今日は、なにノムノ?
今日は、なにノムノ?

日本ワインの魅力とは? 基礎知識から注目のワイナリーまで紹介

日本ワインのぶどう畑

ワインと言うとフランスやイタリア、アメリカなどの国を想像する方もいらっしゃるかもしれません。しかしやはり日本人である以上、自分の国のワインを是非知って頂きたいと思い、この記事を書きます。

日本固有でありながら世界で注目を集めている品種や産地、日本のワイン産業の歴史についてご紹介します。

日本ワインとは? 国産ワインとの違いは?

ぶどう品種甲州
ブドウ品種、甲州

日本ワイン」と「国産ワイン」という、一見すると同じ意味の言葉には、実はとても大きな違いがあります。

一般的に「国産ワイン」と呼ばれていたものには、「輸入濃縮果汁」や「輸入ワイン」を原料にしたものも含まれており、国産ブドウのみで造られた「日本ワイン」とは区別が曖昧になっていました。2018年10月30から施行されている「果実酒等の製法品質表示基準」では、「日本ワイン」は国産ブドウのみを原料として、日本国内で造られた果実酒と定められています。「国内製造ワイン」は上記の日本ワインを含む、日本国内で製造された果実酒および甘味果実酒と定義されました。つまり輸入原料を使った果実酒も含まれています

日本ワインのブドウ品種

まず知っておきたい日本固有のブドウ品種を2つご紹介します。

甲州

日本で最も多く栽培されている白ブドウです。一般的な欧・中東系品種に比べて耐病性があります。そのため湿度の高い日本の気候に適しているとも言えます。

日本の甲州ワインの95.9%は山梨県産の甲州ブドウから造られています。その中でも、甲府盆地は甲州ブドウの一大産地となっています。

土地の違いに加えて、ワインメーカーの考えで収穫時期を変更するため、ワインのスタイルも多様ですが、基本的には軽やかな味わいであることが多く後味に苦味がほのかに残ることも特徴です。近年の主流は「シュール・リー」と呼ばれる「旨味」を出す製法です。

そして最近では果皮とともに醸し発酵をした、いわゆる「オレンジワイン」も生産されています。

マスカット・ベーリーA

甲州に次いで多く栽培されている黒ブドウです。

この品種から造られるワインは独特の甘いキャンディのような香りがあり、渋みは比較的穏やかに仕上がります。

軽やかな味わいの早飲みの赤ワインに仕上げられることが多いのですが、とても幅広いスタイルで生産されることもあります。樽熟成をして力強く仕上げるものやロゼワイン、赤のスパークリングワインになるものなどとても多様なスタイルがあり、高いポテンシャルを秘めているブドウです。

日本ワインの産地

山梨県

日本のワイン産地で最初にイメージされるのは山梨県ではないでしょうか。実際、生産量もワイナリー数もいずれも日本一を誇っていて、日本のワイン造りを長く支えてきました。

ブドウ栽培が盛んな甲府盆地は、昼と夜の気温差が大きいことや、特に勝沼周辺での降雨量の少なさ、そして県全体での日照量が日本で最も長いことなどから、ブドウ栽培に適した地域であることがわかります。

「日本ワイン」の生産量では山梨県が33%を占めており、最も重要な産地です。

長野県

ワインのイメージがない県かもしれませんが、「日本ワイン」の生産量では山梨県に次ぐ第2位で、注目すべき産地です。

気候条件に恵まれていて、日本で栽培される欧・中東系品種のなかで有名な「メルロー」「シャルドネ」「ソーヴィニヨン・ブラン」の生産量はいずれも長野県がトップになっています。

塩尻市にある桔梗ヶ原でつくられるメルローは、国際コンクールで金賞を受賞したこともありメルローの産地としても有名です。

北海道

長野県と並び急成長しているのが北海道です。冷涼な気候を生かしてドイツ系の白品種(ケルナー、ミュラー・トゥルガウ、バッカスなど)の栽培が盛んです。そして急増しているのがピノ・ノワールで、日本全体の生産量の半分以上を占めます。

また、小規模ワイナリーの自社畑率も本州に比べて高いことが特徴です。

最近のトピックとしては、北海道の函館に日本初となる外資系のワイナリーが進出しています。フランス・ブルゴーニュの名門「ドメーヌ・ド・モンティーユ」という生産者で、5、6年先のリリースを見据えてすでに15haほどの農地を購入し、実験的に醸造もしています。

ちなみに山梨県、長野県、北海道の3道県で「日本ワイン」の生産量の約7割を占めています。

日本ワインの過去・現在・未来

日本ワイン

日本ワインの歴史

ワイン造りの始まりは約140年前の明治初期と伝えられていますが、2018年に発表された新たな見解では、1627年に福岡県で造られ始めていたとされています。

川上善兵衛氏が私財を投げ打って日本の風土に適したワイン用ブドウの研究を続け、1922年に22品種を優良品種として発表しました。川上氏は1927年にマスカット・ベーリーAなどの日本独自の改良品種を開発しています。

1940年代半ば、太平洋戦争末期になると、軍が各地のワイン生産を奨励し、生産量が増加していました(水中聴音機の資材用の酒石をワインから獲得するためでした)。

戦後には戦争中の無理な増産の反動を受け、ワイン産業が低迷しました。

1960年代から80年代になると、東京オリンピックや大阪万博、高度経済成長を追い風に、日本ワインの生産と消費が拡大し始めました。ちなみに1973年はワイン元年と称されています。これはその3年前の大阪万博の影響もあり、ワインの消費量が一挙に前年比162%に上昇したためです。

1980年代頃には、大手ワイナリーを中心に日本のワイン造りにも変化が生まれ始めます。シャルドネやメルローといった国際的な品種の栽培が始まったのです。

2000年を過ぎたあたりから、企業だけでなく、一個人が自分で育てたブドウでワインを造るという動きが生まれてきます。特に北海道や長野県を中心にワイナリーの設立が活発化しました。

日本のワイン産業はなぜ急成長を遂げているのか

国際コンクールで入賞するなど、成長が著しい日本のワイン産業ですが、その要因とは一体何でしょうか。多面的な要素が絡み合うとは思いますが、その要因を整理してみます。

  • 生食用ブドウからワイン醸造用ブドウへの栽培の転換
  • 日本固有品種のOIV(国際ブドウ・ブドウ酒機構)登録による輸出増
  • 海外での日本食文化の広まりによる需要拡大
  • 海外で研修した若手ワインメーカーの台頭
  • 気候風土(テロワール)を意識した、その地に合ったブドウ栽培

まだまだ挙げられるとは思うのですが、個人的にも上記に挙げた内容は大きな要因であると考えています。

日本ワイン産業が抱える課題

日本のワイン産業はこれからもどんどん発展していくでしょう。しかし、取り組まなければならない課題もあると思います。ここでは特に2つをご紹介します。

  • 苗木不足
  • 高コスト

ここ数年で法整備がされたこともあり、ワイン造りに参入しやすくなっています。しかし、その苗木の需要に見合うだけの供給が追いついていないことが課題として挙げられます。

生産コストについては、特に醸造用の機械にコストがかかってしまうようです。日本にはメーカーがあまりないため輸入に頼る他なく、故障時のメンテナンスにもコストがかかってしまうという課題があります。

課題はまだまだ沢山ありますが、まずこの2つはお伝えしておきたいところです。

私がオススメする2つのワイナリー

YAMAZAKI WINERY (山崎ワイナリー)

北海道三笠市にある家族経営のワイナリーです。家族で4代に渡り農業に従事し、2002年にワイナリー事業を設立しています。

10種のブドウ品種を栽培しており、ソーヴィニヨン・ブランやシャルドネ、メルローやピノ・ノワールなどの国際品種や、ケルナーやバッカスなどのドイツ系品種も栽培しています。

ピノ・ノワールは、実にエレガントでドイツのピノ・ノワールを思わせる味わいでした。

Funky Chateau(ファンキーシャトー)

長野県上田市で2008年にブドウ栽培を始め、2011年に自社ワイナリーが完成しています。年間2,000時間以上の日照量と、昼夜の寒暖差のある恵まれた気候条件にある畑を所有しています。選果の徹底、自然発酵、無濾過、無清澄をベースに、純粋でその土地を反映させるワイン造りを目指しているワイナリーです。

こちらのカベルネ・ソーヴィニヨンはフランス・ボルドーのような味わいで、日本ワインが世界と渡り合えるということを実感した一本です。


如何でしたでしょうか。日本ワインは少し前までは低品質で、良いイメージを持たれていない方もいらっしゃるかもしれません。しかし現在急成長中で、世界に通用する高品質なものもどんどん造られています。

ネットやワインショップでワインをお探しになるとき、ぜひ日本ワインも探してみて下さい。

■参考文献
日本ソムリエ協会教本
ソムリエ協会機関紙

記事内容は記事作成時点の情報となります。

ソムリエ柴田 郁也(Shibata Fumiya)
ソムリエ柴田 郁也(Shibata Fumiya)

フランス料理店勤務時にソムリエに憧れ勉強を始め、23歳で日本ソムリエ協会認定ソムリエを取得。都内のミシュラン星付きのフランス料理店やビストロを経て現在中目黒B.B.S.DINING.にてソムリエとして勤務。