今日は、なにノムノ?
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カルメネールのワインとは? 特徴や合う料理をソムリエが解説!

カルメネールのワイン

近年、チリワインの代表的な品種のひとつとして知られるようになってきた黒ぶどう「カルメネール(Carménère)」。どのような歴史を持つのか、どのような特徴があるのか、一緒に紐解いてみましょう。

カルメネールとは?

Viña Concha y Toro
Photo by Carlos Varela on Flickr

カルメネールは、現在はチリを中心に栽培されている黒ぶどう品種です。元々はフランス・ボルドー原産のぶどうですが、原産地では栽培がほぼ途絶えています。

カルメネールの語源は「Carmine(深紅色)」。これはぶどうの実が熟したころに、葉の色が赤く染まることから名付けられたと言われています。

ぶどうの実がしっかり熟すまでに時間がかかる、晩熟型の品種です。熟しきらないうちに収穫してしまうと、ピーマンのような青っぽい香りが残ってしまいます。しかし、しっかりと熟したぶどうの実を使うと、熟した赤いベリーを思わせる果実の厚みのある味わいと香り、また樽熟成するとコーヒーやチョコレートのような香りが加わり、凝縮感のあるワインを生み出します。

ちなみに、前述のピーマンのような青っぽい香りの正体は「メトキシピラジン(Methoxypyrazines)」と呼ばれる物質で、カベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フラン、そしてカルメネールといったカベルネ系統のぶどう品種に共通して含まれています。

カルメネールの産地と歴史

カルメネールの葉の写真

カルメネールは前述の通りボルドー原産で、カベルネ・ソーヴィニヨンの補助品種として栽培されていました。しかし、非常に晩熟であること、花が落ちてしまう花ぶるいを起こしやすいことなどから生産量が低下し、さらに1860年代にヨーロッパのワイン生産地を襲ったフィロキセラの被害で、ボルドーからはほぼ姿を消すこととなりました。

しかし、1994年にカルメネールはチリで「再発見」されました。チリでは16世紀半ばにスペイン人の修道士らがワイン用のぶどう栽培をはじめましたが、その後本格的なぶどう栽培とワインづくりまでは広がらず、個人消費用のワインづくりが細々と続けられていました。19世紀に入り、フランスから多くのワイン醸造の知識や品種が伝えられた中に、カルメネールも入っていましたが、当時はメルローだと思われていました。

本物のメルローと混植されていましたが、メルローは早熟の品種であるのに対し、カルメネールは晩熟。メルローの成熟する時期に合わせて収穫すると、カルメネールはまだ青い香りが残ってしまっています。これに疑問をもったぶどう学者たちが1994年にDNA鑑定を行った結果、実はメルローではなくカルメネールだったと判明したのです。

しかし、この時点ではまだチリの農業省のワイン用ぶどう品種リストに「カルメネール」の記載がなかったので、当時初めてカルメネールでワインを作ったワイナリー「ビーニャ・カルメン」はやむなく「グラン・ヴィデュール1994」とラベルに表記したそうです。その後、1996年に「カルメネール」がワイン用ぶどうとして認証され、カルメネールとメルロの植え分けや栽培法の研究も進んできました。

現在、チリでは約11,000ヘクタールのカルメネールの生産畑が存在しており、チリ中央部の「アコンカグア・ヴァレー」および「セントラル・ヴァレー」が主な生産地です。

チリのワイン用ぶどう生産量の5.1%を占めています(※2017年のOIV発表に基づく)。

カルメネールのワインの特徴

カルメネールから作られるワインは、色調が濃くブラックベリーやダークチェリーのような赤・黒系の果実を思わせる香り、胡椒のようなスパイシーさ、程よい酸に、比較的なめらかですがしっかりとしたタンニンを持つ、凝縮感のあるワインになります。

カルメネールのワインに合う料理

それでは、実際にカルメネールを飲むときはどんな料理に合わせると相性が良いのでしょうか。

定番の組み合わせとしては、胡椒のきいた牛赤身肉のローストローストポークはカルメネールのスパイシーさ、酸味、なめらかなタンニンとよく合います。

牛赤身肉のロースト

また、凝縮感とコクがあるワインなので、辛味のある料理ともバランスをとりやすいです。

個人的には、ペンネ・アラビアータと合わせると相性が良いと思います。

自宅で料理する際には、ピーマンとウインナーを入れたナポリタンとも合わせています。

カルメネールはリーズナブルな価格で買えるので、気軽な料理とも合わせやすいのが良いですね。

ペンネ・アラビアータ

カルメネールのおすすめワイン3選

①Santa by Santa Carolina   Carminére Petit Verdot 

(サンタ バイ サンタカロリーナ  カルメネール/プティ・ヴェルド)

サンタカロリーナ

チリで140年の歴史を誇るサンタカロリーナ社が、サントリーと共同開発し日本限定で発売しているワイン。

価格的には非常にお手軽なので、カルメネールを試してみたい!という方、テーブルワインとしてご自宅に置いておきたいという方にはぴったりです。

カシスの果実香や少し青っぽい香り、コーヒーを思わせるほろ苦い香りがあり凝縮感がありつつも飲みやすく、食事に合わせやすい1本です。

②Carmen Gran Reserva Carmenere

(カルメン グランレゼルヴァ カルメネール)

ヴィーニャ・カルメンは、1850年創業のチリの名門で、初めてカルメネール100%のワインを作ったワイナリーです。

なお、グランレゼルヴァは、『アルコール度数が法定最低アルコール度数よりも少なくとも1%以上高く、独自の香味があり樽熟成した』(日本ソムリエ協会 ソムリエ試験教本より)ワインに使用できる表記です。

カルメネールらしい、プラムやチェリー、マルベリーなどの果実香に、少し青っぽさも感じられ、樽熟成由来のロースト香(コーヒー・チョコレート・タバコのニュアンス)が複雑味を与えています。丸みのあるタンニンが食事にもよく合い、「The チリの美味しいカルメネール」という印象の1本です。

③Falernia Pedriscal Single Vineyard Reserva Carménère

(ファレルニア ぺドリスカル シングルヴィンヤード レゼルバ カルメネール)

ファレルニア

最後に、ヴィーニャ・ファレルニアがつくる、D.O.エルキバレー、カルメネール100%のワインです。

「レゼルバ」は、チリのワイン法では、『アルコール度数が法定最低アルコール度数よりも少なくとも0.5%以上高く、独自の香味がある場合』(日本ソムリエ協会 ソムリエ試験教本より)に表記することが可能な表示です。こちらはアルコール度数14.5度と少し高め。

単一畑のカルメネールのみ使ったこちらのワインは、香りは、プラムやブラックベリーのジャムのような甘い果実香に、スパイス、チョコレートのようなニュアンスを感じることができます。

厚切りのビーフやラム肉のソテーによく合う、凝縮されたフルボディのワインです。

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原産地を遠く離れた場所で、脚光を浴びた不思議な運命のぶどう・カルメネール。リーズナブルな価格で入手しやすいので、色々な種類を試したり、テーブルワインとしてご自宅に常備しておくのにもおすすめのワインです。

筆者は「しっかりめの赤ワインを飲みたいけど、カベルネ・ソーヴィニヨンはちょっと重いかな…」という平日夜につい選んでしまいます。ぜひ、ワイン選びのラインナップに入れてみてくださいね。

■参考文献
ワインテイスティングバイブル
2019年度 ソムリエ試験教本
ワインの世界地図

記事内容は記事作成時点の情報となります。

ソムリエ柁原めぐみ(Megumi Kajihara)
ソムリエ柁原めぐみ(Megumi Kajihara)

飲料のブランディングや広報を経験後、J.S.A認定ソムリエ資格を取得。現在は都内で酒類・飲料メーカーに勤務。
知識ゼロから一発合格を果たした経験と歴史・文化の知識を活かして、ワインをわかりやすく解説します。