みなさん、ソムリエ資格が国ごとに違うということをご存知でしたか? 日本には日本のソムリエ協会が、フランスにはフランスのソムリエ協会が、そしてイタリアにはイタリアのソムリエ協会があり、それぞれの試験もバッジも違うのです。
この連載コラムでは、私が体験してきた、現地イタリアでのAIS(イタリアソムリエ協会)認定、ソムリエ養成コースの様子をご紹介していきたいと思っています。第一回目は、イタリアソムリエ協会について、またAISソムリエ養成コースの概要をご説明いたします。
POINT
イタリアソムリエ協会とは?
イタリアは生産量において、毎年フランスと並んで世界1、2位を争うワイン大国です。ワイン造りの歴史は古く、紀元前6世紀にイタリア南部に入植した古代ギリシャ人によってワイン造りがもたらされ「エノトリア・テルス(ワインの大地)」と呼ばれていました。今でも全州でワインが造られ、現在74ものDOCGがあります。
そのイタリアのソムリエ協会、Associazione Italiana Sommelier、略してAIS(アイス)は世界で最も歴史が長く、また多くの会員を有する世界で最も伝統のあるソムリエ協会です。現在はイタリア全土を通じて150以上の支部が活動を行っています。
コース紹介の前に…自己紹介
ソムリエ養成コースのご紹介の前に大事なことを1つ。筆者は、イタリアまで行ってこちらのコースを受講し、最後の資格テストを受けて落ちました…!!! 自己紹介に暫しお付き合いください。
広告関係の会社員生活を経て、7カ月の世界一周旅行に出たのが26歳の時。帰国後、「ワイン関係の仕事に就きたい!」と思うものの、今までワインはよく飲んでいたけれど勉強したことがなく、知識ゼロの状態かつ中途採用でワイン関係の会社に就職できるとは思えず、とにかく短期集中でワインの勉強をしたい!と思って見つけたのがこちらのコースでした。
つまり、全くのワイン素人の状態で受講・受験したのです!
お金を貯め、2017年の冬のコースをイタリアまで行き受講し、私なりに勉強したつもりだったのですが…やはり資格はそこまで甘くなかったようで、結果は不合格(もちろん受かっている人はたくさんいます)。
しかし、いい経験になりましたし、勉強は楽しかったので、ご興味のある人は読み進めていただき、是非受講してみていただければと思います!
AIS認定ソムリエ養成コースとは
日本のソムリエ資格とイタリアのソムリエ資格の違い
私のプロフィールを読まれ、日本のソムリエ資格について知っている方は「あれ? ワイン関連職務経験が3年以上なくても、ソムリエ試験を受験できるの?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
そうなんです! イタリアのソムリエは年齢や職歴は関係なく、養成コースを受講して、テストに合格すればソムリエ資格が取れるんです!
また、他の違いとしては、日本のソムリエは日本ソムリエ協会(JSA)、全日本ソムリエ連盟(ANSA)ともに民間資格となりますが、イタリアのソムリエ協会はイタリア政府が発行する国家資格です。国家資格と言うとなんだかかっこいいですね。
AIS日本支部主催、イタリアで学ぶ! ソムリエ養成コースについて
イタリアでソムリエ養成コースを受講しようとすると、通常は週1回の授業を約1年半受講することになります。しかし、AIS日本支部が開催する、 私の通った日本人向けのイタリア現地での留学コースは、期間は約1カ月程度です。初夏・秋・冬の年3回開催されており、 私が参加した冬コースでは、日本のイタリアンレストラン勤務中で資格取得のために長期休暇をとったソムリエ、独立準備中のシェフ、休職中の方、大学生など、皆さんどうにか時間をつくって参加していました。
また、現在、イタリアまで行くのは遠いし、時間もない! という方向けに、日本でも東京と大阪でも養成コースを開催しているようなので、是非この機会に参加してみてください。
以降、イタリアで学ぶ、現地留学コースをご紹介いたします。
コース概要
2019年の日程と概要はこちら。
開催地: イタリアフィレンツェ郊外モンテカティーニテルメ
期間: 6週間(約2週間ずつのレベル別受講も可)
開催時期: 年間3回開催
開催予定期間: 1月31日〜3月3日(短期凝縮コース)
5月31日〜7月11日
10月31日〜12月11日
コース料金: 8,500ユーロ
定員: 8~20名
■参考 Associazione Italiana Sommelier japan 資料
現地に約1カ月間泊まり込み、午前と午後の2講義を受けて、最終日に試験、といった日程です。土日はお休みのため、その期間を利用して、ちょっと遠出することも可能です。また、スクール主催のオプショナルツアーもあり、ワイナリー見学ツアーや、キャンティ・クラシコの試飲会などにも参加可能です。後にご紹介しますが、私はフィレンツェでサッカーの試合を見たり、ヴェネツィアの仮装カーニバルに参加したりしました。
受講内容
3つの段階を経て、イタリアワインについて学んでいきます。
レベル1:ソムリエとしての基本知識・サービスの仕方・テイスティング
レベル2:テイスティングテクニック・イタリア及び世界のワイン産地
レベル3:料理とワインの合わせ方
日本のソムリエ資格と大きく異なるのは、レベル3の「料理とワインの合わせ方」でしょう。この段階では、ワインと料理を実際にテイスティングして、それぞれ項目ごとに点数化した上で食べ合わせの点数をつけていきます。筆者はこの講義が一番楽しく、且つ今の生活に一番役立っております。
コース料金に含まれる内容
コース料金の8,500ユーロは、日本円に直すと約100万円(1ユーロ117,7円、2019年8月16日現在)です。高い…! と思った方もいらっしゃるかとは思いますが、こちら、宿泊費も込みの金額となっております。
〈コース料金の内訳〉
●宿泊代金(コース開始前日よりコース開催期間中の宿泊。ツインルームまたは1つのアパートを2名で利用)
●コース料金(AIS方式に従い3段階に分けたコース)
●教材費用(AIS教本及び日本語テキスト)
●AIS公式テイスティンググラス
●AIS公式グラス専用バッグ
●AIS公式テイスティングノート・テイスティング分析シート
●AIS公式ワインオープナー
●速読温度計
●ソムリエ試験受験料金
また、追加料金を支払えば、シングルルームへの変更が可能で、朝・昼・晩の食事の追加も可能です。ただし、航空券はついてないので、自己手配になります。
筆者は、今までに貯めたマイルで航空券をゲットしました。バカンスシーズンとは重ならないので、マイルが溜まっている人は是非。
ちなみに、私は世界一周旅行から帰国後でお金がほぼ無かったので、昼は派遣の事務、夜は飲食店で1日中働き、出発までの5カ月間、必死でお金を貯めて参加しました。当時は食費もできるだけ削り、洋服もほぼ買わず、飲みに行くのも我慢していましたが、人って目標があると頑張れるものですね。
金額は確かに高いですが、現地での経験やそこで得た知識は一生ものなので、8,500ユーロの価値はあると思います。
申し込み方法
下記サイトより最新の情報を確認いただき、申込書を入手できます。
なお、私が参加したときは、イタリアの銀行にユーロでの支払いだったので、ソニー銀行に口座を作り、ユーロに両替してから海外送金したので、日々ユーロのレートをチェックして一喜一憂していました。今は振込先を日本の銀行からも選べるようです。
以上が、現地で学ぶAISソムリエ養成コースの概要です。
次回からは、実際に受講してきた授業内容や日々の生活、現地の試飲会の様子などをレポートさせていただきます!
(キャンティ試飲会)
■参考
Associazione Italiana Sommelier japan
記事内容は記事作成時点の情報となります。
フリーランスソムリエ。
株式会社リクルートのゼクシィで営業を経験後、もっと海外を見たいと想い7ヶ月世界一周の旅へ。各国でワインが日常的に飲まれているのを目の当たりにし、もっと日本でもワインが身近になって欲しいと思い、ワインに携わる仕事をしようと決意して帰国。その後、AIS認定イタリアソムリエ養成コースをイタリアにて受講。インポーター、ワインスクールに勤務後、現在はフリーでワインバー、ワインイベントなどを開催している。JSAソムリエ保有。