今日は、なにノムノ?
今日は、なにノムノ?

世界三大貴腐ワインのひとつ「ソーテルヌ」 その特徴や格付けを解説!

ボルドーのぶどう畑の夜明け

ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、ハンガリーのトカイと並び、世界三大貴腐ワインと呼ばれる「ソーテルヌ」。その甘美な味わいは、飲む人を天にも昇る心地にさせてくれます。

今回は、そんなソーテルヌの産地や造り方、格付け、楽しみ方、オススメのソーテルヌのワイン2選をご紹介いたします。

世界三大貴腐ワインの産地、ソーテルヌ

ソーテルヌの産地は、フランスの南西にあるボルドー地方の中でも南側のグラーブ地区の南部、ガロンヌ川左岸に広がっています。グラーブ地区の「グラーヴ(Graves)」とは「砂利」という意味であり、ソーテルヌ地区も同様に土壌に砂利を多く含む小高い丘がある、丘陵地帯です。

貴腐ワインとは

貴腐ぶどう

ソーテルヌを語るのに欠かせないのが、『貴腐菌」の存在です。貴腐菌(ボトリティス・シネレア)は、本来は灰色カビ病を引き起こす菌であり、ブドウだけでなく野菜などにも付着する、世界中に広がる病原菌です。しかし、ソーテルヌではこの貴腐菌によって貴腐ブドウが育ち、最高級の貴腐ワインが生まれるのです。

また、どこでも貴腐菌が発生し、貴腐ブドウが育つという訳ではありません。貴腐ブドウをうまく育てて収穫するには、類まれなる環境が必要です。ソーテルヌは、その希少な土壌のひとつでした。

類まれなる自然環境によって生まれたソーテルヌ

ソーテルヌには、ガロンヌ川の支流であるシロン川という小川があり、その周りに森が広がっております。ブドウが熟す秋になると、朝、森で冷やされたシロン川と、大河で暖かいガロンヌ川が合流する場所で温度差により朝霧が発生し、ブドウ畑を覆います。この湿った環境により、貴腐菌がブドウに付着し、午後になって霧が晴れ、太陽が降り注ぎ乾燥することによって貴腐ブドウが育ちます。

ソーテルヌを造るぶどう品種のセミヨンやソーヴィニヨン・ブランは果皮が薄く、貴腐菌によって無数の小さい穴が開けられます。そこからブドウの実の水分が蒸発し、糖分が残り、凝縮されたアロマが引き出されます。こうして貴腐菌独特の風味や香りのするブドウが造られるのです。

この貴腐ブドウを何回もに分けて慎重に、丁寧に収穫し、注意深く醸造し、極上の甘口ワインを作り出します。ブドウの甘さを極限まで引き出す貴腐ワインは、その華やかさと味わいから「高貴なる腐敗」と呼ばれています。

このように、貴腐ブドウが造られる環境は世界でも希少のため、貴腐ワインは価値の高いワインとなりました。

ソーテルヌの格付け

ボルドーの格付けは聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、ソーテルヌにも格付けがあります。そもそも、格付けが生まれた経緯はご存知でしょうか?

1855年にパリ万博が開催され、そこでの展示品の目玉のひとつとして、時の皇帝ナポレオン3世がボルドーの商工会議所に格付けを作成するよう命令しました。そこで、商工会議所が過去の取引価格などから作成した格付けが現在でも残っているのです。

メドックの格付けは第1〜5級で作成されましたが、ソーテルヌ(バルザック含む)の格付けは「第1級」、「第2級」、そしてシャトー・ディケムだけは別格扱いされ、「特別第1級」とされ、合計3階級となりました。

では、格付け一覧を見てみましょう。

Premier Cru Superieur(特別第1級)

Château d’Yquem シャトー・ディケム(ソールテルヌ)
※銘柄名(Commune)

Premier Crus(第1級)

Château La Tour Blanche シャトー・ラ・トゥール・ブランシュ(ボンム)
Château Lafaurie-Peyraguey シャトー・ラフォリ・ペラゲ(ボンム)
Château Clos Haut-Peyraguey シャトー・クロ・オー・ペラゲ(ボンム)
Château de Rayne Vigneau シャトー・ド・レイヌ・ヴィニョー(ボンム)
Château Suduiraut シャトー・スデュイロー(プレニャック)
Château Coutet シャトー・クーテ(バルサック)
Château Climens シャトー・クリマン(バルサック)
Château Guiraud シャトー・ギロー(ソーテルヌ)
Château Rieussec シャトー・リューセック(ファルグ)
Château Rabaud-Promis シャトー・ラボー・プロミ(ボンム)
Château Sigalas Rabaud シャトー・シガラ・ラボー(ボンム)

Deuxiemes Crus(第2級)

Château de Myrat シャトー・ド・ミラ(バルサック)
Château Doisy Daene シャトー・ドワジ・デーヌ(バルサック)
Château Doisy-Dubroca シャトー・ドワジ・デュブロカ(バルサック)
Château Doisy-Vedrines シャトー・ドワジ・ヴェドリーヌ(バルサック)
Château d’Arche シャトー・ダルシュ(ソーテルヌ)
Château Filhot シャトー・フィロ(ソーテルヌ)
Château Broustet シャトー・ブルーステ(バルサック)
Château Nairac シャトー・ネラック(バルサック)
Château Caillou シャトー・カイユ(バルサック)
Château Suau シャトー・スオ(バルサック)
Château de Malle シャトー・ド・マル(プレニャック)
Château Romer du Hayot シャトー・ロメール・デュ・アヨ(ファルグ)
Château Romer シャトー・ロメール(ファルグ)
Château Lamothe シャトー・ラモット(ソーテルヌ)
Château Lamothe-Guignaerd シャトー・ラモット・ギニャール(ソーテルヌ)

唯一の特別第1級 シャトー・ディケム

Chateau d'Yquem
Photo by Graeme Churchard on Flickr

ソーテルヌの最高峰に鎮座するシャトー・ディケム。理由はその環境と、丁寧に時間をかけた造り方にあります。

シャトー・ディケムの畑は、ソーテルヌの中でも最も高い丘に位置します。高い位置にあることで、太陽があたる昼になると、最も早く覆っていた朝方の霧が晴れて畑が乾燥し、ブドウが熟しやすい環境となっています。

ブドウの栽培比率はセミヨンが80%とソーヴィニヨン・ブランが20%。そして、特筆すべきはその収穫方法です。通常のブドウの収穫は生産者によっては区画ごとに機械で行い、高品質なワインになると房ごと手積みで行うのが通常です。しかし、シャトー・ディケムはブドウの貴腐化は粒ごとに変わってくるので、貴腐化した粒だけ選別して、「粒ごと」に収穫を行っています。考えるだけでも気が遠くなりますね。粒ごとに収穫を行うため、収穫は大勢で、5〜6回に分けて行われます。

その後、丁寧に発酵、そして約3年間熟成をさせ、瓶詰め前に「シャトー・ディケムとしてリリースできるか」どうかを問う厳格なテストを行い、やっとリリースされるのです。

その数量の少なさから、シャトー・ディケムは1本のブドウの樹から1杯のワインしか造られないと言われております。

シャトー・ディケムを飲む際には、是非、職人さん達の努力を考えながら、その優雅な味わいをお楽しみください。

ソーテルヌの楽しみ方

飲む温度

甘いソーテルヌを飲むときは、よく冷やして飲むのが一般的です。だいたいフレッシュタイプの白ワインと同じくらいの、6〜8度くらいがいいでしょう。

複雑な香りを楽しみたいときは、常温で飲んでいただいても大丈夫です。ただ、温度が上がりすぎると、せっかくの甘みや骨格をつくる酸味がぼやけてしまうので、温度は上げすぎないように注意しましょう。

合わせる料理

フォワグラ

甘いデザートワインには、もちろんスイーツを合わせていただくとベストマッチングです。しかし、お食事にもソーテルを合わせてみてはいかがでしょうか?

レストランではよくフォアグラにソーテルヌを合わせます。フォアグラの味わいの強さと余韻の長さ、ソーテルヌの複雑さが口の中で最高のマリアージュとなります。

また、実はブルーチーズなどもソーテルヌに最適です。ブルーチーズの塩味とソーテルヌの甘さがバランス良く交わります。ブルーチーズが苦手だと言う方に、「これなら食べられる! むしろ好き!」とおっしゃっていただいたこともあります。

オススメのソーテルヌ2選

シャトー・ディケム

前述しました「特別第1級」に唯一格付けされているシャトー・ディケムは、機会があれば是非飲んでいただきたい1本です。

1本の樹からできる1杯の味をご堪能ください。

シャトー・スデュイロー

格付け第1級のスデュイロー。その畑はシャトー・ディケムと隣接している、同じくリッチな味わいですが、お値段はシャトー・ディケムの10分の1くらいなので、カジュアルに味わうことができます。

■参考
一般社団法人日本ソムリエ協会 日本ソムリエ協会教本

記事内容は記事作成時点の情報となります。

ソムリエ清野 花歩(Seino Kaho)
ソムリエ清野 花歩(Seino Kaho)

フリーランスソムリエ。
株式会社リクルートのゼクシィで営業を経験後、もっと海外を見たいと想い7ヶ月世界一周の旅へ。各国でワインが日常的に飲まれているのを目の当たりにし、もっと日本でもワインが身近になって欲しいと思い、ワインに携わる仕事をしようと決意して帰国。その後、AIS認定イタリアソムリエ養成コースをイタリアにて受講。インポーター、ワインスクールに勤務後、現在はフリーでワインバー、ワインイベントなどを開催している。JSAソムリエ保有。