前6000年から続くと言われるジョージアのクヴェブリワインの製法が世界無形文化遺産に登録されたのです。

そこで

クヴェブリ製法ってなんやねん

ジョージアワインってなんやねん

ジョージア人ってどんな顔してんねん

という果てしなく湧いてくる疑問(急に関西弁)を解消すべく、私はジョージア行きのチケットをとったのであります。

そして何よりも当時衝撃だったのは、あの分厚すぎる電話帳みたいなサイズのソムリエ教本に、ジョージアのページがなかったという点。日本のソムリエ協会にとってジョージアはOut Of 眼中(死語)なのでしょうか。一体どんなワインと出会えるのでしょうか。ワクワクしてきます。

いざジョージアへ

そういうわけで2018年10月に、私は成田空港からバンコク→バーレーン(11時間のトランジット)→ジョージアの首都トビリシへと向かいました。成田からだとイスタンブール経由からでも行けるみたいです。直行便があればいいのに…。

機内では隣の席のアラブ系おばさんが目の前で香水をシュッシュかけたりしてて、マスクをしていてもかなりにおって寝られなかった。トビリシに着いたのは朝の5時。まだほんのりと薄暗い。

まずは空港内にあるATMでお金を下ろしたり、トイレに行って歯を磨いたり、SIMカードを買って諸々設定をする。空が明るくなってから外に出ると、すぐにタクシーのおっちゃんがやんややんやと勧誘にくる。こういうのはどこの国も一緒なんだなぁ。やっぱり日本のタクシーは非常にお行儀が良い。

そんなタクシー運ちゃんをガン無視して1分ほど歩くとバスを発見。尋ねると首都トビリシの中心地であるステーションスクエアというところへ向かうらしい。料金は0.5ラリ(22円ほど)。や、やすい!!

バスに乗ってくる様々な老若男女。男性はご年配の方や女性にさっと席を譲る習慣が根付いているようで、頻繁に席が変わっていた。素晴らしい。良いマナーを見ていると真似したくなるのが人の常。私もおばあちゃんが乗ってきた瞬間にドヤ顔で席を立ってみたけど、後ろにいる青年から「中国人は座ってて良いんだぜ」と言われる始末。

いや、ジャパニーズなんですけど。

と伝えると彼は驚いていた。「日本人、初めて会ったよ!」と握手を求められた。日本人は天然記念物らしい。40分程でステーションスクエアに到着。洋服やら靴やら、本やら雑貨などの商店がずらっと並んでいて、パチモンなんだろうけどクオリティはインドより全然いい感じだ。香辛料の匂いもしないし。

駅を見つけたので地下鉄に乗り込む。メトロはどこまで行っても一律0.5ラリ(22円ほど)。や、やすい!!

駅を降りると気持ちよさそうに酔っ払っているおっちゃんがたくさんいたので、どれ私もいっちょいくか、というノリで酒場へGO。

ジョージア一発目のビールは2ラリ(84円ほど)。や、やすい!!

ジョージアのビール

外に出ると半袖でちょうど良い天気で、良い風が吹いている。ジョージアは11月~3月くらいは寒く、7~8月は真夏でかなり暑くなるらしい。9月はからっと晴れていて暖かく、それでいて風が涼しい。当時私が訪れたのは9月。どうやらベストシーズンに来てしまったようだ。いやはや、最&高である。

しかもぶどうの収穫期とも重なって気分は上々。2軒目のバーを見つけ、気がついたら4杯飲んでいた。

2. ジョージアの首都、トビリシの旧市街を歩く

トビリシのフォトログ

地下鉄に乗ってトビリシの旧市街での街歩きへ。

ジョージアの地下鉄のエスカレーター

長くてはやーいエスカレーターで地下まで。

一体どこまで行くというのだというくらい深くまで降りていく。

メトロの駅名では“Rustaveli” “Liberty Square” “Avlabari”あたりで降りると良い。

澄み渡る青い空と表参道のような綺麗な街並み。

 駅と駅の距離があまり離れておらず、3駅分は30分くらいで歩き切れるのでとっても観光しやすい。ちょっと坂が多いけどね。

トビリシの中心部にはワインショップが本当に多い。中でもテイスティングルームがあるところでは無料で試飲をさせてもらえる。

「好きなだけ飲んでいっていいのよ」というまなざし。

好きなだけ飲んでいって

「たくさん飲んでってくれよ!」って感じのオーラ。

たくさん飲んでってくれよ!

もう帰るねっていうタイミングで「最後にこれ飲んでよ」と押しが強い兄ちゃん。

最後にこれ飲んでよ

まさにワイン天国。

Wine is the Answer

既にへべれけになりながら撮った写真をしばしお楽しみください。

トビリシ旧市街の街並み。

トビリシ旧市街の街並み

ワインショップ。

ジョージアワインショップ

青空本屋さん。のどかな雰囲気でとてもいい感じです。

ジョージアの青空本屋さん

西欧の中世の街並みとうまく融合した感じ。

西欧の街並みと融合
ジョージアの街並みと河
ジョージアの街並みと城

クヴェブリを乗せた廃車。イラストもかわいい。

ジョージアのクヴェブリかめと廃車

トビリシのワインショップでテイスティングをしよう

トビリシのワインショップは客引きはいないあっさりした接客だ。インドやラテン系のゴリゴリ客商売に慣れている強者にとっては、物足りないかもしれないくらい。自分から勇気を出して突入しよう。

ジョージアでテイスティング

・クヴェブリ製法のワイン

・ジョージアの土着品種

・ぶどうの搾りかすから作る蒸留酒チャチャ

など、どれもジョージアならではのラインナップでテンションが上がる。

クヴェブリ製法のワイン

クヴェブリワインとは?

ジョージアといえばクヴェブリワイン。クヴェブリって一体なんのことなのか?

簡単に説明すると、「Qvevri(クヴェヴリ)」とは、粘土から作られる大型のかめのことで、このかめを使ってつぶした実も皮も種も一緒くたのぶどうを発酵させ、さらにこれを地中に埋め一定の温度を保って発酵させます。これがワイン作りの起源とされていて、2013年にクヴェブリ製法が世界無形文化遺産に登録されたのですね。この製法で作ることによって樽やステンレスとは違った豊かな果実感を持ったワインが出来上がります。今で言う自然派ワインに近いニュアンスですね。

ジョージアの土着品種

ジョージアには約530種類のぶどう品種があるとされていて、実際に栽培されているのはなんと425種!!

その中で、当時の私は

ルカツィテリ

ムツヴァネ

キシ

サペラヴィ

というジョージアでは主要なぶどう品種のワインを買い漁りました。

どれもソムリエ教本には載っていないぶどう品種……

た、高まる!!!

ぶどうの搾りかすから作る蒸留酒チャチャ

ぶどうの搾りかすから作る蒸留酒は、世界各国で作られていますね。

イタリアではグラッパ

フランスではマール

チリやペルーだとピスコ

そしてここ、ジョージアだとチャチャと呼ぶらしい。

度数は40度から70度。色は透明から樽熟成由来の茶褐色まで幅広い。

ストレートでクイッといただく。

食後にぴったりだけど、こっちの人は乾杯がてら3、4杯をサクッと飲むから怖い。

トビリシのワインバー

そしてトビリシはショップだけでなくワインバーも充実していて、メトロの中心部の駅、リバティスクエアの周りに点在している。一体何軒回ったのか分からないくらいに日々へべれけになっていたのだが、 唯一覚えていたお店(おい)がこちら↓

「Vino Underground(ヴィーノ・アンダーグラウンド)」

Vino Underground

メトロのリバティスクエアから歩いて5分ほど。

 店主の方が細かく丁寧に教えてくれる。グラスとボトルを持ってきて、目の前で注いでくれるから安心。

ジョージアのバーフード

日本でワインを扱っているお店だったら当然のサービスかもしれないけれど、外国では結構適当だから、エチケット(ラベル)を見せられながら説明を受け、目の前で注いでもらえるとやっぱり嬉しい。

white、amber、rose、red

それぞれ1種類ずつ呑める。

ジョージアワイン1
ジョージアワイン2
ジョージアワイン3
ジョージアワイン4

“amber”とは、日本でも最近注目されているオレンジワインのこと。なかなか馴染みがないけれど、これがまた独特の風味があって美味しい。

オレンジワインは、簡単に言えば、白ブドウを使って、赤ワインの製法で作られる。皮や種を除かずにそのまま発酵させるので、色味が白ワインよりも濃くうつるのだ。

ジョージアをはじめとしたアルメニア、アゼルバイジャンのコーカサス地方で始まったオレンジワイン(諸説あります)は、ここではアンバーワインと呼ばれる。確かにオレンジというよりは琥珀色なので、その方がしっくりくるかもしれない。白ワインなのに、渋みがある。と言うとやや不思議な感覚だが、これがまたハマる。どんな料理とペアリングしたら良いかなぁとぼんやり思いを巡らす。

ちなみに一昨年の2017年のソムリエ2次筆記試験にも出てきていましたね。

「オレンジワインとは何か、説明しなさい」

それだけ近年注目を浴びているワインのスタイル。

皆さんはきちんと説明できますか?

と、話が横道にそれちゃいましたが、ジョージアワインをグラスで少しずつ楽しみたい! と言う方にはオススメのお店。周りのお店と比べるとちょいと高いけれど。ティスティングは4種類で20ラリ(840円ほど)、激安の殿堂ですね。

その他街歩きをしていても3分歩けばワインショップ、また3分歩けばワインショップ…と果てしなくショップがあるので本当に飽きない。ワインラバー必見の街だと改めて感じるのでした。

3. 知られざるジョージアの魅力

ジョージアのワインセラー

ジョージアは述べ1カ月程滞在しましたが、ここなら住める! と思う程に素晴らしい国でした。これは個人的な独断と偏見もありますが、いくつか箇条書きにしてみたいと思います。

●治安が良い

世界中を旅していると、治安の悪いエリアにも滞在せざるを得ない時が少なからずありました。夜は外出している人が皆無だったり、街灯が全て銃で撃たれて割れていたり、夕方には店がシャッターを閉めてしまうエリアがあったり…と色々ですが、ジョージアは夜中もバーが開いていますし、女性や子供も1人で出歩くところを多く見たので安心して滞在ができました。もちろん海外ですので最低限の用心は必要ですが、普通に生活する分には安全だと感じました。

●人が良い

ジョージア人はグルジア語が母国語で、私はグルジア文字がさっぱり読めない上にグルジア人で英語が喋れる人は極端に少ないけれど、みんな基本的に親切でした。アジア人をあまり見ないようで結構物珍しそうな目で見られますが…。グルジア語はロシア語に似ているところがありますが、旧ソ連圏の国でロシアに対してあまり良いイメージを持っていないグルジア人も少なくないので、ロシア語で話しかけるとたまにむすっとされます。そしてなによリも美人が多い…!

●物価が安い

生ビールはジョッキで60~80円

レベルの高いワインが1本300円~。

食べきれない程の大きなパンが30円。

地下鉄メトロはどの区間乗っても一律22円。

SIMも10GBで500円ほど。

ゲストハウスならドミトリーが一泊500円~、シングルでも900円前後。

日本と比べると1日の生活費がかなり安く抑えられます。

●ご飯とワインが美味しい

ジョージア料理には名物がたくさんありとても美味しい。ガーリックやコリアンダーをがっつり効かせたお酒に合うものが多いので、ビールやワインが恐ろしいほどすすみます。レストランや食堂でも1食300~500円程度で素晴らしいクオリティの料理が堪能できます。

●日本人はVISA無しで365日滞在可能

海外での長期滞在を考えている方やフリーランスで活躍したい人には、これは激アツ! 条件ですね。私もまた必ず再訪すると思います。

ジョージアのワインセラー2

次回はトビリシからワインの街テラヴィに移動して、ついにワイナリーを訪問します。

お楽しみに~!

記事内容は記事作成時点の情報となります。

ソムリエ吉川 大智(Yoshikawa Daichi)
ソムリエ吉川 大智(Yoshikawa Daichi)

世界中のワイナリーとワインバーを渡り歩いた飲兵衛な旅人。延べ40カ国200都市以上を訪問。ワインバーの店長を経て、現在はバイリンガルのエンジニアとして勤務。