今日は、なにノムノ?
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バンドールワインとは? 特徴や楽しみ方をソムリエが解説!

海とバンドールワインのイメージ

バンドールと呼ばれるワインをご存知でしょうか。ワイン好きの方なら聞いたことのある名前かもしれません。認知度は低くとも、高品質な赤ワインを生み出す産地「バンドール」について詳しくご紹介します。

バンドールとは

La Bastide Blanche - Bandol
Photo by Daytona Winos on Flickr

フランス・プロヴァンス地方の地中海沿いの街バンドールを中心に、ヴァール県の8つの村からなるワインの産地です。力強く、長期熟成できるポテンシャルを備えた赤ワインの産地として有名です。

フランス・プロヴァンス地方と言えば、現在ではロゼワインの一大産地として世界中に知られています。その中で、このバンドールというエリアは高品質な赤ワインのエリアとして名声を得ています。

ちなみに「バンドール」は赤ワインだけでなく、白ワインとロゼワインも生産が認められています。ロゼワインが全体の73%を占めていて、赤ワインが22%、白ワインはとても少なく5%となっています。赤ワインの産地として知られているのでこれは意外に思われるデータかもしれません。

ブドウ品種

ワインの種類ごとに使用されるブドウ品種を見てみましょう。

・赤ワイン

ムールヴェードルを主体に50-95%、補助品種としてのカリニャンとシラーはそれぞれ10%以下に抑えるという規定があります(つまりこの規定では「ムールヴェードル100%は造れない」ということも示されています)。

主要品種としてはサンソーとグルナッシュも認められてはいますが、一般的に知られている生産者のものはムールヴェードルが用いられています。

・ロゼワイン

ムールヴェードルを主体に20-95%、補助品種として白ブドウのブールブーラン、クレレット、ユニブラン、黒ブドウのカリニャンとシラーが認められています。補助品種はそれぞれ10%以下で、合計でも20%以下に抑えるという規定があります。

主要品種は赤ワインと同じくサンソーと、グルナッシュが認められています。

・白ワイン

クレレットを主体に50-95%、補助品種としてマルサンヌ、ソーヴィニヨン・ブラン、セミヨン、ヴェルメンティーノをそれぞれ10%以下、合計でも20%以下に抑えます。

主要品種にはブールブーランとユニ・ブランも認められています。

ムールヴェードルとは

バンドールを理解する上で重要な品種です。この品種の起源はスペインのバレンシア州と伝えられており、地域の名前が語源とされています。

スペインでは「モナストレル」、オーストラリアなどでは「マタロ」という名前で呼ばれることもあります。

スペインではカタルーニャ州、フミーリャ州、バレンシア州などの東部で多く栽培されています。

世界の多くの地域でムールヴェードルはグルナッシュ、シラーとブレンドされることが多く、頭文字をとって「GSMブレンド」と呼ばれることがあります。フランスのプロヴァンス地方ではカリニャンやサンソーとブレンドされることが多いです。

産地の気候風土

バンドールのエリアの北にはサント・ボーム山(標高1,147メートル)があり、南は地中海に面しています。

典型的な地中海性気候で夏は暑く乾燥していて、特に南向きの斜面では日照時間が3,000時間を超えます。土壌は泥灰質と石灰質でできており、とても痩せています。

バンドールワインの特徴

バンドールワインの中でも、日本でも比較的見かけることのできる赤ワインの特徴をご紹介します。

重厚でスパイシーな味わいが特徴で、野生的な香りも併せ持ちます。 そして、ボルドーのように熟成してから本領を発揮できるような、熟成向きの赤ワインが生産されています。

プロヴァンス地方では早くから楽しめるワインが多く、カジュアルなものが世界中に流通していますが、バンドールではプロヴァンスのワインのイメージからすれば特異とも言えるワインを生み出しているのです。

バンドールの赤ワインの楽しみ方

熟成

バンドールワインは若いものよりも熟成させてこそ真価を発揮します。5年から長ければ10年以上熟成する能力を持っています。若いワインを楽しむのであればデキャンタージュが必要となる場合があります。

美味しく飲める温度

概ね16~18度くらいが良いでしょう。

相性の良い料理

ぜひお肉料理とともにお楽しみください。特に赤身肉がオススメですが、ワイン自体にスパイシーな風味がありますので、牛肉だけでなく、ジビエ料理もよく合います。

そしてプロヴァンスと言えば仔羊肉が有名で、グリルでも煮込みでも美味しくお召し上がり頂けると思います。

バンドールの代表的な生産者

Domaine Tempier(ドメーヌ・タンピエ)

B-Day Wine and Beer Tasting
Photo by Todd Paul on Flickr

1700年代からドメーヌ・タンピエの葡萄畑は存在していましたが、1834年からタンピエ一族が所有し、家族経営を続けています。1936年に跡取り娘のリュシー・タンピエがリュシアン・ペイローと結婚し、1940年から2人がドメーヌに参画していて、ここから躍進の時代を迎えます。

バンドールは1941年にAOCに認定されています。リュシアン・ペイローはAOC認定の立役者と称されており、1945年にはバンドールの生産者組合の会長に就任しています。後にリュシアン・ペイローは「バンドールの父」と呼ばれます。

リュシアンは2人の息子であるジャン・マリーとフランソワと共にドメーヌの名声を築き上げてきましたが、1990年代にはその人気に陰りを見せます。

2000年には2人息子も引退してしまいますが、この窮地を救ったのが現在の支配人兼醸造家のダニエル・ラヴィエです。天才醸造家と称賛される彼の手によって、このドメーヌはプロヴァンス最高の生産者としての地位を確立しました。

タンピエ、映画に出演

2008年に公開された「プロヴァンスの贈りもの」という、ラッセル・クロウ主演の映画に、ドメーヌ・タンピエのワインが登場します。作中では「真実を伝える美酒」として印象的に使われています。

最後に――いかがでしたでしょうか。今回は南フランスで最高の生産エリアとも呼べる「バンドール」についての記事でした。流通量はかなり少ないので、見かけた際はこの記事を少しでも思い出して頂けますと幸いです。ワインショップなどに行かれた際にはぜひ店員さんに「バンドールのワインはありますか?」と聞いてみてください。

■参考
ソムリエ協会教本

記事内容は記事作成時点の情報となります。

ソムリエ柴田 郁也(Shibata Fumiya)
ソムリエ柴田 郁也(Shibata Fumiya)

フランス料理店勤務時にソムリエに憧れ勉強を始め、23歳で日本ソムリエ協会認定ソムリエを取得。都内のミシュラン星付きのフランス料理店やビストロを経て現在中目黒B.B.S.DINING.にてソムリエとして勤務。