今日は、なにノムノ?
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マルベックの特徴とは? アルゼンチンワインを代表するぶどう品種を徹底解説!

皆さんはマルベックで造られた赤ワインを飲んだことはありますか? 南アメリカ大陸にあるアルゼンチンでは黒ぶどうの中で一番生産量が多いのですが(2位はボナルダ、3位はカベルネ・ソーヴィニヨン)、日本ではまだ認知度の低いマイナーなぶどう品種です。そこで今回はマルベックに焦点を当てて、味わいや香りの特徴、ペアリングとして合わせたい料理、おすすめワインなどを徹底解説していきます。

マルベックとは

Wine at The Vines of Mendoza
Photo by David on Flickr

マルベックはフランス南西部にある、カオール地区が原産の黒ぶどう品種です。マルベックにはいくつかシノニム(別名)があり、ボルドー地方では「コット」、南西部のカオール地方では「オーセロワ」という名称で呼ばれています。

マルベックの実は小さく、果皮が厚いため、タンニンが豊富で渋みがしっかり感じられます。そのため、フルボディのタイプの赤ワインが多く生産されています。かつてはボルドーでよく栽培されていましたが、現在はアルゼンチンで最も多く栽培されています。  

マルベックの主な産地

アルゼンチン 

かつてはフランスのボルドー、カオールで生産されていたマルベック。1850年頃になるとアルゼンチンのワイン産地、メンドーサに農業学校が創立され、フランスからのワインの技術導入と同時にマルベックの苗木の移植がされました。 その後、メンドーサに灌漑のシステムが構築され、ワイン産業が拡大していきました。現在では、世界で造られるマルベックの約75%がアルゼンチンで栽培されています。 

アルゼンチンの中でも南アメリカ最大のワイン産地であるメンドーサ州にあるルハンデクージョ、ウコバレーで多く造られ、他にはサルタやサンフアン、トゥクマンでも栽培されています。メンドーサ州はアンデス山脈の麓に栽培地が広がっているため、全体的に降雨量が少なく、アンデス山脈からの雪解け水や、夏の洪水時の貯水、地下水を利用しています。

アルゼンチン・メンドーサ州の主要生産地リスト

ルハンデクージョ
標高860~1,100メートルに位置します。マルベックの他にはカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培地として有名。高品質で価格帯もやや高めのワインが多いです。

ウコバレー 
メンドーサの南側、アンデス山脈の山麓にある標高の高い産地です。マルベックの他にはボナルダというイタリア原産のぶどう品種の栽培が盛んです。 

サルタ 
標高1,500メートルに広がる産地です。マルベックの他には、アロマティックな白ワインとなるトロンテス・リオハーノの栽培地として有名です。

サンフアン 
主なぶどう品種はシラーですが、マルベックも有名な産地です。主要産地はカルチャキエス渓谷に位置するCAFAYATE(カファジャテ)です。 

フランス・カオール 

マルベックは全生産量の75%をアルゼンチンが占めますが、フランスの南西部、トゥールーズ・アヴェイロネにあるカオールも抑えておくべき生産地です。フランスのボルドー地区では、マルベックはカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローを主要品種とするワインのブレンド用として使われることが多いのですが、カオールではマルベック100%、またはマルベック主体のブレンドワインが造られています。 

この地区の特徴である石灰質の土壌と降雨量の少ない天候により、色合いの濃いワインが造られ、カオールのマルベックは「黒ワイン」と呼ばれています。カオールで造られるマルベックは、酸味とタンニンが豊富なアルゼンチンのマルベックとは異なり、土やタバコのようなニュアンスを感じる素朴な印象があります。ただ渋みと飲みごたえはしっかりと感じられるため、食事と共にゆっくりと楽しめるワインに仕上がります。

マルベックの特徴

マルベックと言えばやはり、「黒ワイン」と形容される程に濃い色調が特徴です。 

アロマは、みずみずしくて酸味のあるラズベリーや、豊かな味わいのブルーベリー、甘いタバコのようなスモーキーさがあります。 さらに、収穫年や樽熟成の期間によって様々なアロマのタイプが造られているため、多様性に富んでいます。

樽熟成をしない、または樽熟成期間が短いマルベックは、ジューシーで赤い果実のアロマが豊かで、タンニンのバランスが取れていて飲みやすいタイプになります。

一方で、高級品質のマルベックは樽熟成を長めにすることが多く、ブラックベリーやチョコレートのような甘い香りが出てきます。全体的に色味が濃く、渋みのしっかりある、パワフルなフルボディのワインになります。そして、滑らかな舌触りと鼻に残る長い余韻が特徴です。 室温(16~20℃前後)が適温とされていますが、飲みにくさを感じる場合は、少しだけワインクーラーに入れて温度を下げると、タンニンが控えめになり、飲みやすくなります。

マルベックに合う料理

タンニンが強く渋みのしっかりあるマルベックには、赤身の牛肉ビステッカ(ステーキ)がよく合います。特に牛肉の生産量が世界一のアルゼンチンでは、炭火で焼き上げた「アサード」という豪快なお肉料理が有名で、ジューシーなお肉にぴったりハマります。BBQなどでワインを楽しむ時には、マルベックのワインを一本持っていくと喜ばれることでしょう。 

また、近年ではミディアムボディでカジュアルに楽しめるタイプのマルベックもあるため、渋みも比較的穏やかなマルベックには豚肉のトマト煮込みや、肉じゃが、うなぎの蒲焼き、焼き鳥などといった和食特有の甘辛い味付けとの相性も良いです。 

マルベックのおすすめワイン3選

1.ボデガ・ノートン ロ・タンゴ・マルベック

ブラックベリーの香り豊かなアロマと、黒胡椒のようなスパイシーなニュアンス、樽由来のバニラ香の余韻が長く続きます。フルボディですが口当たりが滑らかで牛肉のビステッカと相性は抜群です。

2.カテナ アルタ マルベック 2016

メンドーサ州で造られるマルベックを、フレンチオークで18カ月間熟成しています。また、フィルタリング無しで瓶詰めしているため、チョコレートや甘いタバコのフレーバーがしっかりと感じられます。 フルボディで飲みごたえはあるものの、口当たりはソフトな印象です。少々お値段は高いですが、特別な日や高級なお肉を手に入れた時には是非飲んでみてください。

3.モンテス カイケン・マルベック・レゼルヴァ

日本国内でも有名なモンテス社が、アルゼンチンで手掛けるワイナリーで造られています。マルベックが主体でカベルネ・ソーヴィニヨンがブレンドされているため、フルボディではありますが滑らかな舌触りで非常に飲みやすく仕上がっています。


昨今は外出できずに家の中にいる時間が長くなってしまいがちですが、普段よりちょっといいお肉を焼いて、マルベックの赤ワインでペアリングしてみてはいかがでしょうか。アルゼンチンのマルベックと、フランスのカオールのマルベックを飲み比べてみても面白いですね。是非一度飲んでみてください。

■参考文献
The Wine ワインを愛する人のスタンダード&テイスティングガイド
基礎から学ぶ田辺由美のワインブック

■Photos by Unsplash

記事内容は記事作成時点の情報となります。

ソムリエ吉川 大智(Yoshikawa Daichi)
ソムリエ吉川大智(よしかわだいち)

世界40ヶ国200都市の酒場とワイナリーを旅した元バーテンダー。
ワインバーのマネージャーを経て、現在多数のメディアにてコラムやエッセイを執筆するライターとして活動中。JSA認定ソムリエ。
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