今日は、なにノムノ?
今日は、なにノムノ?

【ワイン旅】銘醸地を巡る! フランス7日間の旅 <後編>

ワイン旅第3弾では、旅の後半で訪れたボルドーとシャンパーニュについてご紹介します。

ボルドーってどんな土地?

ご存じの通り、フランスを代表するワイン銘醸地であるボルドー。

フランスの南西部に位置し、ガロンヌ川・ジロンド川・ドルドーニュ川という3つの川とそれぞれが運んでくる土壌、歴史的には英国領だった時期があり、また港町があるため国外に輸出しやすいという地理的・歴史的なメリットにも支えられ、世界最高峰の品質を誇るワインづくりが行われている場所です。

今回、私がメインで訪れたのは、世界遺産にもなっているサンテミリオンと、1855年の格付けで有名なメドック地区です。

サンテミリオンは、2世紀にはローマ人がワインづくりを開始していたと言われる古くからのワイン生産地です。やや内陸に位置するため気候は穏やかな海洋性気候~大陸性気候で、土壌はコート(丘陵地帯)の石灰質土壌と、石灰質・砂・粘土が混じるグラーヴという地域に分かれます。主要品種はメルローです。

今でこそボルドーのワインといえばメドック地区の印象が強いですが、メドック地区は17世紀の干拓以降にワインづくりが広まったので、それ以前はサンテミリオン周辺がボルドーの(赤)ワインづくりの中心でした。

一方、メドック地区は、ジロンド川の左岸にあたる地域で、砂利質の土壌から育つカベルネ・ソーヴィニヨン主体で作られる赤ワインで名高い産地です。メドック地区のワインの名声を世界に広げたのはなんといっても1855年の格付けでしょう。

この年、パリ万博の開催にあたって、当時のフランス皇帝であったナポレオン3世の命令により、当時の取引価格やワインの評価などを元に、メドック地区の60シャトー+1(例外として、ペサック・レオニャン地区のシャトー・オー・ブリオンも入っています)を1~5の等級に分けて格付けたことが、現代も続く格付けの始まりです。

ワイン好きであれば、この格付シャトー、特に一級シャトーを訪れてみたいと思った方も多いのではないでしょうか。

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(外側から垣間見た格付一級シャトー・マルゴー ※今回、見学はできませんでした)

ワイン旅5~6日目 ―ボルドー

夕方にストラスブールを出発し、途中で電車が1時間以上停止するハプニングに見舞われつつも、なんとか日付が変わる前にgare de Bordeaux-Saint-Jean(ボルドーのサン・ジャン駅)に到着。

本来ならば5時間半ほどの移動が、遅延により7時間近くかかったため流石にへとへとです。

一口にボルドーと言っても非常に広いので、
●ボルドー1日目は、公共交通機関で行けるシャトー+サンテミリオンへ
●ボルドー2日目は、ガイドさんの車でメドック地区へ

と、行き先を分けて巡るスケジュールにすることにしました。

5日目はシャトー・オー・ブリオンとサンテミリオン

憧れのシャトー・オー・ブリオンへ!

ボルドー1軒目は、前段でも触れた、「格付一級」のシャトー・オー・ブリオンです。

他の一級シャトーにはふられ続け、唯一訪問OKをいただくことができたのがこちらです。

シャトー・オー・ブリオンは比較的市街地に近い場所あり、サン・ジャン駅からは、バスを乗り継いでアクセスできます。なお、バスチケットは、駅前のバスおよびトラム乗り場にあるチケット券売機で購入できます。

Googleマップでバスの乗り継ぎも検索でき、楽勝!! …と思っていたのですが、ここでいきなり大きな落とし穴に落ちる羽目になります。

なんと、乗り継ぎをするはずのバス停が、トラムの敷説工事のため移転されていました!!

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周りは住宅街らしく、平日の午前中はほとんど人がいません。旧バス停の近くに簡単な地図は掲示されていましたが、見ず知らずの土地で頼りはGoogleマップのみ。

不安な気持ちで歩くこと15分…。

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乗り継ぎのバス停に無事にたどり着いたときには、ひたすらGoogleマップに感謝しました…。

ちなみに、遅刻して自動キャンセルされては大変! と急いでシャトーにも電話を入れました。

「プライベートツアーだから大丈夫、気をつけて来てね!」

とのお返事、シャトーのスタッフの方の優しい対応が身に沁みました…。

実はさらにバスの大幅遅延なども重なったのですが、なんとか目的地のSembatというバス停で降りると、

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目の前にぶどう畑! これはもしかしなくても…。

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シャトー・オー・ブリオンのぶどう畑です!

ちょっと緊張しながら中へ。

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畑を見ると、この地域の土壌の特徴である砂利質の土なのがよくわかります。

中に入ると、エントランスには各国語でのシャトー・オー・ブリオンの案内が。もちろん日本語版も用意されています!

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シャトーのスタッフさん1名が私たち2人に付いてくれ、案内してくださいます。ちなみに、シャトー・オー・ブリオンでは団体ツアーはなく、必ずプライベートツアーでスタッフさんが案内に付いてくれるとのこと。

しかもこのシャトーツアー、有料のところがほとんどなのですが、こちらでは無料で案内してもらえます (なんと良心的な…!) 。

まずは畑とステンレスタンクの模型を使った、シャトーとワインづくりについての説明を聞きます。

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写真右上がシャトー・オー・ブリオン、そして左端に見えるのが同じオーナーが所有するシャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオンです。

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ステンレスタンクの模型。上部で一次発酵、下部で3週間の二次発酵(マロラクティック発酵)を行います。

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こちらが実際のタンクです(大きい!) 。

この穴はルモンタージュの際にホースを取り付けたり、フリーランのワインを得たりするときに使うのだそうです。

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ちなみにタンクの下はベルトコンベアになっており、プレスワインを得るための果皮を運ぶ設計になっています。プレスワインは最大10%までの使用と決まっているそうです。

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こちらは、オー・ブリオンのシャトー! 現在のオーナーであるルクセンブルクの皇太子が、訪問時にこのシャトーに宿泊されるそうです。う、うらやましい…!

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ワイン樽の貯蔵庫へ。

樽の中央の色が赤色なのをご覧いただけましたでしょうか? これ、ウィヤージュ(補酒、目減り分のワインを補充すること)の際に、どうしてもワインが樽に垂れてしまうので、それを目立たなくするために最初からワインで赤色をつけておくのだそうです!

全体の6割ほどが新樽で、樽の使用は2回までと決まっているそうです。

そしていよいよ試飲です…。

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案内されたのはこちらのお部屋。宮殿に迷い込んだのか!? と戸惑うほどの豪華さ。

そして試飲させていただいたのは…。

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Château Haut-Brion  2011年です。

カベルネ・ソーヴィニョン46%、メルロー35%、カベルネ・フラン19%という品種構成で、気温が高く乾燥し、ボルドー全体で収量が少なかった年のヴィンテージです。

収量が少ない分、果実は小粒ながらよく熟したというだけあって、赤い果実やブラックベリー系の凝縮した香りに、カベルネらしい植物系のニュアンスが心地よく感じられました。

フルボディですがタンニンはなめらかで口当たりがよく、個人的には、食事と合わせるよりも、こうしてワイン単体でずっと味わっていたい、バランスの完成された味わい…! と感じました。

ワイナリーツアーは所要時間30分ほどでした。ショップなどは無く、買う買わないよりも、多くの人に気軽に、でも丁寧にシャトーのことを知ってもらいたいというシャトーの思いを感じた訪問でした。

帰り道では、お隣のシャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオンの畑も眺めることができます。

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サンテミリオンへ

午前中から贅沢な時間を味わった後は、世界遺産のサンテミリオンの街へ。

サンテミリオンへは、ボルドーのサン・ジャン駅→リブルヌまで電車で、リブルヌからサンテミリオンまではバスで向かいます。ここまでの所要時間は1時間弱、サンテミリオンのバス停から中心地までは、徒歩で15分ほど。

ぶどう畑の横を通ってとことこと歩いて行きます。

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10分ほどで、サンテミリオンの中心にあるモノリス(一枚岩)の教会が見えてきます。

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だんだん近づいてきますが…

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まだまだ登ります。

サンテミリオンは中心部にたどり着くまで延々と坂道が続くため、距離から想像する以上に移動が大変です…!

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モノリスの教会と、そこから見下ろす街の景色。街の向こうにぶどう畑が広がっています。すごい標高差です…。

ちなみに、サンテミリオンは観光局が非常に充実しており、事前にツアーを申し込むこともできます。特に、モノリスの教会は地下ツアーに参加しないと中に入れず、お値段もお手頃(1時間、一人当たり9€)なのでぜひおすすめです。

➤シャトー・カントナックへ。しかしここで事件が…!

サンテミリオンの観光をした後は、ワイナリーツアーの予約をしていたシャトー・カントナックへ向かいます。

しかし、ここでこの旅最大の過ちを犯してしまいます…。

事前に調べたところ、サンテミリオンの中心地からシャトーまでは車で5~10分、自転車で15~20分ほど。

観光地なのでタクシーをつかまえられるだろう、それにサンテミリオンの観光局にレンタルサイクルもあるようなので、最悪そこで借りればよいだろう、と思っていたのですが…。

実はサンテミリオン周辺はほとんどタクシーが走っておらず、観光局でタクシー会社の電話番号を教えてもらったもののつながらず、レンタルサイクルはツアーもセットでないと借りられず、八方ふさがりの中、仕方がないので歩いて向かうことに。

しかも、この時誤ったルートを選んでしまい、車道ぎりぎりの、歩道ですらない道を1時間以上歩いて向かいました。こればかりは、現地の交通手段をなめていた私の失敗です…。

サンテミリオンに行く際はレンタカーもしくは車を出してくれるガイドさんが必須です。

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疲労と、同行者への申し訳なさ、大遅刻でシャトーにも迷惑をかけてしまった申し訳なさで落ち込みながらも、なんとかシャトーに到着!

残念ながら1時間の大遅刻で、ツアーには参加できず。ただし、こちらのオーナーさんがとても親切で、試飲から参加させてくださいました。

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試飲ルーム内の、畑ごとの土のサンプル。

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ぶどうをあしらったシャンデリアがとても素敵でした。

試飲させていただいたのは以下の5種類です。(ヴィンテージは⑤以外2016年だったと記憶していますが、焦っていたためワインの写真を撮り忘れてしまい、違うかもしれません)

① Château Moulin de Grenet Lussac
② Château Cantenac Selection Madame
③ Château Cantenac
④ Château Cantenac Climat
⑤ Château Cantenac Selection Madame 2003年

印象に残ったのは①のワイン。

シャトーから車で25分ほど離れた石灰岩質の畑で育ったぶどう(カベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン、メルロー)を使用しており、独特のハーブの香りを持ちます。タンニンも滑らかで飲みやすく、個人的には軽めのお肉などに合わせて楽しみたいワインだなぁと感じました。

⑤のワインは②のワインのヴィンテージ違いで、オレンジがかってはいますが赤色も十分残っており、2003年とは思えないほどでした(写真がないのが残念ですが)。②には感じられなかった複雑なスパイシーさやボディ感も感じられ、ワイナリーの方も
「年を重ねてこういう味わいになるとは思っていなかった!」
とおっしゃっていました。

時間をかけて、予測できない味わいが完成していくのもワインの面白さだなと感じた銘柄でした。

6日目。いよいよメドック地区

ワイン旅もいよいよ6日目、メドック地区です。

この日は事前にお約束していたガイドさんにホテルまで迎えにきていただき、2軒のシャトー訪問に出かけました。

シャトー・ラスコンブへ

この日一軒目のシャトーは、マルゴー村の二級シャトー、シャトー・ラスコンブです。

ワイン旅3 (シャトー・ラスコンブ)
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こちらには、ボルドーで育てられているぶどう品種を実際に見比べることのできる、見本の畑があります。

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こちらはカベルネ・ソーヴィニョンの葉っぱ。少し葉が赤っぽいのが特徴です。

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こちらはメルローの葉っぱ。黄色っぽい葉が特徴です。

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ちなみに、こちらが本物の畑。

小さくて全然わからないのが申し訳ないのですが、ぶどうの畝の横にはバラの花が植えられています。きれいだからかな? と思っていたのですが、実は、もし樹の病気が発生したとき、バラの花の方が先に病気にかかるため、ぶどうの樹が大きなダメージを受ける前に早期発見できるのだそうです

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ステンレスタンクと、フレンチオーク製のタンク。ヴィンテージにもよるそうですが、木の香りをより強めるためにセカンドワインの方に後者を多めに使うことが多いそうです。

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こちらは、発酵タンクの上部。

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この管からルモンタージュができる仕組みになっています。シャトー・ラスコンブでは、2001年から低温発酵前浸漬が行われているそうです。

アルコール発酵前に、タンクの中の温度を10℃以下に下げてぶどうの果皮や種を浸漬することで、ぶどうの皮の色素成分=アントシアニンを引き出し、色が濃くフルーティさが保たれたワインを作ることができます。

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こちらは樽の貯蔵庫。

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貯蔵庫にも工夫を発見!

樽の下側に黒いローラーがあります。こちらは“オクソライン・ラック”と呼ばれ、沈殿した澱を攪拌する“バトナージュ”(樽の中に棒を入れてかき混ぜる作業)に代わり、ローラーを回して樽自体を回転させることで同じ効果を楽に得られるようにしたものだそうです。

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シャトーで保管されている過去のヴィンテージのコレクション。最も古いワインはなんと1881年ヴィンテージ! さすがに古くて飲用には適さないそう。

直近で、このコレクションから出したワインはあるの? と聞くと、シャトーにとって特別なお客様がいらしたときに、その方の生まれ年である1950年のヴィンテージのワインをお出ししたそうです。

約70年前のヴィンテージ、どんな香りと味わいだったのでしょうか…。

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いよいよ試飲です。

① Château Lascombes 2012(ファーストラベル)
② Chevalier de Lascombes 2016(セカンドラベル)

①はメルローとカベルネ・ソーヴィニヨンがそれぞれ48%に、プティ・ベルドーが4%。

色調は深いガーネット色で、ブラックベリーやブラックチェリーなど黒い果実系の香りがたっぷりと。枯れたバラのような花の香りにスギのような澄んだ植物の香り、そしてファーストラベルのみに使われる新樽由来のバニラ香と、様々な香りを楽しめるワインでした。

フルボディで甘さも酸味も量は多いですが、口当たりは柔らかくタンニンも滑らか、全体的な印象としてとてもエレガントです。

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こちらのショップでは、ワインは勿論、お土産にぴったりなジャムやワインストッパー、Tシャツなどグッズも充実しているのも良かったです。

次のワイナリーに行く前に少し寄り道。

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マルゴー村の名物ショコラティエ、マドモワゼル・ドゥ・マルゴーです。

ぶどうの枝をかたどったチョコレートや、リキュールを贅沢に使用したチョコレート、干しぶどうをコーティングしたチョコレートなど、お土産に喜ばれそうなチョコレートでいっぱいでした。

フランス滞在中、お土産に色々なショコラティエでチョコレートを買いましたが、個人的にはこちらのブラックベリー×ヴェルヴェーヌのダークチョコレートが(特に、ワインと合わせたときに)一番美味しかったと思います。…お酒好きの味覚に合うのかもしれません。

➤シャトー・グリュオ・ラローズへ

いよいよボルドー最後の訪問先、サン・ジュリアン地区の格付二級シャトー、シャトー・グリュオ・ラローズにやってきました。

サン・ジュリアンは、地理的にもワインのスタイル的にも、エレガントなマルゴーと重厚なポイヤックの中間的なポジションと言われています。グリュオ・ラローズはそんなサン・ジュリアン地区の代表的なシャトーとして安定した人気を誇っています。

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92 haもある広大なシャトーの敷地に入っていくと…

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何やらタワーが見えます!

実はこちら、ゲスト用のビルで、一階は試飲スペース&ショップになっています。

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そして上層階は、なんとシャトーの全貌を一望できる展望台になっています!

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ぶどう畑の向こうには、ジロンド川も見えます。

そしてワインづくりの工程説明へ。すべて手摘みで収穫されるぶどうは、

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こちらの、レーザーを使用して選果するマシンを通り、

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ステンレスのパイプを通って発酵用タンクに送られていきます。

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ずらりと並ぶオーク製のタンク。ファーストワインのアルコール発酵に使用するのだそう。

ぶどうの個性を引き出すために、ルモンタージュ・ピジャージュに加え、「デレスタージュ」(一度ワインをすべて他のタンクに移し替え、浸漬させていた果皮や種を空気に接触させること)を、行っているそうです。(デレスタージュはアルコール発酵の後半で一回のみ。)

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ワイン樽の貯蔵庫。何やら作業中です。

質問したところ、これはスーティラージュ(澱引き)の真っ最中。ポンプで一度ワインをいったん別の樽に移し替え、残った澱を取り除くそうです。

ただし、これはセカンドワインの場合で、ファーストワインの場合は、上澄みを一通り入れ替えた後、樽から流れてくるワインに澱がないか、ろうそくに灯した火でこまかくチェックするという昔ながらの(そして手間がかかる)方法が用いられています。

ファーストワインは18カ月、セカンドワインは12カ月樽熟成させます。

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こちらのシャトーにも、年代物のワインがずらり! 最も古いヴィンテージは1815年とのことです!

さて、いよいよ試飲タイムです。

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試飲させていただいたのはこちらの2種類。

① Château Gruaud Larose 1999(ファーストラベル)
② Sarget de Gruaud Larose 2013(セカンドラベル)

①はカベルネ・ソーヴィニョン60%、メルロー31%。カベルネ・フラン3%、プティ・ベルドー4%、マルベック1%と、なんと5種類ものぶどう品種からつくられています。

ウッディな深い香りとスパイス感、樽香、20年経ってもしっかりとした主張してくるタンニン。今が飲み頃の力強く、かつ洗練された印象にあるワインでした。

②のワインは、若いヴィンテージなのでまだ酸味も残り、サラダ的な軽い食事にも合うとのことで、もう少し年を経ると深みが出てくる1本、だそうです。(1本買って寝かせておこうかな♪と思いつつ、実は我慢しきれずに飲んでしまいました。ワイン好きはせっかちになってはいけないですね…)

ボルドーのシャトー見学で感じたこと

ボルドーといえば、ワインづくりに適した土壌と気候、そして港町という強みから、輸出を中心にワイン産業が発展した土地。

…という印象を抱いていたのですが、現地を訪問してみて、もちろん上記のような地理的・歴史的な強みはありつつも、現在進行形で新しい技術や手法を試行錯誤しながら取り入れ進化し続ける産地だと感じました。

ボルドーに限らず、今回訪問した産地では、温暖化の影響により、ぶどうの収穫時期が早まったり、芽が早すぎるタイミングで出てしまったために後から霜が降りて深刻なダメージを受けたりしていると伺いました。

なんとかして危機を乗り越えるための努力を重ねている生産者の方々のおかげで美味しいワインを享受できていることを実感しました。

以上でボルドーのワイナリー訪問は終わり、いったんパリに戻るため、サン・ジャン駅からTGVで再び移動しました。パリから日帰りで行けるシャンパーニュ旅行でワイン旅も終幕です。

ワイン旅7日目 ―シャンパーニュ

ワイン旅のしめくくりは、シャンパーニュ地方・ランスの街です! パリのGare de l’Est(東駅)からランスのGare de ReimsまではTGVで45分と、とてもアクセスしやすいワインの産地。

駅から歩いて10分ほどで、世界遺産のノートルダム大聖堂に到着します。

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こちらは歴代フランス国王の戴冠式が行われていた場所であり、その際に飲まれたことでこの地のワイン(※当時は現在のような発泡性でありません)が名声を高めた、シャンパーニュのワインづくりと非常に関係の深い場所です。

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建物向かいにはジャンヌ・ダルクの像も。

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内部には、この地域でのワインづくりを描いた珍しいステンドグラスもあります。現在もシャンパーニュのグランクリュとして有名なAy(アイ)村など、古くから続く優良産地の名もステンドグラス内に書かれており、必見です。

シャンパンメゾンへ

この旅最後のワイナリー訪問に選んだのが、G.H.マーテルでした。

1869年創業の老舗で、家族経営(ラペノー家が100%所有)のシャンパーニュ・メゾンとして、年間生産量800万本と最大の規模を誇ります。

大聖堂から歩いて15分ほどのアクセスしやすい場所にあります。しかし、歩いている最中にどんどん住宅街的なエリアに入ってきたため、もしや地図が間違っているのでは…こんなところにメゾンがあるのかしら…と不安に思っていると、

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案内板が現れ、

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中に入っていくと、いきなり別世界が!

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まるで貴族のお屋敷…。

予約内容を告げ、早速カーヴの中を案内していただきます。

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降りていくときは狭いのですが、

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下にはこんなに広い空間が広がっています。

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シャンパーニュ製造の古い機械もずらり。

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ピュピトル。

こちらは現在実際に使われいるものではありませんが、G.H.マーテルではボトルを毎日45度ずつ回転させていくルミアージュ(動瓶)をすべて手作業で行っているとのこと。

機械化しないの? と素朴に聞いてみたところ、4000本分を25分で終わらせられるそうなので、必要ないとか。おそるべき職人技です…。

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カーヴ見学後は試飲スペースへ。これまた豪華で貴族のお屋敷に紛れ込んだような気分です…。

試飲させていただいたのは3種類、すべてG.H.マーテル社が所有する生産者「Victoire(ヴィクトワール)」のもの、

① Cuvée Victoire Brut Rosé Champagne
② Cuvée Victoire Brut Champagne
③ Cuvée Victoire Brut Champagne Premier Cru

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…正直に申し上げますと、この時点でわたしは旅行疲れ試飲疲れがたまっており、あまり冷静に香りと味の分析をすることができませんでした。

…が、しかし!! 美味しいのです。3種類とも。特に③を飲んだあとの、口に残る華やかな香りと旨味は感動的でした。

実は、シャンパーニュは日程上、仕方なく最終日にまわしましたが、最初に周るべきだったかしら(通常真っ先に飲むワインなので)、と思ったり、すでに旅の疲れがピークに達しており、シャンパーニュ訪問はやや消化試合的に感じてしまっていたのですが、ここでの試飲でそんな考えはすべて吹き飛びました。

疲れたときだからこそ、理屈抜きに ガツンと美味しく沁みわたるシャンパーニュ。

ワインを美味しいと感じるためには色々な条件がありますが、タイミングこそが一番大事なのではないか…と痛感した旅でした。

なお、すでに10本近くワインを購入しており、
「シャンパーニュではもう何も買うまい」
と思っていたのですが。こちらで新たに3本購入して帰りました。※もはやスーツケースに入りきらなかったため、パリに戻って小さなキャリーケースを購入しました。

余談ですが、フランスではワイナリーでワインを購入しても、日本のように親切にケースや緩衝材をつけてくれることはほぼありませんので、ワイン購入の予定がある方は、100均などでエアーキャップを事前に購入して持参することをおすすめします。

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最後に、ランスの街の名物であり、フランスで最古のビスケットメーカー・Fossier(フォシエ)が作る、ピンク色のビスケット菓子「ビスキュイ・ロゼ・ド・ランス」をお土産に購入。ランスの街の駅前やお土産物屋さんなど、いたるところで売っています。

ちなみに、こちらのビスキュイの歴史は1690年代にまで遡れるそうで、元々はシャンパーニュのパン屋さんがパンを焼き終わった後のオーブンを有効活用できないか? と考え、ビスキュイづくりにつながったそう。BIS-CUIT という言葉自体も“cooked twice”という意味なのだとか。

なぜピンク色かというと、元は白でしたがバニラ由来の黒い点々が目立たないよう、着色することを思いついたそうです。

食感はさくさくで甘さはあまりなく、シャンパーニュと一緒につまんで美味しいお菓子です。パッケージやサイズも豊富で、お土産にも最適です。

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(自分へのお土産用に、こちらのアール・デコ風の缶入りのものを購入)

こうしてすべてのワイナリー訪問を終え、再びパリへ戻り、翌日には日本への帰国の途についたのでした。

終わりに

以上、7日間に渡るワイン旅をご紹介させていただきました。

こちらで書ききれなかった、ワイナリーツアーの情報やワインの感想、観光スポットなども実はまだまだあるのですが、フランスのワイン銘醸地を旅してみたい! と思う方の参考に少しでもなっていれば幸いです。

今回の旅は、移動が多く、また行きたい場所もかなり明確だったので、計画をしっかり固めたスケジュールにしてしまいましたが、次は、難しいことは考えず、現地での偶然の出会いを大切にするワイン旅もいいなぁと思っています。

もっとも大切なことは、様々な生産者の方々のお話を直接聞き、現地の空気に触れながらワインを楽しむことで、もともと好きなワインをもっと好きになる、またあまり興味がなかったワインでもいいなと気づけるきっかけを得ることだと思います。

もしこれからワイン旅に出られる方がいらっしゃいましたら、そのワイン旅が良い思い出となり、そしてお気に入りのワインと出会うことができるよう、心より祈っております!

記事内容は記事作成時点の情報となります。

ソムリエ柁原めぐみ(Megumi Kajihara)
ソムリエ柁原めぐみ(Megumi Kajihara)

飲料のブランディングや広報を経験後、J.S.A認定ソムリエ資格を取得。現在は都内で酒類・飲料メーカーに勤務。
知識ゼロから一発合格を果たした経験と歴史・文化の知識を活かして、ワインをわかりやすく解説します。